【緋彩の瞳】 恋と呼べずに

緋彩の瞳

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恋と呼べずに

ハワイの天文台に1週間くらい行くから、って、遅めの夕食を一緒に取っているときに教えてもらった。今日のこの夕食だって、無理やり時間の都合を付けてもらっていて、そもそもなかなか会ってくれない忙しい人なのに。1週間は連絡すらまともに取れないということが、残念で仕方なくて。
「帰りはいつ?木曜日?」
「えっと……いつまでだったかしら?木曜かしら、金曜かしら。覚えていないわ」
「そう。気を付けて行ってきてね」
毎日会いたいと思っても、もちろんそんなことは口にしない。メールは3日に1度以上はしないようにしている。
子供のレイなんて、せつなさんはこれっぽちも相手にする気がないことくらいわかっていて、それでも会ってくれる。
その気持ちだけで幸せだと心が満たされたら、それでいいって自分に言い聞かせている。




憧れと恋なんて、すり潰して揉んで、こねてしまえばどちらも見た目は同じだって
せつなさんは先生のように諭してくれる



“レイ、あなたはちゃんと恋をしなければダメなのよ”、と


その相手がせつなさんだったらいいのにと告げたところで、幼稚園児に告白されたようなあしらい方しかされないのだから


毎日毎日、日本から離れた場所から、連絡が来ればいいのになんて携帯を抱きしめて
それが無意味なことだとわかっていて
それでも、そうしておかなければ他に何も手がつかなくて


多分、今のレイは、こういうことをしている時間が好きだと思う
だから、せつなさんの諭している言葉の意味も本当は、ちゃんと理解している
片想いに費やす時間を、無意味だと叩き落とさずに付き合ってくれている
その柔く痛い優しさを、追い求めることをあきらめる日はきっと訪れるのだから



『ただいま、レイ。無事に帰ってきました』

水曜日の夜、メールが届いた。明日の夜にでも、勝手に“お帰り”のメールをしようなんて思っていたから、想像よりも早く帰ってきて、嬉しさのあまり指先が震えた。
『お帰りなさい。明日かなって思ってたわ』
『そう?もう、日本に帰ってきたわ。お土産買ってきたわよ』
週末に会えたらいいなって思っていたけれど、少しでも早く会えるのなら、会いたい。
『会って、たくさん話を聞かせて。いつ会える?』
『月末だし、色々とレポートを纏めたいから、来月に入ってからでもいいかしら?』
今日はまだ25日。
週末にも会えない。来月までずっと、携帯電話を生命線にしなければいけない。



それでもいい


『わかった。楽しみにしているわ』


この片想いは、いつか必ずあきらめなければならない時が来る
せつなさんが絶妙なタイミングでレイを突き放す時だろう
それでいい
そうしてくれていい
キスも抱擁もいらない

こんな気持ちを持っているだけで幸せだと
嬉しいことだと
わかってくれているだけで、今は心が満たされているから

誰にも理解されなくてもいい
意味のないことだと思われてもいい



だから、好きだと告げたところで、付き合いたいとか、そう言うことを求めていないこの気持は

恋がまだ何かということを知らない、子供じみた憧れなの

でも、この気持は
この恋の色に似た憧れの気持ちは、永遠に抱き続けることができるような気がする

だから、その相手がせつなさんでよかったと、思わずにはいられない


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Date:2014/09/26
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