【緋彩の瞳】 指を絡めて END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

指を絡めて END



「御馳走になりましたっ」
「………私は一口ももらってないのに」
うさぎにズルイと言われながら、美奈の分の代金を纏めて払ったレイは、先にクラウンから出て神社へと向かった。
「レイちゃん、待ってよ~。みんな、ばいば~い。また明日ね」
信号が変わるギリギリを追いかけて来た美奈は、当然のようにレイの横に並ぶ。レイと歩幅を揃えて歩きながら、鼻歌なんて歌って。
「……何か用?」
「は?」
「美奈の家はあっちじゃないの?」
「ん?何言ってるの?」

今日は水曜日

だから美奈は、一緒に神社に来て夕食を食べて、お風呂に入ってセックスをして、神社から学校に通う。戦いがあった頃は不規則に会っていた。会える時に会うという感じだった。今はいつの間にか決まったような会い方になっている。
嫌なんて思ったことはない。
「うちに来るの?」
「何よ、今更。何か用事でもある?」
「……ない」
しおらしく、家に行ってもいい?なんて聞いてこない関係にちょっと慣れ過ぎていたから、意地悪してみたくなっただけ。
予定もないし、美奈が来るつもりで食材も買っているんだから、帰られても困る。
「変なの~。パンケーキ食べられなかったこと、怒ってるの?」
「どちらかというと、当たり前のように遅刻してくることに呆れているわね」
「あぁ、なんだ。そっちか」
反省の色もない。美奈はまた鼻歌を歌いながら、レイの腕を引っ張る。
いつもこうやって、連行される。


……
………

意地悪したくなって、掴まれた腕を強引に引き抜いた。
「なぁによ~~レイちゃん」
「……別に」
陽が落ちた仙台坂は車の往来は少しあるけれど、人通りはほとんどない。不貞腐れる美奈子の顔に張り合うように、レイも同じように不貞腐れた顔を見せてみる。
「別にってそんな顔して言う?」
「……別に、何でもないわよ」
美奈はじっとレイを見つめて、それからまたレイの腕を掴むから。

また振り払って引き抜いた。

「何なのよ~?」
「それが、嫌……なのよ」
「何が?」
視線を足元に落として、掌を美奈に見せるように差し出す。
「え?お金返せってこと?」
「馬鹿」

美奈の手を握りしめた
指と指を絡めるように

きつく握りしめる

「レイちゃん……嫌がらないの?」
「別に……今は暗いし、誰にも見られないわよ」
顔を覗きこんでくるから、鞄で殴りそうになるのを我慢してそっぽ向く。クスクスと笑う声が耳を刺激した。美奈がどんな風に笑っているかくらい、簡単に想像できる。
「可愛いんだ、レイちゃん」
「……何よ」
「ううん。嫌がるだろうから、外ではしないようにしてたんだけどさ」
「……たまに…なら」
何をしているのかしら、と思いながら美奈もぎゅっと握り返してくるから、その温もりにどうしようもなく心を躍らせている自分がいる。
隣にいることが当たり前になるくらい付き合っているのに、こうやって手を握って歩いたことなんてほとんどない。
「うん、そうだね」
ちらりと視線を美奈に戻すと、優しく微笑む顔があった。


レイにだけしか見せない、愛しいと思う美奈の笑顔


美奈はまた鼻歌を歌い始めた。そのリズムに歩幅を合わせて歩く。
遅刻したことも、しおらしく謝らないことも、それなのに奢られて当然だと思うことも、
結局許してしまうのは、この笑顔のせいだ。


鳥居をくぐりぬけて、参拝客のいない境内の裏手に回る。桜の木々が夏から秋への衣替えをし始めている。風が少しあって、気まぐれに葉っぱが鳴く声。
「え?」
繋いだ手を引っ張られて、木に身体を押しつけられた。2人分の鞄が足元に落ちて、あっと思うよりも早く、好きな匂いが目の前にあった。
「……んっ……」
唇に触れる美奈の温度
身体の力がどんどん抜けていって、思考回廊は機能低下のアラームを鳴らす音さえ出せない。
「ん……」
角度を変えながら深く交わす唇は、求められることだけに応えるだけじゃ足りないし追いつかない。レイは美奈の腰に腕をまわして制服を掴んだ。美奈はレイの身体を支えるように抱きしめて、重なる唇がこのまま、ずっとずっとこうしていたいと求める我儘に応えてくれる。

どこか他のカップルのことなんて、本当はどうでもいい
美奈以外は欲しくないし、美奈しかレイを満たしてくれない

ありきたりに慣れた愛を淡々と紡ぐことを望んでいるのは、レイ自身なんだと思い知らされる

「………美奈……」
「今日のレイちゃん、なんかいつもと違うから、我慢できなくて」
絡み合う視線と、指に絡まる長い亜麻色の髪。
薄暗闇の中、レイだけが映し出されるきららの瞳。
このまま見つめられると、レイの方が先に我慢できなくなりそうだ。
「お風呂入ってから……その……それまで、我慢しなさいよ」
何とか無理やりに視線から逃げて、肩に顔をうずめる。乱された呼吸も心も、美奈に全て預けてしまっていて、それが心地いい。
「本当、今日はいつもと違う」
こめかみにキスを受けて、身体がビクっと震えた。
「……別に」
「そう?」
小さな不満は、いつも、キスを交わすたびに全て身体から剥がれおちてしまう。

「美奈………」

例え土曜日にデートをしなくても
待ち合わせに当たり前のように遅れてきても
ありふれた挨拶のように、街で堂々とキスを交わさなくても

それが愛野美奈子であり、その愛野美奈子をどうしようもなく好きだと感じているのはレイなのだから。

「そんな艶のある声で呼ばれると、本気で夜まで我慢できないわよ?」
「…………美奈の馬鹿」
「レイちゃんが使う、馬鹿ってさ、愛してるっていう意味でしょ?」
「……馬鹿」


馬鹿

美奈の馬鹿





LOVEりん
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Date:2014/10/02
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