【緋彩の瞳】 ある恋と愛の物語 21

緋彩の瞳

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ポイ捨て小説

ある恋と愛の物語 21

「この階段を下ればレイのいるところへ行けるわ。ライトを持って行きなさい。レイはずっと、場所を移動していないわ」
みちるさんは助手席から立ち上がり、席を倒して美奈子を外に出した。だけど、行くべきは美奈子ではないのだ。
「みちるさん、命令よ。……火野レイを救いなさい」
レイちゃんを助けるためなら、喜んで悪にでもなろう。
どんな罪をかぶっても痛くはない。
もっともっと、彼女を早くに助けるべきだった。疑いながらも信じていたい、この人の手で救われたくないと心の片隅で思いながら、2週間近くレイちゃんを孤独にさらし、美奈子は踊らされるふりをし続けた。
両手を縛りあげてでも、もっと早くにこうするべきだった。
彼女を守ると決めていたくせに。

愛すると決めた時から、何をしてでも、火野レイを幸せにすると

この手で素肌に触れなくてもいい

幸せであればいい





「お断りだわ。私は火野レイのことを愛していない。無意味に彼女の純潔を奪ったところで、お互いに後悔を抱きながら、レイは砂になって死ぬだけよ。殺せと言うの?」
「少しでも……火野レイを好き?」
まっすぐに睨みつける美奈子の瞳が痛いほどに眩しくて、強い光を放っていて、息が出来ないほどだ。
「……好きよ。私だってあの子を……本気で好きになりそうだった。でも、美奈子。私の持っている想いは、あなたには敵わない。それに気が付いて、レイをあきらめたの。あの子のことは、仲間として好きで、それ以上の感情は一切ないの」
胸ぐらを両手で掴まれた。みちるはどれほど睨みつけられても、同じように感情を高ぶらせたりしない。レイを救うのは美奈子だ。
「命令だって言ったでしょう?!レイは海王みちるが好きなのよ!!!」
どなる声が響く。キラキラと美しい、だけど苦い涙が月に照らされてはこぼれ落ちる。

美奈子はそれほどまでに愛しているのなら、どうしてその想いを口にしないのだろうか。
レイが誰を想っていても、口に出すべき想いはある。

「好きと、愛しているは違うわ。それに愛の証明は、真実の愛を持つ人に愛を捧げること。言ったでしょう?私はレイを愛してないの。レイの一方的な淡い感情だけでも、呪いは解けない」
「それでも、好きだと言う感情はお互いに持っているのでしょう?」
みちるの胸ぐらをつかむ両手は震え、心が痛いと嘆いている。
自分の感情にどうして素直に生きようとしないのだろう。

だから
レイに呪いが掛けられたのだ

「救えるのは、あなただけよ。愛野美奈子、私たちの大切な火野レイはもう、ずっと前からあなたを愛しているわ。それに気が付いていないだけ。あなたがレイを抱けば、レイの呪いは間違いなく解ける」
「………嘘よ」
両頬を伝う涙は、何を想っているのだろう。
自分では救えないと初めから諦めていた美奈子は、何を強く願うのだろう。
どうしてもっと、ずっともっと前に想いを伝えなかったのだろう。

レイが誰に恋をしようとも、美奈子には自分の想いを伝える権利はある。
そしてレイも、本当は愛すべき人がいると気付いたというのに。

「レイはあなたが好きよ。真実の愛はあなただけのものよ」
それはみちる自身がレイを愛してあげられないと、認めてしまう言葉でもある。
でも、レイを想うと、レイが幸せになる道は一つしかない。
「何も知らないくせに!!何も知らないくせに!レイが海王みちるを好きだと想っている傍に、ずっと私はいたの!レイが好きなのは海王みちるなの!!」
みちるは泣き叫ぶ美奈子をまっすぐに見つめ、口を閉じ、もう何も言わないと決めた。
「行ってよ!行って……お願いだから!」
みちるのシャツを掴んだ両手は、縋りつくように肩を揺さぶり始める。
「お願い、レイを、…レイちゃんを……助けてよ……」

愛する人を助けるためなら、他人に抱かれでも構わないと想う人なんて、本気でそれを願う人なんて、美奈子くらいだろう。

純平も美奈子のように、愛というもが捧げるためだけに存在しているという主義の人間であれば、愛する者を失わずに済んだだろう。

あぁ、でも美奈子は今、捧げるためだけにある愛が故に、愛する者を失おうとしている。


どちらも愚かだ



膝を付き嘆き叫ぶ美奈子をじっと見下ろすだけ。みちるにはもうなす術はない。
「みちるが抱いたところで、レイは死ぬ。美奈子が本気でみちるが抱くべきだなんて事を想っているのなら、美奈子が抱いてレイが死んだ方がずっとマシだ。一縷の望みもない相手より、一縷の望みがある方に可能性をかけるべきじゃないか?レイを愛していないみちるが抱くのと、レイを愛している美奈子がレイを抱くのと、どっちが助かるかくらい、ちょっと考えれば分かるだろう?」
冷静さを失い足に縋りつく愛の女神は、はるかの言葉を聞いてもまだ、レイの気持ちを優先したい想いを拭うつもりはないと言うのだろうか。
「…………もぅいい」
美奈子は手を付いて立ち上がり、泣き腫らした瞳でみちるを睨みつけた。
「こうすればいいんだわ」
左手に握られた変装コンパクト。
「………何をするつもり?」
「レイを助けるの」
「………私になりすますとでも言うの?」
「言ったでしょ。助けるって。そのためなら、悪になっても、死んでも、もう、どうだっていい」
高く夜空に伸ばされた左手が月夜に照らされた。満月が女神を照らし、美奈子を包み込む。
目の前に自分と同じ姿が現れる。月夜に照らされたみちるの姿。

それでも
みちるが持つことのできない、強い愛の光を放つ瞳だけは、美奈子のものだ。

みちるはレイのためにこんな風にはできない。
悪になることも死ぬことも、何もできない。
悔しいことだと思った。
電話をくれた亜美が言っていた。
『悔しいけれど、誰も美奈子ちゃんの愛には敵わない。レイちゃんを救うのは美奈子ちゃんしかいないの。私たちはせいぜい、そのサポートをしてあげるだけだと想う』
亜美は声に出して好きだと言ったらしい。それに応えられなかったのは、それが愛じゃないとレイが思ったからだろう。

レイはだから、真実の愛とはどういうものか、理解できるはずなのだ。

美奈子が救おうとしている人は
美奈子のために1人で世界から消えようとしている人は
きっと、みちるのフリをしている美奈子を見破ってくれるだろう


「お好きになさい。そんな恰好をしたところで、あなたは愛野美奈子だわ」
「……でも、レイは愛していると思ってくれる」
みちるだと誤解して、愛しいと思ってくれる。そう思う心は痛いはずなのに。
苦しいはずなのに。
「…………ここから歩いて10分くらいのところに、うちの別荘があるわ。覚えてる?」
「えぇ」
「近くに住む管理人に電話をして、鍵を開けておいてあげる。自由になさい」



レイ、美奈子を助けてあげて
美奈子だと気づいてあげて

愛野美奈子を愛していると、気づいてあげて


真っ暗な海辺で苦しんでいるのはレイなのに、死を受け入れようとしているレイよりも、どんな術を使ってでも助けようとしている美奈子の方が、苦しいのではないかと思える。


愛すべき月よ
私たちの愛を捧げた月よ

どうか真実の愛を彼女たちに教えてあげて欲しい

偽りの海王みちるの背中を見送り、星降る空を仰いだ



どこまでも美しい満月




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Date:2014/11/15
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