【緋彩の瞳】 ある恋と愛の物語 23

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

ある恋と愛の物語 23

意識のないレイちゃんを背負い、みちるさんの別荘にたどり着くと、人の気配はすでになかった。車もない。

主寝室へと運び、身体についている砂を軽く払い落して、ベッドに寝かせた。
ひんやりとした身体。赤く染められた両手両足。さっきよりもはっきりと顔を覆い尽くす嘆きの赤い呪い。


もう一度、自分に問いかける。
だけど、さっきと答えは違わない。

美奈子はレイちゃんを助けなければならない。


愛してる
深く、何も恐れるものもない愛だけを捧げられる


レイちゃんは、みちるさんが好き
みちるさんに抱かれたいと思っているだろうか
みちるさんに処女を……純潔を捧げたいと願ったことはあるだろうか
ときめく胸の高鳴りだけに満足をして、想い焦がれ、けれどその想いで満たしているだけじゃないだろうか

だけど
わずかな恋心も想い合えば、愛という芽を出し、やがて花を咲かせる事だってある

だからきっと、レイちゃんもみちるさんを心から愛しいと想うだろう
みちるさんがヴァイオリンを奏でるように、優しい指先でその素肌に触れたら、愛しいと感じてくれるかもしれない

何を迷うことがあるの
美奈子しか、もう、レイちゃんを救えない

美奈子しか、海王みちるを演じることが出来ないのだ



みちるさんを愛して、レイちゃん
この偽りの身体を
この偽りの声と、この偽りの手で、愛してあげるから

偽りの名前で美奈子を呼んで

愛してると言って
愛してると、何度でも言ってあげる


Love me


「レイ」
身体を揺さぶられている感触。闇の中にいたはずなのに、瞼には柔らかいオレンジの世界が広がっている。
「レイ、目を覚まして。レイ」
何をしていたのだろう。ここはどこだろう。明るい景色に感じるのはどうしてだろう。
さっき、誰かに背負われていた気がする。とても優しくて頼もしくて、心が落ち着く背中。
いつも、傍にあったような温度。
「レイ、レイ」
光が視界を奪うように浴びせられた。きつく閉じていた瞼は、それを避けるように顔をそむけようと反応する。
頭を揺らすと、レイは自分が何をしている途中だったのか、段々と記憶がよみがえってきた。
「………だ…れ……」
「起きて。わかる?レイ」
「……ま、ぶし…」
光が消えた。人口で作られた光。朝の優しい光ではないようだ。冷たい砂浜でもなく、部屋の明かりが柔らかく注がれている。そして、ペンライトを向けられていたのだと知った。
ベッドに寝かされていて、身体の上にはレイが最後に思い描いていた人とは違う、どうしているのかが分からない人がいた。

「……ど…して…みちる、さんが…」
「助けにきたのよ、レイ」

なぜ。

誰にも場所の特定をされないように、気を付けながらあのビーチに行ったたのではなかっただろうか。
平日の夜にこんな別荘地に用のないはずのみちるさんが、たまたま通りかかるわけもないのに。


「……どうして…どうやって…」
「愛している人が死ぬのを、私が許すとでも思ってる?私ならあなたを助けられるわ。そうよね?」

瞬きをするたびに、瞼を覆っている赤い染みがまぶたを覆っているのが分かる。
あぁ、息が苦しい
これは夢ではない
何もかも、夢じゃない


美奈


あの馬鹿


あの大馬鹿は


いったい、みちるさんに何を吹き込んだの


霞んで見えるみちるさんはレイの身体の上にまたがり、そして吐息が頬に触れる数センチの距離で、じっと見つめてくる。

「ずっと、レイを愛していたわ」

まさか、そんなはずはない
そんなことは……

美奈に言えと言われたの?
用意されたセリフなの?
あの馬鹿なら、それくらいする

きっと、レイが誰に恋焦がれているか知っていた
そして、仲間を救うためにこんなことをして

美奈の馬鹿

誰も傷つけずに死のうとしているのに
こんな想い出なんていらないのに

恋をした思い出に純潔を捧げるだなんて
スズと同じようなことをしろというの

みちるさんを悲しませる結末を、迎えろというの




you dont't know how much I love you
関連記事

*    *    *

Information

Date:2014/11/17
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/398-d3aed343
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)