【緋彩の瞳】 愛情表現 END

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

愛情表現 END

それから8か月。


「………何、寝不足?」
「ちょっとね」
朝、一緒にお風呂に入っていると、問答無用で抱かれた。レイはベッドで寝ているとき以外に、求めてくることがある。ベッドまで待ってとお願いしても、それはまたそれで別だからと言われ、明るい光の中で散々いろんなことをされた。みちるが同じことをしようとしても、断固拒否なのに。
「なんだ?腰砕け……ってやつ?」
朝からの仕事は、立っていることがやっとだった。遅刻ギリギリまで攻め立てられ、遅刻しちゃうって言っても、時計を見ながら”大丈夫、計算してる“なんて言う始末。
あんな風にしたのは、一体誰?と問うたところで、みちる自身なのだ。
「………レイは身体が弱いのに、妙なところで体力があるの」
「それはえっと……どっち?」
「私がされる方」
「…………聞かなかったことにしよう」
「私が抱いているときは本当にかわいいのに。逆の時は、何か楽しんでいるとさえ感じるわ」
「いいんじゃないの?愛されてるってことだろ」
初めてみちるを抱いてくれた時、あまりにも優しくそっと抱かれ、あんまり気を遣わなくても大丈夫って言ったのを覚えている。レイの指が触れてくれる、それだけで酔いしれて、すぐに果てた。レイはみちるを抱いてくれることはないだろうと、それも覚悟の上で付き合い始めたけれど、今はみちるの方が抱かれることが多いかもしれない。
レイは一度で終わらせてくれないから。
「………愛され過ぎてるかも。私、きっと来世なんてないわ。このままでいいって思うもの」
今、死ぬようなことがあったとしても、何の未練もない。こんなにも、愛しい人に愛されてしまうと、きっともう来世分の幸せも今費やしているんだと思わずにいられない。
「あっつ~!暑くてたまらん!!!」
「アイス!宇奈月ちゃん!クリームソーダにたっぷりアイスのっけて!」
美奈子とうさぎが文句を言いながらクラウンに入ってきた。みちるは背筋を伸ばして座りなおす。
「やっと試験終わった~」
「今回は、それほど難しくなかったわね」
「……それは亜美ちゃんだけだよ」
まこと、亜美も暑そうに額の汗をぬぐいながら腰を下ろす。相変わらず、みちるの隣は開けられたまま。
「レイ。お帰りなさい」
いつものように、4人の飲み物が半分減ったところでレイが入ってきた。
「ただいま」
「外は暑い?」
「夏だもの」
何か涼しげ。髪を払って暑さなんて関係ないと言った感じ。汗ひとつ掻いてない。
澄ました顔は、よそ行きモード。朝、みちるを抱いていた時の爛爛とした瞳の輝きなんて、今は隠れてしまっている。外で求められても困るから、このままでいてもらって構わない。
それにしても、感情の薄い子なのに。
相変わらずのはずなのに。
みちるを愛するときだけ、嬉しそうで幸せそうで楽しそうで。
本当のことを言うと、みちるがどんな時も本気で拒絶しないのは、レイのその普段見られない表情を見ていたいからなのだと思う。
みちるを抱いたあとは、子供のような顔をして、みちるにしがみついて眠る。疲れているのはみちるの方なのに、なぜかレイを“よしよし”なんて、している。
「アイスコーヒー?」
「あ、うん」
レイの飲み物を頼み、みちるも同じものを追加した。
「……あ…………」
レイが何かつぶやいて、それからさっと視線をみちるとは反対側に落としてしまう。
「何?」
「………別に……今日、お仕事だったでしょ?」
「えぇ。午前中はね」
「スーツじゃなかったの?」
レイは運ばれた水を一口飲み、視線を泳がしている。どうしたのだろう。珍しく挙動不審。
「この暑いのに?フォーマルじゃなくてもいい場所だったから、この服にしたけれ………ど……」
そのやり取りを盗み聞きしていたのか、それともそれは関係なく見つけたのか。みちるがまさか……と思って自分の胸元を確認するより早く、ニヤニヤした美奈子の視線が、ばっちりみちるを捉えていた。
「チラチラ見えてるわよ」
暑いから、シャツのボタンはすべて開けていた。キャミソールの重ね着をしていたが、レイは見えるところにいくつか、情事の跡を残していたみたい。
「…………」
無言でそっと、みちるはシャツのボタンを全部止めた。遅刻ギリギリで慌てて着替えたから、そんなところまでチェックをしていなかった。大人たちとの打ち合わせのときは、たぶんボタンはすべて閉じていたはずだから、大丈夫だろう……けれど。
「あ~~ぁ、暑い暑い。暑いったらないわ。ふーん、そうなんだ。そっか、愛されまくっているねぇ」
美奈子の冷やかしに、さすがにみちるも恥ずかしくなってうつむくしかできなかった。
「レイ、考えて付けてやれよ」
はるかは笑いを少し堪えているようだ。さっき惚気を散々聞かせた後で、こんな真っ赤なレイの顔を見たら、笑いたくなるのかしら。はるかは気が付いていなかったのだろう。座る位置によるのかもしれないけれど。
レイは真っ赤に頬を染めて、じっと視線をあげられずにいる。こんなに照れた顔をするなんて。
「………お願い、もう、からかわないで」
家に帰ってレイが口をきいてくれなくなるかもしれないから。
「みちるさん、見せびらかしていたわけ?」
「そんなわけないわ」
「だよね。ほら、レイは私のものみたいな主張かなって」
「するわけないでしょ?もう、これで終わり」
レイはずっとうつむいたまま、真っ赤な頬でコーヒーを飲み、押し黙ってしまった。美奈子はずっとニヤニヤしていたけれど、はるかとまことに頭を叩かれ、亜美が夏休みにどこへ行くという話題に変えてくれた。
結局レイは、一言も発しなかった。絶対行きたくないはずの海に行くことになっても、文句さえ言わずに沈んでいた。

「………スーツだろうと思って…」
歩いてマンションに戻っている途中、ようやく声を出してくれた。今の表情はちょっと落ち込んでいる。
「キスマーク?レイ、考えて付けているの?」
「………一応」
「もういいわよ」
消せないことだし、愛し合っている証拠なのだから、そこまで落ち込むことなんてないのに。レイはみちるとそういうことをしていると、仲間に知られたくないのかもしれない。
「しばらく美奈に、からかわれるわ」
「あの子もバカじゃないわよ」
「美奈はバカよ」
一生の不覚みたいに深いため息を吐く、
「そんなに?いいじゃない。された私がもういいって言ってるのに」
「…………でも」
「いいのよ。私のことを愛しているっていう証拠なのだから。からかわれたって、私は構わないわ」
レイは何か言いたそうに口を開いて、結局閉じた。うつむいたまま。
「違うの?」
マンションのかぎを開けて、エレベーターのボタンを押す。振り返ってレイの顔を覗き込むと、ちょっとまた赤くなっている。
本当にかわいい。誰にも見せたくない。
「………違わない、けど」
愛しているというセリフは口にしてくれなくても、レイがみちるのことを想ってくれていることはわかっている。
「放っておいたらいいわよ」
13階のボタンを押すと、背中に抱き付かれた。照れくさい顔を押し付けて隠すみたい。
「可愛いんだから。レイ、今度は私がレイに付けてあげる。よく見えるところに」
「嫌よ……絶対」
「海で水着になったときに、全身に見えるように」
「……嫌だってば」
本気で嫌がる声に、みちるは笑ってみせる。きっと拗ねている。今日はもう、セックスしないって言ってくるに違いない。だけど、結局今日も、求め合ってしまうのだろう。
「もぅ、今日はしないんだから」

ほらね

「そう?私、朝の続きをしたいわ」
「欲しいの?」
「そうね。明日もお仕事だから……見えないところに、沢山付けて。たくさん愛してほしい」
顔をあげたその頬に唇を寄せる。レイはすぐにキスを求めてきた。
到着のチャイムが鳴って、手を取り合うと、鍵を開けて、廊下に倒れこむようにして求められた。
みちるが世界で一番愛している人は、みちるのことを世界で一番愛してくれている。
喜怒哀楽を表現することは少し苦手だけれど、みちるにだけはわかる愛の仕草もある。
レイのすべてを、みちるだけが知っている。

それがどれだけ幸せか、レイに伝わればいいと願っている。







Merry X'mas
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Date:2014/12/25
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