【緋彩の瞳】 レイの悩みの種 END

緋彩の瞳

みちる&レイ小説[幼馴染]

レイの悩みの種 END

リダイアルからレイを選んで、電話をかけてみた。鳴っているけれど繋がらない。一度切って、自宅にかけてみる。それも留守番電話に繋がった。
「……何してるのよ、もう」
仕方ない。みちるは火川神社の代表番号にかけた。確実に誰かが出てくれる。
『はい、火川神社です』
声はレイだった。巫女のお仕事中だったから、電話に出られなかったらしい。
「レイ」
『………何でここにかけてくるのよ?』
「うさぎから聞いたわ。身の危険を少しは考えなさい」
『………うるさいわね。何もないわよ。一体何なの?そんなに衛さんって信用できない人?まったく何も心配する必要なんてないのに、かわいそうだわ』
「レイ、一つ屋根の下に健全な若い男女がいるっていうのは、それだけでよくないことよ」
『部屋も離れているし、見張りに猫一匹付けてるし、何かあったら私の方が力は強いわ。丸焦げどころか、灰になっちゃうわ』
「いざとなったら、そんな力出せるわけないでしょ?」
『みちる、何か問題が起こる前提で話をするのはやめて。鬱陶しいったらないわ。何もないったら、何もないのよ!二度と掛けてこないで!』
プチっと電話が切られてしまった。人がこれほど心配してあげていると言うのに。
「もしもし、美奈子?」
とにかく、レイの身の安全を確保しなければ、みちるはもう心配で心配で眠れなくなるのは間違いない。
『あ、みちるさん。ちょうどよかった!ねぇ、聞いてよ!レイちゃんが衛さんと一つ屋根の下で一晩を明かそうとしているのよ!』
美奈子の表現はいろんな説明を飛ばしてしまっている。その台詞だけを先に美奈子から聞いていたら、みちるは間違いなく家を飛び出して、火川神社に走っていたに違いない。
「……うさぎから、はるかに電話があったわ。衛さんが神社でレポートを書くためにお世話になっているらしいわね」
『監視するって言ってんのに、帰れって!まったく、あの真っ白な身体に指一本でも触れたら、粉砕機で人間ミンチにしてやるんだから』
「あなたやうさぎが行くと、別のトラブルがまた起こってしまうからでしょ?私が監視しに行って差し上げましょうか?」
さっき、電話かけてくるな!と怒られたばかりだけれど。
家に来るな、と言われたわけじゃない。
美奈子に頼まれたと言う名目で行けば、堂々と正面から行けないわけでもない。
きっと、叩かれるくらいはされるだろうけれど。
レイの身の安全が最優先。
『本当?みちるさんがレイちゃんを守ってくれるの?』
「えぇ。何もないと思うけれど、あなたとうさぎがそれで安心できるのなら、私が行って差し上げるわ」
『お願い!お礼にレイちゃんがクラウンでケーキを奢るから』
「あなたに奢ってもらうわよ。ところで、どうして美奈子がそんなに心配する必要があるの?」
つい、意地悪をしてみたくなって聞いてみた。美奈子は周囲に言いたくて言いたくて仕方がない様子だけど、レイがそれを認めていないらしい。
『うぇ?いや、あの、ほら、それはやっぱ、仲間として、TA女学院のお嬢様の貞操をお守りすべく、リーダーたるこの私が立ち上がらないと、ねぇ?』
「そうね、確かにあのTA女学院の火野レイの純潔を奪うなんて、そんな大事件が起こったら、周りの人間が黙っていないわね」
『だ、だよね~!は、はははははっ』
明らかに動揺しきっている声。
「私も前世で、あの子をずっと守ってきた部下として、もしそういう人が現れたら、はるかとせつなと一緒になって、海底に沈めてしまうかもしれないわ」
『ひぃっ!』
「あら、どうかして?」
『な、何でもない。と、と、ととと、兎に角、レイちゃんのことをお願いします』
「言われなくても」
みちるは幼馴染として、レイの身の安全を守らなければならない。
大体、レイはすっかりもう忘れているようだけれど、衛さんは過去にみちるの実家にピンクダイアを盗みに入った泥棒であって、その時にみちるが投げ飛ばしたことがあるのだ。そんな人なのだから、何も過ちがないという根拠なんて、あるわけがない。すでに前科はあるのだから。



「はるか」
「……どこか行くつもり?」
服を着替えたみちるは、一泊するつもりで鞄に必要なものを詰めて部屋を出た。
「美奈子からお願いされたから、レイのところに行ってくるわ」
「いや、あいつ、みちるにそんなことを頼んだのか?何その旅行バッグ?」
「一泊してくるの」
「いや、そこまでしなくてもいいんじゃないか?」
はるかは大げさすぎると、みちるの手にしている鞄を見つめて笑っている。
「そういうことだから」
みちるは微笑みもせずにはるかを一瞥した後、玄関に向かった。
「みちる、本気?」
「当たり前でしょ?はるかはレイが心配じゃないの?」
「いや、相手は衛さんだろ?」
「衛さんが何もしないという保証はあるの?レイがお風呂に入っていて、偶然裸を見たりでもしたら、手を出さないとも限らないわ」
「過保護じゃない?どうしてみちるがそこまでするの?」
「…………前世の頃から、お守りするのが私の役目」
「無理やりこぎつけただろ、今」
みちるは何とでも言えばいいわと言い返して、靴を履いて家を出た。
「おい、みちる!僕らの夕食は?」
「はるかが作って」
通りまで出て、タクシーを捕まえて、夕食の買い物経由で火川神社へ。





「……………美奈とうさぎに来るなって言って追い出したのに、どうしてみちるがいるのよ」
神社のお手伝いも終わり、夕食をどうしようかと考えながら母屋に向かうと、何やらいい匂いがしてきた。お手伝いさんがまだ、帰っていなかったのかしら。いつもは17時までのはずなのに。そんなことを考えながら台所に入ると、いるはずのない人間が、鼻歌なんて歌いながら料理をしている。
「美奈子が様子を見てきて欲しいって」
そんな言い訳、レイに通用すると思っているのかしら。
頭のネジに錆でもついているみたい。
「で?」
「……で?デパートで美味しそうなお魚を買ってきたわ。煮つけとお刺身と、野菜の天ぷら。お味噌汁は赤だしがいい?」
「………赤だしでいいから、それを作り終わったら、とっとと帰って」
「嫌よ」
保護者は何をしている、何を。
レイは心の中ではるかさんの胸倉をつかんでみたが、あの人がみちるに言い聞かせるなんてことが、できるはずもない。
「嫌って何が?みちる、連絡なしにここに来ないっていう約束をしたでしょう?」
「おじいちゃんに連絡したわよ。お泊りしたいって。どうぞ勝手にって言われたわ」
「…………何、みちる。叩かれたい?つねられたい?」
そんな幼稚園児のようなことを言って、約束は守っているだなんて、よくもまぁ言えるものだ。美味しい料理を作って誤魔化して、レイがそれで機嫌を直すだろうという魂胆も、ものすごくわかりやすい。
「おじいちゃんが、天ぷらにして欲しいっていうから、わざわざ揚げ物にしたのよ?どうして叩かれないといけないのよ」
「話をすり替えるんじゃないわよ」
「美奈子もうさぎも、ここには来ないのでしょう?私がここにいても、誰もわからないわよ」
「衛さんがいるでしょう?」
「離れているし、声だって聞こえないわ。食べ終わったらレイの部屋にいればいいじゃない」
これは間違いなく、居座るつもりだろう。なんだったら、泊まるつもりかもしれない。みちるなら、確実に泊るに違いない。人の部屋に勝手に蒲団を敷いて、当たり前のように寝るに違いない。
「……わかった。よくわかった。私はご飯を食べたら、みちるの実家に泊まりに行くわ。みちる、どうぞこの家に泊まって、衛さんがちゃんとレポートを書き上げるまで、待機してなさい」
名案だわ、と思った。
ここはレイが10年以上住んでいる場所だけど、みちるだって同じ年月、この神社で遊んで、泊まりに来て、おじいちゃんのことをよく知っていて、家の中のこともよく知っている。どこに何があるのかも、去年作り替えたお風呂のお湯の沸かし方も、最近、洗濯機の脱水機能があんまり調子よくないことも、よくよくわかっている。だったらみちるをここに置いて、レイがみんなの望むように、衛さんから離れたらいい。
「……どうしてそうなるの?だったら、パパのホテルに衛さんを泊まらせたらよかったじゃない。スィートくらい用意差し上げてよ?」
「逆に気を遣わせるようなことをしたくなかったのよ。大体、私が衛さんの家で消火器をまき散らしたからなの。みちるなんて、これっぽっちも関係ないでしょ」
レイは親指と人差し指の隙間を数ミリだけ開けて、みちるの目の前に見せつけた。
「関係あるわよ。あなたに“もしも”のことがあったら、私は生きていけなくなるでしょ?私の人生が無茶苦茶になってもいいとでも思ってる?」

………なんでそうなるんだか。

「もしものことなんて、100%ない」
「世の中に100%のことなんて、それほどないわ」
「………とにかく、私はみちるの実家に行く」
「パパもママもいないわよ」
「じゃぁ、慶介パパのホテルに行くわ。スィートルームにでも泊まって、請求書をそっちに渡せばいいんでしょ」
ふくれっ面のみちるに、レイは舌を出して見せた。
かといって、このご飯を食べないと言う選択肢なんてないから、ちゃんと美味しくいただくつもり。
「レイが出ていくなら、私とレイの関係を美奈子にバラすわよ?」
「………卑怯な」
「あなたが誰と付き合っているか、私が知らないとでも思ってるつもり?それもうさぎたちに言うわよ?」
みちるにはバレているだろうとはわかっていた。あえて報告をするのも何となく嫌だし、みちるが美奈に何かするんじゃないかってちょっと考えてもいて。
「………卑怯者」
「何とでも言いなさい。大体、私1人を置いて、衛さんと2人でいさせるなんて、レイは平気なの?不安にならないの?」
「あのうさぎしか見ていない人が、みちるに手を出すなんてないでしょ」
「そう……レイは私の心配をするつもりがないのね」

メンドクサイ

本当に、メンドクサイにも程がある

シュンとした顔の幼馴染を置いて出ても、衛さんなら全然問題はないけれど、みちるは本当に美奈に言いふらすと言うことをやってしまうに違いない。

「わかったわよ、はいはい。いればいいんでしょ、いれば」

美奈の相手もうさぎの相手も、相当疲れるけれど、みちるの相手だって同じくらい疲れる。共に物心つくよりも前から傍にいる相手だから、余計。
何を考えているかが、嫌になるくらいわかってしまうのだ。

「じゃぁ、食事にしましょう。衛さんは勝手にご自分で用意していただいて、カップラーメンのお湯くらいは提供しておけばいいわね」
可愛そうな衛さん。彼は気を遣って、ここに来る前に自分で夕食を買っていたけれど、こっちで高そうなお刺身を食べて、あっちがカップラーメンなんて。
「………疲れるったらないわ」
「いたっ!……何よ、もぅ!」
レイは満面の笑みのみちるのお尻を、思いっきり叩いてやった。



こうして、レイはみちるに振り回されるし、夜中にうさぎと美奈から30分置きに電話がかかってきて眠れないし、みちるのお尻を叩く程度じゃ帳尻合わないくらい、とんでもなく疲れる羽目になった。

ともあれ、レポートは無事書き終わったみたいで、レイも罪の償いはこれにて終了。

まぁ、そのあとに美奈が神社に居着いてしまって、身の危険どころか、すでに身体中にいやになるほど跡をつけられることになってしまったのだけれど。





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Date:2015/01/13
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