【緋彩の瞳】 傷が癒えたら

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

傷が癒えたら

ナミロビです



「宝石に目がくらみやがって」
書きかけの広げられた海図の上に、さっき略奪……いや、ロビンから受け取った宝石をゴロゴロと袋から取り出していると、呆れた声のゾロが文句を言って来た。
「うるさいわね!あの女のことはちゃんと見張っているわよ。ビビをあんな目にあわせたんだから、私だって簡単に心を許すつもりもないし」
ルフィがいうには、死ぬところを2度も助けてくれたらしいから、クロコダイルのようにルフィを殺すつもりなんてなかったのだろう。なんだかんだと、ビビを殺さずにいたこともそうだ。むしろ、簡単に取れる命だったのに。
あの戦いの妙なというか、不思議な幸運はおそらくすべてあのロビンが糸を引いていたのかもしれない。
でも何のために?
元からルフィの仲間になりたかったからなのか、わからない。

この宝石はお金に変えたら、しばらくの食糧の確保や服を買ってもおつりがくる。
どうして簡単に渡したのだろう。ロビンはまったく興味がないようだった。
お金を払ってでもこの船に乗って、仲間が欲しかったのだろうか。
クロコダイルの私物を早く手放したかったからだろうか。
まぁ、いい。今はナミのものなのだから。

『私には行く当ても、帰る場所もない』


さらりと言ってのけたセリフだったけれど、
それには重たい意味があるのではないかと、なぜか思った。
だから、なんとなく本気で追い出そうという気力が降下してしまった。
わずか8歳で賞金首にされて、20年間ものあいだ世界政府から逃げ回ってきた。
生きるためには何でもやった。

ちょっとだけ、ナミは自分の過去と重ねてしまった。




「ナミ。言われたとおりにちゃんと治療したぞ」
船のあちこちに点々と付けられた血痕を見つけて、犯人を連行し終わり報告を受けたナミは、幾分落ち込んだ顔色のチョッパーを連れて誰もいない場所に移動した。
「どうしたの?チョッパー。ロビンに何かされた?」
「ううん。ロビン、ひどい傷口だったよ。ちゃんと治療しておいてよかった」
「そう」
「あんな傷を負っているのに、平気な顔していたなんてすごいよ。きっと、今までそう言う弱いところを見せちゃいけないところで生きてきたんだろうな」
チョッパーめ、色仕掛けでもされて同情を売られたのだろうか。あれだけビビっていたくせに。
確かにナミも、血痕を見つけていなかったら怪我をしていたことには気づかなかっただろう。
それくらい彼女は完璧だった。
「そりゃ、クロコダイルよ?あの悪党の手先だったんだから。しかも結局ボスに裏切られて殺されかけたんでしょう?」
「………いろいろ、辛い目に合って生きて来たのかも知れないな」
血痕の原因になった傷以外にも、過去に負った傷跡は身体にいくつか残っていて、それをチョッパーは見てしまったらしい。上手に隠してあったけれど、きっと痛かったに違いない、とかなんとか。
「ナミ、きっとロビンの傷も癒やせるよな?ナミたちが俺を救ってくれたみたいに」
チョッパーは敵じゃなかったけれど、ロビンはついこの前まで戦っていた相手。
でも、それをいちいち言うつもりはなかった。
ロビンを想うチョッパーの気持ちは大切にしてあげたい。
「“仲間”なんだから。当然でしょう?」
「そうだよな!うん、そうだよな!」
チョッパーはそう言って、ナミの両手を取ってくるくると踊る。
「ナミ、じゃぁロビンをよろしく頼むよ。女同士だもんな、きっと仲良くなれる!それに、ナミが一番にロビンの怪我に気付いたんだもんな!」
まぶしい奴め。
はいはい、とナミは返事をして肩をすくめた。

数時間後。

監視していようって思っていたのに、船には阿呆の割合の方が断然高くて、そっちに気を取られてばかりだ。放っておいたら簡単に沈没するようなこともやりかねないルフィたちに怒鳴り散らしては、蹴とばし投げ倒す。
でも、ロビンはこの騒がしい連中を冷静に、余裕ありますっていう顔をしながらナミの私物の本を読んでいる。怪我なんてまるでありません、みたいな顔して。
なんだって言うのよ。心配させてごめんなさいとか、しおらしい声で言ってくる気配もないし。
「ちょっと、ロビン。あんたも仲間ならこの阿呆たちをしっかりしつけなさいよ!」
「そう?わかったわ」

ふふふ。

うわ、適当かつ絶妙にかわしやがった。しかもめっちゃ綺麗な笑顔をつけて。
「……くっ」
次の文句なんて用意していないものだから、固まることしかできない。
適当にナミたちと接しておいて、また次の島でもっと有能な奴らに取り入る気なのだろうか。
「ってこら!ルフィ!!船を壊すな!」
この阿呆たちを自分一人だけに押し付けて。
冗談じゃない。
絶対に認めない。
首に縄をつけてでも、この船に置いてこの阿呆たちを躾ける役を押しつけてやる。
「ちょっと、ロビッ……」
「航海士さん、ログは大丈夫?」
本から視線をあげないで独り言のように呟かれて、叫びを思わず飲み込んでしまう。
声をかけられて息が止まりかけた。
「ロビ…え?ろ、ろ、ろろろ、ログ?!えっと……」
やばい、ズレてる。
「サンジ君!面舵!」
ゾロと言い争っているサンジ君に命令すると、ハートマークをちらつかせて勢いよくこっちにやってくる。
どうして、進行方向からわずかにずれたことにロビンは気がついたのだろう。
「あなたがこの船を導くのよ。頼りにしているわ、可愛い航海士さん」
挑発的な笑い声と、相変わらず視線は本へと向かっているのに。
「………そ、それはどうも。期待してもいいわよ。あと、私が可愛いのは知ってる」
女に可愛いって言われるのは、ちょっと慣れないかもしれない。
「………そ」
思った以上に、心が喜んでいる気がしてそんな自分に腹が立った。

ちらりと、視線を上げたかと思えば、まるでナミの顔を確認するかのように見つめてくるし。
「連れて行ってね、次の島まで」

あたりまえよ。
今に見てなさいよ。
同情なんて、ちょっとでもするんじゃなかった。

結局、そのあとで
空島と言うものがあることも、空島の情報もすべてロビンから教えてもらう羽目になったのだけれど。


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Date:2015/02/01
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