【緋彩の瞳】 ゆっくりと side R

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

ゆっくりと side R

“ジャヤ”に到着すると、航海士さんがエターナルポーズを盗み取ったご褒美だと言って、あげた宝石の中から1つが手元に帰ってきた。
「いくらなんでも、無一文で街に出られないでしょ」
まったくないわけではなかったけれど、ロビンは黙って受け取った。シャツ1枚くらい買える小銭はあるから、残りはどこかで盗もうかしらと考えていたばかりだ。
「何よその顔。あんたは仲間なんだから、お宝の山分けは当然でしょ?食糧とか薬とかの経費を除いたあとに分配したら1つになっちゃったのよ。文句あるわけ?」
文句が言いたいわけでもなければ、特に何か言いたいことがあって彼女の顔を見たわけではない。
お金が好きそうな子だと思っていたけれど、きちんと考えていてしっかりしているようだ。
「いいえ。どうもありがとう」
服の調達と本の購入。空島への情報を手に入れるためにも、多少経費はかかるかもしれない。
先に船を下りた“仲間”たちを一通り見送ってから、遅れてロビンも街へ出ることにした。



数時間ぶりに1人になる。
とはいっても、ここは街中だから賑やかで安っぽい海賊たちがウヨウヨしている。
とりあえず宝石を現金に換えて服を買った。航海士さんの服を使ってしまったから、彼女にも新しい服を買ってお詫びしておいた方がいい。10歳も年下の女の子の服を選ぶというのは簡単なようで難しく、涼しそうな格好ばかりの彼女のためにパーカーを買うことにした。オレンジの髪が映えるように、海よりも蒼い色のパーカー。すすんで人のために買い物をするということも、あまり経験がない。喜んでくれるかしら、なんてところまで期待をしようとは思わないけれど、せめて嫌な気持ちにならなければいいかな、と思う。
若い女の子というのは、色々と考えなければいけないようだ。
自分があのくらいの年齢だった時は、流行りの服だとか欲しいものなんてことを考えて生きていなかった。裏社会を生きていく上で、年齢を上に嘘を吐いていろんなことをした。

とりあえずの必需品も買い揃えると、街の隅にある古書を取り扱うお店を見つけて心が躍り、スキップする気持ちで店内に入った。
埃だらけで無造作に積まれたりしている本たちと、カビの臭い。歴史を記す古書もあるのにこんなぞんざいに扱うとは信じられない。
「いらっしゃい」
どこにいるのだかよくわからない場所から声がする。年老いた声だった。ロビンは埃を吸いこまないように口を押さえながら、一歩一歩奥へ進む。
「すみません、この島の地図を探しているのですが……それと、この島と周辺の歴史について書かれてある本はありませんか?」
店の奥からしわくちゃな腕が伸びてきたかと思うと、人差し指がぴんと立った。
「本ならあの辺にあるよ。適当にお探し。5万ベリー」
「………あの辺……5万ベリー……高いわね」
その指先が指した先には、本棚とそれに納まらずに無造作に山に積まれた、触らずとも埃がたちそうな本の山。探し出すだけで一日費やす気がする。
ロビンは手伝えとも、出してくれとも言わずにハナの手を咲かせると、1冊1冊表紙の埃を掃い、目的の物を探し始めた。
時間と所持金はかなり費やしたけれど、どさくさにまぎれて読みたい本もついでに頂戴してしまおう。

ログが指し示すのが空である限り、次に向かう場所は空島でしかない。
神に会えたりするのかしら。
会えたら、何か願いを叶えてくれるかしら。
特に何か願いなんて、今は思いつかないけれど。
あえて言うのなら、心を落ち着かせる居場所が欲しいくらい。
ここにいたいと思える、ロビンの居場所というものが欲しい。
帰る場所が欲しい。
かりそめを繰り返して、いろんな名前を勝手につけられない場所。

そんな場所はどこかにあるのかしら。
そんな事を考えながら、埃にまみれて目当ての本を探した。

「あんた、能力者かい?」
30分ほど本を整理しながらようやく数冊の歴史本を見つけ出すと、気配なく老婆が現れた。
「そうですけれど」
「たいがい、うちで本を探している人間は5分で諦めるけれど。おまえ、よく探したね」
ついでに綺麗に本を並べなおしたお礼と言って、しわくちゃで顔がよくみえない老婆は、この島の地図をひらひらと出してきてくれた。
「乗っている船のログが空を指しているから、そこに行きたいんです。そのためには情報が必要なんです」
「あいや~。そいつは災難だね。壊れちまったんじゃないか?」
笑いながら、その地図におもむろにバツをつけると、そこにいる“モンブラン・クリケット”という変わり者を訪ねてみると、何かしらの情報が手に入ると教えてくれた。
壊れたのではないとロビンが言い返すより先に、この老婆はそれがどういうことなのかを分かっているようだ。
「そいつは街から追われたのさ。海賊やっとったらしいが、何か知っているかもしれん。生きている人間の方が役に立つこともあるさ」
ひらりとロビンの手元に置かれた地図。少しは船を先へ進めるきっかけをつかめそうだ。
「ありがとう、おばあさん」
「いや、なに。あんた航海士かい?ログ・ポーズと“仲間”を信じて旅を続けな。無事に空島に行けた日にゃ、お土産でも持って来んだよ」
航海士ではないけれど、違うなんて言って説明する前に老婆は姿を消していた。
早く本物の航海士さんにこの情報を渡してあげよう。
彼らが空島へ本気で行くつもりであれば、そこに刻まれた歴史を見ることができる。
それは、今のロビンが生きていく目的にもなるはずだ。



「ロビン、あの地図はどうやって手に入れたの?」
何か街で喧嘩をしてきたらしいルフィたち。航海士さんはロビンのせいだとよくわからないことを言っているけれど、空島につながる情報と地図を渡して、ロビンは一度船内の静かな場所へと避難した。買った本を少しでも早く読みたくて。
「買ったのよ」
使ってもいいと言われた航海士さんの部屋へと着くと、パタパタとサンダルの音を鳴らして威勢のいい声が飛び込んでくる。
ロビンの中では会話は終わったはずなのだけれど。
「あの地図を?モンブラン・なんたらの情報も?」
「えぇ。本屋のおばあさんが教えてくれたの」
「………ロビンって、そつなくいろんなことできそう」
それは褒めていると受け取ってもいいのかと思ったけれど、航海士さんは腕を組んで首をかしげている。
ちょっと前まで敵だった女が持ってきた情報を、信じてもいいのか悪いのか悩んでいるのかしら。
「これ、あげるわ」
忘れないうちにと、買って来たパーカーを紙袋ごと押しつけるように渡した。
「何?」
「服を勝手に借りていたから、お詫びに」
今度もまた、首をかしげている。ついでに眉を少しひそめて少し“不快”と見て取れた。
「別にいいわよ、もう。今さら気にしないし。私とロビンは同じ女だし、これからは助け合っていくんだから。お詫びとかそういうの、なしにしようよ。こっちも気を使うつもりはないしさ」
そんなことを言いながら、紙袋を開けてパーカーを取りだした航海士さんは、口調とは裏腹にだんだん嬉しそうな顔になっていく。それを見て、ロビンは笑ってもいいのか反省した態度を見せた方がいいのか、よくわからない。
「やった~!夜、不寝番の時に着てもいい?」
「えぇ」
とりあえず、嫌ではない様子なのでよかった。パーカーを身体に押し当てて鏡の前でチェックしているのだから、大丈夫そう。
「ロビン、傷はもういいの?」
「えぇ」
「あと1時間くらいで目的地に着くけれど、疲れてない?少し寝る?」
「大丈夫」
1時間あるのなら、本を読める。椅子に腰をおろしてさっそく1冊を手に取った。
「そう言えば街で何か食べて来た?」
「いいえ」
「お腹空いてない?」
「平気よ」
「……ふ~ん。本?何の本?」
「この島について書かれてある本よ」
1人にさせてくれるつもりはないのだろうか。こちらからお願いしたいけれど、“監視する”という条件をあの時拒否しなかったから、出ていけとも言えないし。
この場合は“監視”とは違う様子だけれど。
「何か面白いことが書いてあったら教えて」
「えぇ」
「私は甲板にいるから」
「えぇ」
何か、一通り聞くことは聞いてすっきりしたのか部屋を出て行ってくれた。
静けさを知らない仲間たちのにぎやかな声をBGMに、ロビンはゆっくりとページをめくる。
ホッとするのは1人になることができたからか、“仲間”がいることを感じることができる空間があるおかげなのかはわからないけれど、妙に心地のいいBGMに思えた。


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Date:2015/02/01
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