【緋彩の瞳】 ゆっくりと side N

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

ゆっくりと side N

「ロビン、降りる?」
ロビンがくれた地図のバツ印に到着すると、待ちきれないルフィたちはナミの静止なんて聞くわけもなくさっさと島へ降り立って行った。
梯子すら下ろさないで。
ナミはとりあえずと思って部屋にいるロビンを呼びに行くと、背中は見えているのに返事はなかった。
「……本、読んでる?」
別に降りろとは言わないけれど。言いだしたのはロビンなんだから、先頭切ってモンブラン・なんたらと会ってもらいたい。
「ロビン?」
返事をしないくらい夢中なのだろうか。でも、ページをめくる気配がない。ゆっくりと近づくと片肘をついて、本を読む姿勢のまま眠ってしまっている。
これが他の人間なら、寝るな!と起こしたかもしれない。
でも、やめておいた方がいい。相手は大人の女の人なのだから。
「……さっきは寝ないって言っていたくせに」
意地を張っていたのだろうか。
“無敵です”、みたいな美人が無防備に眠ってしまうなんて。
「結局、私がしっかりしないと」
案外ロビンも大きな子供かしら。そう思ってナミはほとんど無意識にロビンの頭をなでていた。
サラサラしていて気持ちがいい髪。そして案外と華奢な身体だ。立っているときは見上げていたけれど、椅子に腰掛けるロビンがやたら小さく弱く見える。
寝込みを襲われたことだって、今まで絶対にあっただろうに。
何だろう、殺気立っている様子もなければ、ナミが触っていることに驚いて起きる様子もない。
手当てされた傷は、上から覗き込むとそのガーゼが痛々しく見えた。
「………20年か」
彼女に母親はいないだろう。
たぶん父親もいないだろう。
もしかしたら兄弟もいないかもしれない。
正義であるはずの世界政府と海軍に追われていたのだ。
帰る場所も、語る人も、愛を想う人も、味方もいない。
彼女にとってはクロコダイルの部下である方が、命を守る選択としては正しかったのかもしれない。
「私が生まれる前から……ずっとだ」
もし、ロビンが安らぎを望むのであれば、孤独から解放されたいのであれば、ずっとこの船にい続ければいい。
「………ダメだなぁ。私ってば優しいんだから」
アラバスタの戦いを自分の中で、すでに過去にしようとしている。
ネチネチと恨むのは主義じゃない。
何より彼女は、アラバスタの人間を誰一人殺してはいなかった。
4年と言う長い年月を、ただ自分の夢を求めるというためだけに悪の組織に身を置くこともできてしまう、強い意志の源は何だろう。
でも、その意志だけが彼女を生かしていたのかもしれない。
これから、この船に乗って彼女はどんな新しい夢を見つけるのだろうか。
それは空島に行けばあるのだろうか。
「私ってば……大人だわ」
人の心配をすることは嫌いではない。むしろ、ナミがいることで笑顔になってくれると喜ばしい。でも、この人は手ごわい相手だろう。ナミよりも10歳も上なのだ。そして、ナミの想像以上に過酷な人生だっただろうけれど、それが見えてくることもない。

「………ぐえっ」

あぁでもない、こうでもない、と1人で悶々としていると、急に誰かにほっぺたを両側から押えられた。
「航海士さん、私はもう少しここにいるわ。髪で遊ぶのは、また今度でいいかしら?」
「…ロ……ロビュィン」
自分の肩から咲いたロビンの手が、ナミの頬をむにゅむにゅと撫でまわしてくる。
これ、早く慣れた方がいい。
そしていろんな意味でこの能力って恐怖かもしれない。
それにしても、どこから目が覚めていたのだろう。もしや、心の中の声まで読めるのだろうか。
「やみぇて~」
降参するように両手を上げると、やっと手が散っていった。そして肩でくすくすと笑っている。
「頭を撫でられるなんて、久しぶり」
「生意気なガキだったんでしょうね、ロビンは」
冗談を言って見せて、うっかり傷つけちゃったかと内心焦ってしまう。
「そう?そうかもしれないわね」
ちょっと振り返ってナミを見上げる表情は、余裕を持った笑顔。
作っているようにも見えなくはない。
「私でよければ、いつでもやってあげてもいいわよ?」
「じゃぁ……またお願いするわね」
お願いされなくても、むしろ気持ちいいからさせてくれてもいいけれど。
「仕方ないな。お金取るからね」

何、照れているんだろう。
ナミは自分に突っ込みながらも、負けじと余裕なふりをして笑って見せた。

「ロビン、きっと外で夕食になるだろうから、それにはちゃんと参加してよね」
「了解」
ロビンの感情がなかなか読めない。大人の女ってみんなこういうものなのだろうか。
軽くあしらわれているようにも思えてきたけれど、そこまで嫌な気持ちにもならなかった。
ただ、ナミは心の中にあっさりとロビンを受け入れていることが自分でも意外で、それがむず痒いのだ。
監視して、しもべのように扱ってやろうなんて少しだけ思っていたはずなのに。
ロビンが20年間培ってきた、相手の懐にうまい具合に入る術に掛かってしまったというのだろうか。
「………私、先に行くから」
「えぇ」


なんだろう、何か変な気分。
ハナの手が触れた頬が熱い。
まぁ、いいか。早くロビンがいる状況に慣れてしまえばいい。

空島へ行くことを考えてばかりいれば、ロビンのことばっかり気にする暇もなくなるだろうし。

ただ、気になるだけ。
ナミは言い聞かせながら部屋を後にした。


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Date:2015/02/01
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