【緋彩の瞳】 恋の海 ①

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

恋の海 ①

おぼれたのは……

「……あぁ、もう。溜まったな」
野郎どもの服も、そろそろ酸っぱい匂いがしている。
なるべく近づかないようにしていたのだけれど、ナミだってそろそろいい加減、洗濯したい。
お気に入りの服や、暴れて汚れた服もごりっと丸ごと綺麗に洗いたい。でも、せっかく汲んだ水はなるべくなら飲料に使うべきだ。それだってそんなに十分じゃないんだから。
「次の島は洗濯が最優先!」
ナミは腕を組んで溜まった服の山を見て叫んだ。

そして、名もなき無人島を偶然見つけて、休憩がてら洗濯のために立ち寄ることになった。
幸いにも木々の間に流れる小さな川もあるし、水もとても綺麗で澄んでいるらしい。先に様子を見に行くと、ウソップはさっそくチョッパーを頭にのっけて船を降りて樽を抱きしめて泳いで行った。無人島なのだから、停泊する場所がない。近付けるところまで近づいたら錨をおろして、ボートか泳ぐかしかない。
が、小型ボートは空島へ行く航海の途中でぶっ壊してしまっている。
「ロビン、行こうか」
「私はいいわ。誰か船にいた方がいいでしょう?」
ゾロとサンジ君は野郎たちの洗濯物を頭に載せて、やはり島へと泳いで渡るみたい。ルフィは腕を伸ばして島までひとっ飛びだし。
まぁ、水着になってナミも泳いで行ってもかまわないけれど。
「このあたりには死角もないし、天候もいいし。大丈夫よ。島でのんびり洗濯でもしようよ」
空島へ行く時も、空島から帰って来た時も、この船は海水をさんざん浴びて、潮臭い。まぁもともと海を渡っているのだから、潮の匂いそのものはいいのだけれど、海水を吸って乾いた木の匂いは、多少慣れてもできればたまには普通の空気を吸いたいってもの。
敵もいない、何もない無人島でのんびり。
最高じゃない。
「……だけど、私……泳げないから」
行こう、行こう。何度も子供のように誘うと、ロビンは困ったように呟いた。
「まっかせて!ウェイバーがあるから!」
何でこんなに浮かれているんだろう。たかが、洗濯するだけなのに。
ナミは親指を立てて見せて、ついでにウインクまでしながら自分の心に突っ込んだ。
「じゃぁ、そうね。行きましょうか」
ほんの数分、一緒にウェイバーに乗るだけで何でこんなに嬉しいわけ?

いや、だから新しい仲間がバロック・ワークスだったから、気になるだけなんだってば。



溜まった女2人の洗濯物。といってもロビンはそれほどないけれど。
「腰にしっかりつかまっていてね」
「……こっちの海でも使えるのよね?」
たしか、降りてすぐに彼女は試し乗りをしていたはず。1人で乗りまわしても平気って言うのはわかるけれど、今は2人乗りプラス洗濯物。
「ははは~。任せてよ!」
自信満々に胸を張るのに、やっぱりいいなんて言えるわけもなく、航海士さんに言われるがままに捕まってと言われてロビンは一緒にウェイバーに乗り込んだ。
「ま、1分くらいで着くから」
鼻歌交じりの航海士さんを信用していないわけじゃないけれど、落ちるかもしれない状況でうまく笑ってあげられそうにない。海の恐怖がロビンの航海士さんに捕まる腕の力を強めてしまう。
「……ろ、ロビン。苦しい」
「あ、ごめんなさい」
「ははは。ま、嫌じゃないけれど。レッツゴ~!洗濯!!!」

そんなに洗濯したかったのかしら。

そして、勢いよくブレーキをかけたままエンジンを吹かした航海士さんは、見事1メートルも進むことなくウェイバーと洗濯物と一緒にそのまま空中1回転をして、悲鳴とともに、もろとも海へとダイブした。

ロビンの記憶はその直後で遮断されてしまう。




「……誰か!!!!!!!!!助けて!!!!!!」
勢いよく空回りしたエンジン。
ロビンがやたらくっついてきて、なんでだか心臓がバクバクして。
それを気付かれたらどうしようって思って、焦ったせいだ。
ブレーキかけたまま前へ行こうとして、ウェイバーは前ではなく宙を舞って、ひっくり返って投げ飛ばされた。
ナミはウェイバーが自分を襲ってこないように、なんとかなるべく離れてダイブしたし、大したことではない。

だけど
「ロビン!!!!!!」
悪魔の実の能力者であるロビンは、海水に浸かったら何もできなくなる。夢中で潜って、石のように沈んでいく影を見つけた
こんなところでナミがロビンを殺したら、一生懸命空島で戦ったことがすべて無駄になってしまう。というより、仲間を殺すなんてありえない。
「サンジ君!ゾロ!!」
ナミの悲痛な大声に気がついた2人が泳いでやってきてくれた。エンジンが止まったウェイバーに3人掛りで引きあげて、呼吸があるかどうかを確かめる。
「どうしよう、どうしよう!」
チョッパーはすでに島に行っていて、当然チョッパーも泳げないわけだから。
「おまえ、早く島へ連れて行け!チョッパーに見せてやれよ」
呼吸をしているように思えないロビン。ナミは今度こそちゃんとエンジンをかけて島へ向かった。
「あ、あんたたちその洗濯物をよろしく!」
プカプカ浮いている洗濯袋をゾロたちに預けて。

「…………ごめん。私が悪い」
ここは天国……?
いえ、行けるはずがない。
ロビンは自分がどうやら生きているらしいことを確かめるために、できる限りの空気を肺に入れてみた。
「…ゲホッ…ゲホッ……」
喉の奥がしょっぱくて、ヒリヒリと痛みを感じる。
ちゃんと生きている。
「大丈夫?ロビン」
「………死んだと思ったわ」
別にこういう状況ならば、死んでもよかったけれど。
そんなことになったら、航海士さんは自分を責め続けて生きなければいけないから、それもかわいそう。
でも、死んで泣いてくれる人がいるのなら、死ぬのならこの子たちの傍がいいかも、なんて思ってしまう。生きていたことを心に残してくれるような優しい子たちの傍で、なんて。
「本当、ごめん。私の不注意のせいで、生死をさまよわせた」
嫌な予感がしながらウェイバーに乗った直後で記憶が途切れているのだから、やっぱりそう言う結果になったらしい。
「気にしないで」
「するに決まってるじゃん……ごめん、ロビン」
どうやらロビンは航海士さんの膝の上に頭を載せているようだ。こういうことされたことがないから、自分がどういう風に寝かされているのかよくわからなかった。覗き込んでくる彼女の顔と、やわらかい枕。平気だと言って立ってあげたいところだけれど、身体の力がまだ戻ってこない。
「航海士さん、私はもう大丈夫だから。あなたはたしか…洗濯したかったのでしょう?行ってきたら?」
「何言ってるのよ!ロビンをこんな目に合わせて、鼻歌歌いながら洗濯している場合じゃないわよ。心配だからここにいる」
真っ赤な目で怒られても、どうして怒るのかよくわからない。どういう声をかけてあげればいいのだろうか。
「じゃぁ、船医さんに傍にいてもらうわ。彼らに私たちの服を洗わせるわけにもいかないでしょ?」
航海士さんは怒ったような寂しそうな顔のような複雑な表情で、ずっとロビンを見つめてくる。
「……ロビンは、チョッパーの方がいい?」
ひんやりとしたものがロビンの頬を撫でた。
彼女の手だ。
こんな風に頭や頬を撫でられるなんてことも、心配をされたことも、オハラから出てこの一味に入るまでは経験したことがない。前にも航海士さんはロビンの頭を撫でていた。ただ、そう言うことが好きなのかしら、と思いながらも少しホッとしてしまう自分がいる。
「いえ、そう言う意味では。私は大丈夫よ。放っておいてくれても平気」
「動けないのに放っておくわけないって。でも、溺れさせた奴がいない方がいいよね……チョッパーについていてもらう。ロビンの服、きれいに洗ってくる」
色々と何か誤解しているみたい。でも、それを説明しようとする前にロビンの身体は航海士さんの温もりを失っていった。




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Date:2015/02/01
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