【緋彩の瞳】 恋の海 END

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

恋の海 END

「おまえが悪い」
「止めろよ、クソ剣士!ナミさんが落ち込んでいるだろ?」
乱雑な洗濯をしているゾロたちの傍まで来たナミは、いじけるようにうずくまった。
完全に色を失ったロビンの顔を思い出すと、どうしてもっと最新の注意を払えなかったんだろうと悔やむ。
カッコつけようとしたりして、浮かれた気分になったりして。
あれがロビンじゃなければ、たぶんそんなテンションになんてならなかった。
「………あ~~、私ってば阿呆!」
ちょっと、自分の感情がごちゃごちゃしすぎてわからない。
早く落ち着きを取り戻した方がいい。
だいたい、ロビンが悪い。
敵だったのに妙に親切だし、逃げずに戦うし、持っている知識は包みなく教えてくれるし、熱心に遺跡を調べたりするし。ロビンが何を求めているのか、何がしたいのかわからなくて、知りたくて、色々と聞きたくなってしまう。
「何やってんだろうな、私は」
ロビンの服を丁寧に洗って、せめてもの償いをしないと。それにしても空島で戦った時に着ていた服は血だらけ、汚れだらけ。ナミのものもなかなかひどかったけれど、これはまた派手に色々とあったみたいだ。そう言えば、結局ロビンはちゃんと手当てを受けてくれたのだろうか。あれから下りてすぐに嵐に遭遇するし、船はもうボロボロだしで、バタバタしていて確認するのを忘れていた。
「まぁ、どのみち私が溺れさせたけれどさ……」

ゴシゴシ
ゴシゴシ

後でもう一回謝ろう。
帰りこそはちゃんと運んであげないと。
あぁ、でも嫌がられたらどうしよう。でもあれはナミしか操縦できないから我慢してもらうしかない。だいたい、あんなに抱きついてくるのも悪い気がするけれど。
心臓に悪いし。
勝手にドキドキするナミの心臓も悪いんだけど。
あと、特別にみかんをあげて、天日干ししている布団でいちばんに寝てもらおう。

ゴシゴシ
ゴシゴシ

「おまえ、さっきからずっと同じ服ばっかり洗ってるぞ」
「………あぶなっ」
ゾロに言われて慌ててロビンのシャツを広げた。洗い過ぎてダメにしてしまうところだった。
危うくさらに溝を広げる予感。
っていうか、近づきたいと思っていたのかな?
まぁ、ロビンは美人だし強いし、頭もいいし完璧な女性だし。
「………中学生かっ」
ナミは自分に突っ込んで、洗いたてのシャツのしわをパンパンと伸ばした。
次の一枚は、なかなかきわどいセクシーな服。こんな服、野郎どもの前で着てもらいたくないんだけれど。なんでこんなきわどいものを選ぶんだか。見えそうで見えない、でも頑張れば見えそうな。
「って……おっさんか、私は!」

何だろう、全く。
何なのよ、この感情。
でも、とにかく早くロビンのところに戻ろう。30分もしたら、回復しているだろうし。

「船医さんは、ふわふわして気持ちいいわね」
「そそそ、そうか?」
心配そうに覗き込んでくる船医さんに、大丈夫だと言ってロビンはゆっくりと起き上がった。すぐに助け出してくれたようだし、身体も渇いて力が戻りつつある。
「えぇ、立派な角だし」
「ほ、褒められても嬉しくないぞ、このやろ~!」
「ふふ」
ピンクの帽子を撫でると、船医さんはジャンプしたり走り回ったりして、トナカイの四足になってロビンを角でつついてきた。
「ロビン!もう大丈夫なら、この島を歩こう」
目がきらきら輝いている。冒険したくてたまらない様子の船医さんの喜ぶ顔を見たい。
「そうね。せっかくだから行きましょうか」
人が住んだ形跡はまったくない本当の無人島のようだけれど、のんびり歩くのも悪くはない。そのうちみんなとも合流できるだろうし。ずっと寝ているのも、具合が悪いみたいで余計心配をかけるだろうから、無事だと姿を見せてあげなければ。
「行こう、行こう、ロビン!」
無邪気に名前を呼んでくれる。ロビンは蹄を鳴らして歩く船医さんに寄り添うように歩き始めた。木々から洩れる日差しがやわらかで、気持がいい。
心から安らぎのため息を漏らすなんて、いつ以来だろう。
記憶がないのだから、もしかしたら初めてかもしれない。
一瞬でもいいからと欲していたこのわずかな安らぎの時間が、これからもっと続くかもしれない。
続けたいし、続けるためには何もかも惜しまず出来ることはすべて出しつくして、この一味の傍に居させてもらえれば。
「楽しいか?!面白いな!ロビン、あそこにでっかい鳥がいるぞ!」
「本当、綺麗な羽ね」
「ほら!あっちは何か果物が成ってるぞ!食べられるかな?サンジに聞いてみないとなっ!」
「えぇ、そうね」
何でもないありふれた会話が楽しい。
本当に、楽しい。



「……ロビン!」
何、あの幸せな顔は。
何、チョッパーの頭撫でて、嬉しそうな顔は。
川辺に現れたロビンを見つけて、元気になってよかったって思うより先に、ものすごいムカッっていう感情が身体全体を包んだ。
「航海士さん、さっきはありがとう。おかげでもう大丈夫よ」
溺れてから面倒を見たのはチョッパーだし、運んだのはサンジ君たちだし、ナミがしたのは膝枕くらい。そもそも溺れさせたのはナミ。
それよりも、えらくチョッパーと仲良しなんですけれど。
手に花なんて持って、チョッパーの帽子には同じ花の冠があるし。
いちゃいちゃと遊んでいたわけ?寝ていたんじゃなかったの?
まぁ、元気になったのならいいけれど。
「チョッパー、あんた医者でしょう?ロビンは大丈夫なの?」
「大丈夫だ!すっかり元気になって、一緒に遊んだぞ!」
嬉しそうに花の冠を見せびらかしてくれて。
動物が好きなんだろうな、ロビン。チョッパーのはしゃぐ姿を見る目がそう語っている。
「航海士さん、洗濯ありがとう」
「ううん……これくらい」
ナミに投げかける頬笑みは、チョッパーに比べてみれば半分もない。
溺れさせたから根に持っている?
いや、チョッパーみたいな可愛げがないから、かもね。
「ロビン、洗濯もの乾くまで時間あるし……あのさ」
もう一度、チョッパーと入れ替わってもいいかな?
なんて言おうと思ったのに。
「ロビンちゅわ~ん!ナミさ~ん!特製パイナップル・ジュースが出来上がりましたよ~!」
サンジ君がおもいっきり邪魔してくれて、結局言い出せなかった。
でも、ジュース飲むのに隣に座って落ち着けそうだから、ラッキー。
「ありがとう」
グラスを受け取ったロビンの横。ナミは急いで陣地を取る。
「俺も飲む!」
「じゃぁ、俺も!」
ルフィとウソップが手を挙げておねだりしだす。
お願いだから、ロビンの横に座るんじゃない野郎ども!
……なんて大声出すことなんて当然できるわけもないから、とにかくロビンの横に座らないと。

って、何を慌てているんだろう。

「おいしいか、ロビン?」
「えぇ。ちょっと、飲む?」
人の気も知らないで、ロビンはチョッパーに一口飲んだジュースのグラスを差し出している。
間接キスだって、わかってない。
「うまっ!」
「ふふ」
せっかく横に座っても、向こう側にチョッパー。ナミは無視ってわけね。
「ロビン、元気になってよかった」
悔しいから、こっち向いて欲しくて声をかけた。
「ありがとう。気にしないで」
気にするよ。
っていうか、気になるんだよね、ロビンのこと。
口に出せないのは、なんでだろ。
恥ずかしいって思うのは何でだろ。
「お詫びにさ、船に戻ったらみかん食べて。栄養満点で、私の村から持ってきたんだから」
「いいの?凄く大切なんでしょ?」
ロビンにはまだ一つもあげてない。一番おいしそうなものを選んで、もちろんナミがちゃんと皮をむいて、食べてもらわないと。
「凄く美味しいのよ。食べてみてよ」
「そう?ありがとう」
チョッパーの頭を撫でながら会話するな!
「ナミのみかんは、めったに食べられないんだぞ!俺は一切れしかもらったことがないんだ」
「あら、そうなの?」
楽しみね、ってこっち見て笑ってくれた。

あれ、なんかやばくない?
心臓のリズムが大幅に乱れている気がする。
なんか、これは非常にやばくない?
まさかまさか、だって理由がないじゃない。


元バロック・ワークスの副社長で、さんざん嫌な目に合わされたはずなのに。
あぁ、でもルフィを助けてくれたし、結果的にロビンがいたおかげで命拾いしたわけだし。
強いけれど、むやみやたらに相手を殺すわけでもないみたいで。
感情がよくわからないけれど、意外と優しそうで。
知識も豊富で、色々と教えてくれるし。
さりげなく助けてくれるし。
20年間必死で逃げて生きてきて、独りぼっちで生き抜いて。
死ぬ思いばっかりしてきたくせに、それをさらりと言ってしまうし。
それが、何か消えてしまいそうな気にもなって。
傍にいなきゃなんて思わせてくれて。
それにそれに
美人だし、スタイルいいし、言葉遣いも丁寧だし、動物とか植物とか好きそうだし。


うわ、なんだか理由がずらずら出てきた。
でも、ちょっと待って。

何でロビンなの?

この一味の野郎どもにはろくな人間がいないけれど、これから先に巡り合う未来に輝くものを求めたらイイだけじゃないの?
「私のみかんは、特別なんだからっ!その……大事な人に…あっ、…味のわかる人に食べてもらわないと困るもの」
顔が熱くなってきた。それを見られていないか不安になって、声がやたらと大きくなってしまう。
「ふふっ……ありがとう、航海士さん。責任重大なのね」


いろんな意味で責任取ってよ、ロビン。
これ、結構問題よ、ロビン。
だってこの先ずっと一緒なんだよ、ロビン。
よりによって、あんたなのよ、ロビン。
なんだか“気になる”は、危険な意味だったみたいよ、ロビン。
考古学者なんでしょ?
こういうとき、先人たちはどうやって対処してきたのか教えてほしいんだけれど。

とりあえず、チョッパー。
あんた、私より先に間接キスしたのは許さないから。
あんたにはみかんは絶対やらん。


っていうか

これ、やっぱ……恋ってやつじゃないの?


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Date:2015/02/01
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