【緋彩の瞳】 あなたのためにできること END

緋彩の瞳

マリみて、舞乙、ワンピ

あなたのためにできること END

寝て待っていてくれてもよかったのに、ロビンはみんながいる甲板に出てきた。
もう大丈夫だって、姿をみんなに見せたかったのかもしれない。チョッパーは起き上がるのはまだ早いから、と何度もロビンを寝かしつけようとしていたけれど、ロビンは元気だからと青白い顔のくせに頑として横になろうとはしなかった。阿呆なルフィが同じ目にあってもやたら元気だから余計に気を使っているのだろうか。女部屋に行くことも、ラウンジに戻ることもしないで、何事もなかったように遠く海を見つめている。
「ロビン、無理していない?」
「いいえ。1人で寝ていてもつまらないし」
サンジ君からもらったコーヒーを一口飲んで、散歩のようなノリで船尾へ向かって歩き出すから、そのままいなくなってしまうんじゃないかと、怖くなってすぐに追いかけた。
「私、傍についてるわよ?」
「大丈夫よ、航海士さん」
ロビンはぴったりと背後にくっつこうとするナミを警戒しているのか、振り向いて少し眉をひそめて困った顔を見せてくる。

どうしてそんなに、泣きそうな顔するのよ、ロビン。

後ろを取られたくないのだろう。一瞬だけ殺気すら感じた。本能的に身体が動いたのかもしれないけれど、今のナミは丸腰でどんなに頑張ってもロビンには敵わないというのに。
常に警戒心を携えたまま生きてきた習性なんだろうな。
あんな目にあったあとだから、なおさらなのかもしれないけれど。
「………青雉は?」
ロングリング・ロングランドは、見渡す限り細長い木々とひたすらに広がる草原だけ。船の上から見ても、もう誰もいないことは十分にわかる。
「あいつ、ルフィを凍らせたあとは満足そうに帰って行ったわよ?本当にロビンを捕まえに来たの?」
船縁に身体を預け、ロビンは島を遠目で見渡して小さくため息を漏らした。それは安堵からくるものではないことくらいはわかる。だからナミは横に並んで精一杯笑ってみせた。
「青雉が何を考えているのかわからないけれど。私たちが進む航路を分かって、ここで待っていたのは確かね」
「………ってことは、次に行く島もあいつは」
「わかっているはずよ」
ロビンがピンと緊張の糸を張ったままなのは、そのせいかもしれない。
「いいじゃん!大丈夫、なんとかなるわよ!それより今は、身体のことを労わる方が大事だし」
その横顔は、今にも消えそうで。
また、泣きそうな顔をする。
涙なんて似合いそうにないのに。
ただ、真の通った強そうな人っていうイメージだったのに。
「そうね」
適当な返事をして、視線は上の空。

消えてしまう。


「……ロビン?……」
夏の気温。
暖かい太陽。
影が細長くできているのに、それすらも消えてしまうのではないかと、不安がよぎった。

「本当……“いろいろ”ありがとう、航海士さん。みんなにも迷惑をかけてしまったわ」

まるで、別れのあいさつみたいに言うんだから。

「………お礼なんていらない。だって、私たちは仲間じゃない」
ほほ笑みの奥にある闇が、ロビンをこの船から引きずり下ろすとでも言うの?
ナミと同じものを見ているその瞳に映るもの全部、色あせて見えているの?
「でも、今の私にはお礼とお詫びしかできることがないわ」
「………じゃぁさ」
何やってるんだろう。
何でこんなときに思いついちゃうんだろう。
理想としては、もっと微笑ましいタイミングで
笑い合ったりして、ドキドキしたりして
お祭り気分になるはずなのに。
「じゃぁさ、お礼っていうのなら抱き締めてもいい?」
意識のないロビンじゃなくて
だけど、恋をしていると伝えるためじゃなくて
いつものロビンでいてという想いをこめて
「………構わないけれど?」

背の高いロビンを抱きしめると、ほんのりと柔らかくて甘い花の匂いがした
ドキドキする気持ちは確かな恋なのに、とてつもない不安を与えてくる
青雉と会った時の、腰を抜かして冷や汗をかいていた顔も
氷漬けにされた時の顔も
そして、色あせていくロビンそのものも
何もかもが不安でしかない

ロビンの腕はナミを抱きしめなかった。
ただ、言われるがままに抱きしめられているだけの関係。

それでもいい

影だけはひとつに重なるように。
影だけは、まるでひとつの存在であるかのように。
影だけは離さぬように。


「ねぇ、ロビン。どんな小さいことでも私を頼って、私にすべてを預けてよ」
まだひんやりしているロビンの身体は、戦闘要員だと勝手に思い込んでいたけれど、本当は細くて弱弱しい。そして怪我の痕がたくさんある。
「………優しいのね」
頭に吹きかけられた吐息の言葉は、20年の重たい過去を抱いていた。
ナミは見上げることなんてできなくて、胸に顔をうずめるようにきつくきつく抱きしめた。


ロビン
ロビン
ロビン
ロビン


「………好きだから」


彼女の胸にぶつかった言葉は、はね返ってくることもなく、だけどその細い体をすり抜けていく。

それでもいい。

「好きだからだよ、ロビンのこと」


子供っぽいごまかしは、適度だし便利だ。
好きという意味をやわらげて、曖昧にしてくれる。

今は、それでもいい。
その方がいい。

何も抱き締めなかったロビンの手が、子供をあやすようにナミの頭を撫でる。

そう。

今はそう言う少しの誤解を抱いていてくれていいから。
「ありがとう、航海士さん」
また、何事もない日々に戻って、そうしていつものロビンに戻ればいい。
その時に、本当の意味の好きを言うんだから。


今は、影だけでいい。
影だけがひとつになればいい。
想いがどんなに伝わらなくても、影だけは重なっているのだから。
闇なんて存在しないオレンジの太陽が降り注いで
ロビンを光が照らしてくれている、確かな証拠になるのだから。


関連記事

*    *    *

Information

Date:2015/02/01
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/432-2754939d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)