【緋彩の瞳】 Thinking of you

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

Thinking of you

“ごめん、ちょっと………きついの”

日付が変わって1時間後、ようやくベッドに入った。
すでにクイーンサイズの端で横になっていたレイは、みちるがそっと頬を撫でただけなのに、おやすみ、とか、お帰りではなく、まだ誘ってもいないけれど、この言葉。背中を向けられている。

何か、いつもと違うような気もするし、いつも通りただの不機嫌なのかもしれない。熟睡していたのに、みちるが触れてしまったことがお気に召さなかったとか。


時計は1時20分を過ぎたところ、日付は3月6日。

みちるの誕生日は、レイと知り合ってからこれで3度目。
1度目は手を繋ぐことすらない、ただの知り合いだった。
2度目は恋人として迎えた初めての誕生日だった。

そして、今日

淡々と日々を繰り返して、レイと同じ世界に存在していることを、当たり前だなんて考えたことはない。
レイと言う存在が、刹那の恋で、儚くてもろくて、あまりきつく抱きしめすぎると、ハラハラと指の間から消え去るのではないか、という気持ちをいつでも忘れないようにしている。

「お休み、レイ」

みちるは独り言のように呟いて、背中を向けた。
背中同士に感じる温度だけでもいい。そう願ったけれど、レイはみちるのその気持ちを剥がすように、ほんの数センチの距離だけ逃げたようだ。

レイ、今日は……誕生日なのよ?って拗ねて見せたって、
無意味なことだから

愛する人を抱き締めて眠りに落ちたかったのも、みちるだけの都合
そう言い聞かせて目を閉じた。




「……………レイ?」

暑い

手放していた意識は体温調節がうまくいかなくて、現実世界へと引きずり落とした。


「…………レイ」

背中合わせで寝息の聞こえてこない距離だった。
顔も見せてくれなかったレイの熱が、みちるの背中にべっとりと愛を汗ばむように塗り付けてきている。

「レイ」

目を開けても暗闇の世界。光る時計がまだまだ夜中だと告げている。それでもあれから2時間以上は経っていた。

ゆるくまとめているみちるの髪に顔をこすりつけて、レイの腕が腰に巻かれ、ぴたりと背中から抱き付かれている。

「どうしたの、レイ?」

“きつい”というのが、体調のことだったのなら、何かの不調を訴えているのだろうか。みちるは振り向きたかったけれど、それを拒むようにレイが背中にしがみついている。

「嫌な夢だった。だけど、もう…抜け出した」
「…………そう」
「ごめん」
「………いいのよ」

どんな夢?なんて聞かない。付き合い始めた頃から、嫌になるくらい繰り返してきた。みちるだって、嫌な夢を何度も見てきた。予知夢のような息苦しいものも、世界の終焉も。

だけどレイは、みちるよりもずっと鮮明に見えているし、もっと先のこと、そして忘れ去りたい過去、無関係な人の苦しみや、死んだ人間の思念まで背負わされることもある。

「………お願い、今はこのままがいい」
「えぇ」

だから、そんな嫌な夢を見た後にセックスなんてできない。
痛みを半分もらうこともできない。


ただ、レイを想う。

それだけ


「起きて、待ってようって……思ったの。誕生日だから」
か細い声は、みちるの右耳のそばで、想ってくれていると伝えてくれるから

それだけでいい

「いいのよ、そんなこと」
「このまま……朝まで、こうして……」
「えぇ」

レイと同じ世界を生きている
それだけでいい

「おめでとう、みちるさん」
「ありがとう、レイ」
「ずっと、私の傍にいて」
「それはこっちのセリフよ」

みちるの両腕がレイを抱きしめてあげられなくても
しがみついて離れないレイを感じることができる

朝になれば、苦しかった夢も過去になり、いつものレイになる
そして、彼女はキスをくれるはずだから

その未来があれば
それだけでいい



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Date:2015/03/06
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