【緋彩の瞳】 My love ②

緋彩の瞳

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My love ②

「レイちゃん!」
3人でどこか、ご飯でも食べに行く?それとも、マンションで手料理をごちそうしましょうか、なんて話をしながら歩いていると、背後からレイを呼ぶ声がした。
「美奈」
「何よ、あの電話!用があるならそういえばいいでしょ?!」
「用事?ないわ」
どうしてここがわかったのかも不思議だけど、美奈子は走ってきたと分かるように息を切らせている。でも、出待ちが終わってから来たのは間違いない様子。
「ない?き~!ラジオの収録現場まで付いて行かずに、急いできたのに!」
「あっそう?それはどうも」
レイはもう用事はないと言った風で、むしろ邪魔だと言わんばかり。せつながいるのに。
「美奈子、私たち3人で今からご飯なの。うちで料理をしようかしら、って。あなたも来る?」
「3人?あら、なんだ、いたの?」
美奈子はレイしか見えていなかったのか、見えていてシャットダウンさせていたのか、みちるをちらっと見た後、せつなの顔を見て首を傾けてみせた。
「久しぶりね、美奈子」
「久しぶり、せつなさん」
恋人同士で、同じ港区に住んでいて、久しぶりっていう挨拶。どれくらい会っていないのかしら。
「私はみちるの家でレイと楽しくご飯を食べるつもりよ」
「ふーん。ママがご飯作ってるし、帰るわ」
悩む仕草も見せないし、せつなも残念そうに見えない。みちるはちょっとがっかりした。せつなと美奈子がどんな風に会話をするのかを、もっと見ていたかった。
「そう。暗いから、気をつけなさい」
「大丈夫、へーき」
せつなは本当に最大級の放任主義って言うか、自由っていうか。
「みちるさんたち、先に行ってて」
レイは帰ろうとする美奈子の腕を掴んで、それから美奈子が走ってきた道へと引っ張っていった。何か話をしたいのかも知れない。美奈子はこっちに来ないし、レイはちゃんと帰って来てくれるかしら。
「みちる、行くわよ」
「……えぇ」
「何か心配?」
「だって、すぐに戻ってきて欲しいもの」
クスクス笑われるけど、みちるはそれが普通の感情だって思う。
「レイも大変ね」
「やっぱり………私って過保護?」
「さぁ?レイは………あの子にはそれくらいした方がいいのよ。美奈子はほったらかした方がいいの。自由でいることが、あの子の魅力だから。でもレイは……あの子は放っておいたら消えてしまうような、儚くてもろい部分もある。上等なシルクで優しく包んで、抱き締めるくらいしてあげた方がいいの」
レイを自由にさせたら、なんて……みちるは想像ができなかった。
とても、そんな風にできない。
「美奈子のこと、愛してるのね」
「さぁ?」
否定をしない、せつならしい答え方。
レイは美奈子に何を話しているのかしら。
ちゃんと、遅くなる前に帰ってきてくれたらいいけれど。



「アイドル君の追っかけ、いつまでやるつもり?」
「なぁによ、私の勝手でしょ?」
引っ張った腕を、これ見よがしに痛そうにアピールする美奈。レイは鞄で頭を叩いた。
「いたっ!なにすんの、もー」
「………たまには、外でせつなさんとデートしたら?」
「はぁ?」
「忠告してやってんのよ」
こんなことを言う自分が“らしくない”って思う。
レイは美奈がどういう恋愛をしようと、干渉するつもりはないっていうか、特に相談されたこともないし、立ち入る必要性もないって思っている。
「別にデートなんてしなくてもいいじゃない」
「後悔しても、知らないから」
「何が?」
「…………こんな、春のいい天気なのに。あんたって愛されているっていうことを自覚しなさすぎよ。愛することだけがすべてだなんて思ってるなら、それは違うわよ」
長い付き合いだから、美奈が“愛はただ捧げるだけのもの”だというスタンスで生きていることは、よくわかっている。レイもその考え方は尊くて好きだけど、愛されていると言う自覚は、人を成長させるものだって言うことも、みちるさんから教えてもらった。
だから、どっちも必要。
「うわ……レイちゃんから説教受けるとか、信じらんない」
「一度しか言わない。じゃぁね」
美奈はレイの親友で、戦友で、仲間で、安心して背中を預けることができる存在で。
だから、愛されているっていう微笑みを、レイにだって見せてくれたっていいのに。
レイがみちるさんに愛されていて愛していることを、いつも美奈が嬉しそうに見つめるように、レイだって美奈のそういう顔を見てみたい。
何て言うか、何となくだけど。
でも、それも多分、見せてくれない。そういうところがまた、美奈らしい。
だけど、一言、言わずにいられなかった。




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Date:2015/03/10
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