【緋彩の瞳】 彼女を殺すのは私しかいない ② (R18)

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

彼女を殺すのは私しかいない ② (R18)



「………レイ、どうしたの?」
「別に?」
「理由なく、いきなりこういうことする?」
「理由があるとすれば、私がみちるに欲情しているっていうことかしら?」
部屋に入ったレイは、みちるの身体を壁に押し付けてぶつけるようなキスをした。4月に入って桜も完全に散り、日本中が新しい生活を始めてにぎやかになる季節。それでも夕方を過ぎると少しひんやりして、誰かの温もりが必要になる。
「シャワーを先に浴びさせて」
「このままがいいわ」
新設校の無限学園の制服はみちるには似合わない。
胸のリボンの色のセンスも、全体的なバランスも。
「ん…ベッドに……レ…んっ」
深緑のリボンをほどき、乱暴に愛撫する胸の膨らみ。堅いブラジャーのワイヤーがレイの性急な気持ちに横やりを入れる。もう片方の手で背中のホックをはずしながら、唇でみちるの抗議をふさいだ。はたから見たら、女を侮辱する男のように見えるのかもしれないけれど、みちるの抵抗が本気じゃないことは唇から伝わってくる。
まくしあげたスカートの中は蜜を携えていた。ショーツの中に差し入れた指を今にも吸い込みそうな熱。
「ん…ぁ……」
「そのまま立ってて」
「レイ……どうしたの?ねぇ…」
しゃがみこんで、みちるを立たせたままスカートの中に顔を入れた。恥じらう彼女の足からショーツだけを奪い、顔を蜜の中にうずめる。スカートの向こう側から小さな抵抗と、それでも愛を欲する悲鳴に似た声が漏れてくる。指をぬらす愛の蜜に誘われたそこは、キツくレイの心を締め付けた。いつもはお互いにゆるく柔らかく愛し合うことを心がけているが、立ち尽くすみちるのスカートの中にいるという妙な感覚のせいか、入れた指は温度やみちるの声を確認することもなく、ただ高みへ追いやるように責め立てた。
「きゃっ……や、いやっ……レイっ!」
悲鳴のような叫びのような、普段聞くものとは違うその声をもっと聞きたい。立っていられないみちるがずり落ちてくるのもかまわず、レイは舌と指を動かした。
「いやっ……あっ、ダメ……っ!!」
無理やり追い詰められたみちるは、痙攣してレイの指を身体に溶け込ましたまま、ずるりと倒れこんでくる。
「……あっというま」
「レイ………なんなのよ…もぅ」
スカートから顔を出したレイは、にやりと笑う。何かが満たされた気持ちになる。
「どうして、私じゃなくてレイが泣くのよ」
にやりと笑ったはずなのに、みちるの指がレイの頬をなぞり、繰り返される浅い呼吸に深いため息が込められた。

あぁ、そうか
やっぱり、泣きたいなんて思った自分がいたのだ





「……指、まだ抜かないで」
「もう一回する?」
「しないわ」
自分が泣いていることを認めたくないのだろう。みちるは浅い呼吸を繰り返しながら、痛みをこらえて指を受け入れたまま、愛しい人を抱き寄せた。異物感に慣れない辛さはあるけれど、でも、こうしていたかった。
「みちる、私が何者なのかを知っているのに、よく付き合っているわよね」
「……放さないって誓ったでしょ?」
「指が溶ける」
「溶かしてみたいわ」

使命を隠し続ける。平和を歌うような世界のひと時を愛するヴィーナスと、その嘘のような時間に、使命を背負いながら溺れたマーズ。
心優しく穏やかで、強くて。
何もかもを優しく愛しているような錯覚。

今でも、やっぱりあの時のマーズはどちらの気持ちで最期を迎えたのかはわからない。
きっと、レイはわかっているのだろう。

だから、愛野美奈子には近づけないのだ。

焔の炎を振りかざしながら彼女は愛を乞う。
その姿を鏡越しに見ていた。


「あなたの弱さを愛しているのは私だけよ、レイ」
「身にしみて、よくわかってる」
火野レイの全てが透明な硝子に包まれたように、彼女はいつも彼女自身の真の姿をひたむきに隠して生きている。
「無限学園はどう?みんな優秀なんでしょう?」
「かなりね。レイが行けって言わなければ絶対に通いたくない学校よ」
「みちるとはるか以外に、使えそうな人間はいないんだから仕方ないわ」
「はるかは面白くないみたい。周りの女の子は自分よりも参考書を愛しているからって」
ベッドに場所を移動させて、今度はみちるがレイの肌を愛でていた。
絡み合った手足は、引きちぎられるとしたらお互いの愛ゆえであればいいのに、と願うように放したくないと吸いつけている。
「あの人らしい」
「どうせ、長くはいないもの。きっと建物もろともなくなるでしょうし」
「みちるはいったい、どういう行動計画を立てているのよ」
「まだまだ、敵の目的も規模も把握するには時間がいるわ」
「時間はあまりないわ」
「わかっていてよ」
現世でのマーズに、火野レイに課せられた使命はあまりにも重い。何もない孤独の世界、星を背負う世界のあのころよりも、目に入る数多くの人々の幸せを犠牲にしなければならないのだから。愛する痛みや苦しみを、彼女は人間として学ぶことを強いられ育ってしまった。
人並みの感情を携えながら、それでも平然を装い、裁きを下す時を待ちわびている。幾度となく大きな戦いに巻き込まれ、そのたびに敵もろとも銀水晶を破壊させようとした。
それが2度もできなかったのは、それをする前に仲間を犠牲にせざるをえないことを、ためらったのではないだろうか。
火野レイがそれをできずにいたのか、あるいはそれができない他の理由があったのかはわからない。
「この戦いで全てを終わらせたいの」
全てとは何だろう。終わらせるのは何のことを指すのだろう。
レイの言う終わりとみちるの考える終わりは違う質のものかもしれない。
いや、そう考えたいと思うエゴだ。
「………レイ。デス・バスターズもろとも、銀水晶を砕くつもりなの?」
「そうなればいいって思う」
「私とはるかがやつらを倒してしまえば、レイが手を下すことはなくなるのでしょう?」
「先送りするだけよ」
2度も先送りにしたのに。レイは呟いてみちるの腕の中から逃げるようなしぐさをした。絡めた足をはずして、シングルベッドの端へ逃げるレイの髪をそっとなでる。
「レイが死んだら、私も後を追うわ」
もし、本気でレイが本来の使命を果たすのならば、それはレイが命を落とすということだ。
プリンセスが銀水晶の力を使い果たせば命を落とすように、レイもまた、銀水晶を砕く剣を振りおろしてしまえば、命は終果てる。
「私はみちるが先に死んでも、後を追わないわ。うさぎが生きている限りはね」

なぜ、レイは生きているのだろう
なぜ、レイは生かされなければならないのだろう
なぜ、レイじゃなきゃだめなのだろう

「………マーズは昔から浮気癖があるものね」
「ないわよ」
ヴィーナスのことを思い出したのか、背中を向けたまま、だけど口調は本気の苛立ちを携えていた。
「……そうね」

浮気じゃなかったことくらい知っている。

マーズが召喚されたときに、ネプチューンとの仲は終わらせたのだ。召喚されるということと、彼女の身に訪れる終焉はイコールだった。遅かれ早かれ死ぬことを知っている間柄で、マーズの方から冷淡な口調で別れを告げられた。それがマーズの優しさだった。
マーズが死を迎える直前、全身を血だらけにしてヴィーナスの名前を泣き叫び続けていたことを、レイは覚えているのだろうか。あの叫びは、確かに愛する人の名を呼ぶ声だった。
クイーンの楯になり、マーズの剣に身体を切られたヴィーナス。
身体を真っ二つに切り裂いた。
切り裂かれた金の髪がマーズの身体に血と一緒に貼りついていた。


愛したことが全ての罪
愛されたことが過ち

あの瞬間が、あの大きな過ちが、今もマーズを苦しめている
あの時、あの剣でクイーンを切り裂き、銀水晶を砕くことができていたならば
この世界はありふれた愛だけで満たされる、優しいものだったのかもしれない
だけど、この世界にレイはいなかっただろう。そして再び出会うこともなかっただろう


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Date:2013/11/07
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