【緋彩の瞳】 だから、そっとキスをした。 ⑦(R18)

緋彩の瞳

ポイ捨て小説

だから、そっとキスをした。 ⑦(R18)





「REI-002にメッセージのコマンド?」
「えぇ」
火野レイと言う人間がこの世界から消えて、何日も経った。みちるさんは口数少ないけれど、電話をしたらちゃんと出るし、会おうって言えば会ってくれる。
「……そんなこと、してないわよ」
「念のための確認よ。コマンドはセーラーマーズって言っていたもの」
せつなさんと2人、喫茶店でみちるさんを待っている間、REI-002から、実はメッセージを預かっていると、聞かされた。
「レイちゃんが?」
「えぇ、火野レイからメッセージを預かっているって」
「………テレパシー?」
「さぁ」
感情どころか、REI-002は本物の火野レイを知らない。自分が火野レイをモデルにして作られたと言うことさえ、わかっていないはずだ。ただ、自分が火野レイであると認識している。
「何て言っていたの?」
「海王みちるさんを、とても愛していたと伝えて欲しい」
「………そう」
「この言葉を聞いてね、もしかしてこれはレイからのメッセージではなく、REI-002がみちるのために、レイの名前を語って紡いだ愛の言葉ではないかって思えたの」
「……感情なんて、理解できないでしょう?」
「えぇ、そういう設定はしていないわ。でもね、ただ、そう思えたの」
「せつなさんがそう思ったのなら……そうなのかもね」
そんなことはあるのだろうか、でも、REI-002はみちるさんと1年間生活をして、火野レイを演じ、火野レイであり続け、決してREI-002としての愛を受け取ることはできなかった。みちるさんから“レイ”と呼ばれて、反応するように設定していた。そこに感情は存在していないし、それを苦しみだと認識なんて出来やしない。
でも、REI-002はみちるさんを想ったのかも知れない。
そう、考える方が気持ちいい。
「あと、美奈子にもメッセージがあったわ」
「え?私?」
「たぶん、こっちは本当に、本物のレイからよ」
「レイちゃんから?」
「えぇ。”ちゃんと、見つけ出しなさいよ、馬鹿“」
「何よ………生まれ変わる気、満々なのね」
「らしい、わね」
美奈子はひとしきり笑って、泣いた。自動ドアからやつれたみちるさんの姿が見えた。レイちゃんの愛した人は、今日もちゃんと生きている。
「みちるさん」
「美奈子、どうしたの?泣いたりして」
「うん、あのさ、私たちはきっと、何も失ってなんてないんだよ」

ただ一つ、本当に失ったものと言えば、REI-002だけだ。

今になって悔やむのは、REI-002にみちるさんに向かって“愛している”と言わせるように設定をしたこと。

半人工テクノロジーを用いた未来のロボットだけど、REI-002には感情設定をしなかった。しなかったくせに、その台詞を多用させていた。
誤作動はほとんどなかったけれど、多用する言葉の意味を、理解していったなんてことはあるのだろうか。
「何のこと?」
「レイちゃんね、REI-002に最期のメッセージを託していたみたい」
「……どういうこと?」
みちるさんはソファーに腰を下ろして、レイちゃんの名前に過敏に反応を示した。
「REI-002を破壊するときにね、あの子が火野レイからのメッセージを預かっているって、スピーカーから語り掛けてきたのよ」
せつなさんは、美奈子に言ってくれた言葉をもう一度告げた。

『海王みちるさんを、とても愛していたと伝えて欲しい』

「…………そう。それはたぶん………レイじゃないわ」
「レイからだって、言っていたわ」
みちるさんは寂しそうに呟いて、それから小さく笑って見せた。
「………優しいところまでレイに似せたと言うの?」
「みちるもそう思う?」
「……決められたセリフを無機質に言われ続けて1年間生活をしていたけれど、REI-002の感情が心に響いたことがあるのは1度だけよ」
コマンドエラーを起こしたあの時だろう。
「REI-002から欲しい言葉ではなかったの。だから、壊してあげなきゃって……私、ロボットまで不幸せにさせてしまったのかしら」
「あの子、設定をしていないはずなのに、嬉しそう笑って消えたわ」
「そう」
ロボットに感情はないかもしれないけれど、ロボットに感情移入することはある。
それが愛する人と同じ姿だったなら、なおのこと。
でも、ロボットだって、愛されたい感情を持つことがあるのかもしれない。ロボットだって、人を愛するという気持ちを、自発的に持ってしまうこともあるかもしれない。
でも、だったらロボットって呼べない。それはもう、……人間だ。
だから、REI-002は破壊すること以外の道はなかったし、それがREI-002にとっても一番いい方法だった。
REI-002は決して海王みちるからの本当の愛をもらえないと、知恵をつけたのだろうか。
壊して欲しいと……願っていたのだろうか。
「それと、レイは生まれ変わってくるつもりだから、ちゃんと見つけて欲しいと」
「………そう。でもその頃に、私が生きていればいいのだけれど」
「みちるさんの星に惹かれて、きっとまた、帰ってくるんだろうね」
「胸を張って生きなさい、みちる」
「えぇ……」

レイちゃんの死
REI-002の破壊

世界はそんなことなんて知らないと言ったように、今日も時を止めてなんてくれない。


何も失ってなどいない
そう信じていれば
見つけてって、言い残したレイちゃんはきっといつかどこかで、また、生まれ変わってくるはずだから





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Date:2015/03/26
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