【緋彩の瞳】 桜色の雨

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

桜色の雨

火野レイには雨が似合う
とてもよく似合う



初めて火野レイに出会ったとき、彼女はずぶ濡れのままじっと佇んで、死んだ子猫に傘を譲っていた。



「馬鹿!!」
雨が嫌いといいながらも、レイは雨に濡れたがる悪い癖があるようだ。
神社に遊びに行くと部屋にはいなくて、携帯電話にも出てくれなくて、何となく嫌な予感がして裏手に回ったら、やっぱり。
桜が咲き始め満開になり、そして花散らしの雨が降っている午後。
レイは傘もささずに外に出て、雨に落とされてゆく桜の花びらをじっと見上げている。
「………何?みちるさん」
どうしているの?と言いたげな視線は、それでも数秒しか重ならなかった。
「風邪引くでしょ?」
「うーん、引くかもね。でもほら、綺麗じゃない?」
ほんのりと色づいた桜の花びら。
視界のいたるところから、はらりはらりと舞って、地面を埋め尽くしてゆく様。
「傘、差しなさい」
部屋に入りなさい、なんて言えるわけがなかった。
みちるは自分の傘の中にレイを入れようとしたけれど、押し返された。
「嫌だ」
「風邪引くってば」
「別にいいって」
「よくないでしょう?」
「あとでお風呂入る。少し待ってよ」
レイの使う“少し”がみちるの感覚と大きくかけ離れていることだって、よくわかっている。
「……心配させないで、お願いだから」
「うん、でも、ちょっと待ってよ」
視線はみちるに舞い降りることなく、じっとじっと桜を見つめたままだ。
傘を閉じて、レイと同じようなポーズを取ったところで、レイの感情を理解できたりしないだろう。
レイの気持ちはレイの心だけのもの
それに、重なり合わない方がいい


レイは散り行く桜の花に別れを告げているのかもしれない
決して悲しむ表情ではなく、ただじっと見つめて
その瞳に散り行く刹那の麗しさを焼き付けている



「………レイはちっとも変わらないわね」



その横顔を愛しいと感じる限り
みちるはこの行動を止めることはできない

これが火野レイだから


「綺麗だって思わない?」
「………そうね」
「青天の中で咲き誇る桜しか、人は見ようとしないから」
「……えぇ」
「雫が花びらに当たって、ハラハラ舞う姿、私は好きなの」
「傘を差さない理由にしないで」
「いいの。別に今の私は、濡れたくない理由なんて持ってないし」

今日行くからって連絡をちゃんとしたのに
“待っているわ”って言ってくれたのに
みちるのために、濡れてはいけないっていう理由があるはずなのに

でも、そんなことを言ったところで、悪びれたりする人ではない
だからこそ、愛しいと思える


火野レイには雨が似合う
とてもよく似合う



あの日、レイはみちると会話したことさえ覚えていてくれなかった
今も、きっと
レイにとってはその瞳に映る桜吹雪の世界が全てなのだろう
それでもいい


それこそがみちるの愛する火野レイだから








この話は、『赤い傘』の続きのようなものです。
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Date:2015/04/05
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