【緋彩の瞳】 ウソツキ恋詩 END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

ウソツキ恋詩 END


嫌でも、知る羽目になる
それを望む魂と抗うべきだという冷めた感情がまた、剣で刺したような痛みを身体に与える

嫌ではない感情

「………よくわからないから、取りあえず、謝りたいのなら、すべて私が思い出した後にしてくれる?今、何かを許すっていう感情を持ちえていないもの」
「そう?そうね、うん、そうよね」

でも、何かを許すとか許さないっていう感情よりも


ハラハラと涙が溢れてしまうのではないか

なぜか、そう思えた

泣くだなんて
ママが死んでからは一度として、涙をこぼしたことはないのに

悲しみの涙なのか
辛い涙なのか
感動の涙なのか
痛みの涙なのか

あるいはそのすべてがレイを襲う気がしてならない

『ごめんね、マーズ。あなたが好きよ。私を忘れないで。好きでいて』


“愛しい”という感情の涙じゃなければいいのに

愛だなんて知らないレイは
何となくただ、漠然とそう願う

「想いも、こうやって土の中に埋めてしまって、深いところに眠らせて、やがてそこにあったことさえわからなくなればいいのにね」
作られた笑みのまま美奈はそういうから、レイは震える指先で彼女のセーラーのリボンをそっとなぞった。

あの声の主は
今を生きている
レイの瞳に姿を映している

「それ、嘘でしょう?」
「……なんだ、わかるんだ」
「だって、そんな風に思っていたのなら、ずっと私の名前を呼び続けたりしないでしょうから」
「ずっと、ずっと聞こえていたのね?」
「聞こえていたっていうか、耳ではなく……この辺りにね」
レイは自分の制服のタイの結び目あたりに左手を置いた。ドクドクと震える指先は、彼女の心臓にその緊張感を伝えてしまっているだろうか。
「………そう。そっか、そうなんだ」
一歩、美奈は足を引いてレイの指先から離れた。
逃げたように思った。
「帰るね。ちょっとだけ寝て、学校行かないと」

レイに近づきたいという瞳
レイから逃げたいという瞳

レイは美奈に近づきたいのだろうか
この表現することのできない痛みから、逃げたいのだろうか

彼女はどんな嘘を吐いているのだろう

『忘れないで』
『ずっと、好きでいて』

まさか、あの言葉のすべてが嘘だったなんてことはないだろうか

「じゃぁ、またね」
「えぇ。気を付けて、美奈」
「うん、じゃぁね……レイ。お休み」
「お休み」

明日、あるいは明後日
そう遠くはない未来に
愛野美奈子の
プリンセス・セレニティの
セーラーヴィーナスのすべてを想い出す



想い出してしまう
「………嘘吐き、か」


想い出してしまうというこの感情は
嬉しいというような、喜びの感情ではない気がした



『マーズ』

彼女の声と共に生きてきた長い年月が
終焉を迎えようとしている

季節の匂いの隙間に
その声の主を探しても、見つからなかったのは
彼女は季節のない世界にいた人だったからだろうか


『私を忘れないで、ずっと好きでいて』


幻聴のままで
幻覚のままで
夢や幻の人であればよかったのに

見送るその後ろ姿を
懐かしいと思えるこの感情が

“愛しい”というものでなければいいのに




『あなたが好きよ、ヴィナ。だから、あなたはプリンセスだけを見つめていればいい』
『………ごめん』
『悪いなんて、1mmも思ってない癖に。嘘吐きね』
『ごめん』
『あぁ、でも、ヴィナはいつでも嘘吐きよね。それでこそ、ヴィナよ』
『マーズだって、私に守られたいなんて1mmも思ってないでしょう?』
『えぇ……当たり前よ』

嘘吐き
ヴィナも私も嘘吐き

嘘に嘘で答えること
それを愛だと信じたかったの
その嘘を許し合うことが
愛だと想いたかったの





あなたの優しい嘘を吐く声が
私を永遠に縛りつける
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Date:2015/04/08
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