【緋彩の瞳】 恋試し ②

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

恋試し ②

「……ダメでしょう、からかっちゃ」
美奈子はお金を握りしめている亜美ちゃんに、とても冷たい視線を浴びせられた。
「いや、それは亜美ちゃんでしょ。何、“男の人”って。パパじゃん」
「あぁいう言い方のほうが、より、効果的だわ」
「思いっきり落ち込んでたじゃない。適度にからかうくらいがちょうどいいって」
それにしても、わかりやす過ぎて楽しい。レイちゃん情報では、ピクニック前後も特に2
人で何かしているとかは、まだ、ないみたい。まぁ、レイちゃんからガンガン電話するというのは、まだないだろう。でも、みちるさんの方からのアクションがないっていうのは意外だった。あれだけ、ピクニックでレイちゃんの傍にいたと言うのに。
やっぱり、美奈子たちが何とかしてあげなきゃいけないらしい。
「何だかな、みちるさんって“女の子”みたいな恋愛思考っぽいから、レイちゃん相手だと、つれない態度にすぐ傷ついたりしそうだよね」
「まぁ、でも、もっともっと深みにはまるわよ」
美奈子は悪魔の角をはやしながら、亜美が握りしめている3,000円をもらおうと手を出した。
「ダメよ。このお金で土曜日のレイちゃんの誕生日会の食材を買うわ」
「え?このパフェは?」
「自分で払って。もし、土曜日にみちるさんが暇なら、誘うわよ」
「……チクショー」
亜美ちゃんは、次なる作戦を考えているのだろうか。
土曜日に来たとしたら、”男の人ってパパじゃない“って怒られるような気がするけれど。

まぁ、いいか。






麻布十番の駅近くにある花屋さんで、カサブランカを誕生日プレゼント仕様にしてもらった。神社への坂道をのぼり、レイに教えてもらった通り、神社の裏手側へと回る。境内を突き進むよりは、レイの部屋に行くには近い。来客者用駐車場を横切る。
黒塗りの車が1台止まっていた。
みちるはドキドキとうるさくなり始めた心臓に、これはただ、坂を上ってきたせいなのよ、なんて誰に言い訳をしているのかわからないことを考えながら、母屋へとたどり着いた。
「ごめんくだ……」
玄関の引き戸を開けようとすると、境内の隅に黒髪が見えた。直感でレイだわって思った。主がいないのに、部屋に入るわけにもいかない。みちるは無限学園の制服のリボンと少し髪を整えて、改めて姿勢を正してそっとレイへと近づく。
誰かと話しているらしい。
「ありがとう、嬉しい」
「明日、6時にお迎えに来てよろしいですか?」
「うん。いつもありがとう」
スーツを着た男の人と、レイは立ち話をしていた。紙袋とそして花束がその腕にあるのが見える。
「おじい様によろしくお伝えください。悪い虫が付かないようにと、海堂が念を押していたと」
「自分の身は自分で守るわよ」
「そうですか。まいったな、僕の出る幕もないですか」
「そうかも、ね」
何かレイはとても楽しそうな声をしていて、背の高い大人の男の人も、柔らかい微笑みだ。
「それじゃぁ、明日」
「えぇ。またね」

“明日”
みちるは、亜美の言葉を思い出した。

レイの横を過ぎて、駐車場のある方へと向かうのだろう。腕の中にある花束が、今みちるの腕の中にあるものと同じものだと分かったのは、彼女が振り返ってから。
「あら、みちるさん」
「………レイ」
あの男の人も、レイが好きな花が何なのか知っている。
「どうしたの?そのカサブランカ」
それはこっちが聞きたいわ、なんて思った。
「………好きだって、まことが教えてくれたから」
「もしかして、私に?」
「でも、先を越されたみたいね。持って帰るわ」
愛する恋人から貰ったカサブランカの方が、よっぽど価値があるだろう。みちるは自分が持っているカサブランカが、つまらない下心の塊みたいに見えてきて、持っていることが罰のようだわとさえ思った。
「あぁ、これ?でも、気にしないで」
「同じものをもらっても、レイだって困るでしょう?」
「どうして?沢山あっても綺麗よ」

そういう意味じゃない。

みちるは俯いて、持っていたカサブランカをすぐにでも捨ててしまえたらって思ったけれど、レイが許可なく奪い取ってしまった。
「お茶、飲んでく?」
「………えっと、いえ。渡したかった、だけなのよ」
「明日が誕生日だって、美奈たちから聞いたの?」
「えぇ」
「だから明日の予定を聞いてくれたのね」
「………予定があるのでしょう?」
「毎年ね、一応決まっているの」
声が落ち込んで聞こえていたりしないかしら。
あからさまに泣きそうな顔なんてしていないかしら。
そんなことを心配しながら、2人で何を話したいか、思い当たらない。
聞きたいことはある。

あの人はレイの何?

でも、知ってしまったら、この自分の気持ちを終わらせてしまわなければいけない。
引き延ばしたいのか、それとも早く気持ちを切り替えた方がいいのか。

「それは…お洋服なの?」
カサブランカの花束以外にも、有名なブランドの紙袋が腕にかかっていた。
「うん、明日着て行かないと。だから、今日持ってきてくれたのよ」
「………そう」
なるほどね、とみちるは思った。あの男の人は、誕生日に着せる服までご指定、レイもそれを受け取って想いに応える間柄、ということ。
「どうしたの?」
「別に」
「私、本当にカサブランカは好きだから、沢山もらっても大丈夫よ?」
そういう気の使い方は、間違っていると思ったけれど、レイからしてみたらそれが正しい。愛と友情は別。レイの方がとても正しい。
「………そう?」
「えぇ。みちるさんから誕生日のお祝いをもらえるのは、嬉しいわ」
「そう」
嬉しいっていう気持ちだけを受け取ると言うことが、きっと答えなのだろう。みちるは出来るだけ引きつらないように微笑んで見せた。
「みちるさん、土曜日は空いてる?」
「土曜日?」
確か、美奈子たちがパーティをすると言っていた。
「美奈たちがパーティをしてくれるの。よかったら、遊びに来て。あぁ、でももうカサブランカをもらったから、手ぶらじゃなきゃダメよ」
「………えぇ」
諦めた方がいいかもなんて思いながら、それでもちょっとでもレイと会っていたい気持ちはそう簡単に減るものじゃない。
どうやら、それなりに本気だったみたい。
1か月毎日レイのことを考えているのだから、当たり前。





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Date:2015/04/17
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