【緋彩の瞳】 17th April

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

17th April

16日の夜は16歳最後の夜を一緒に過ごして、身体中に唇を押し当て、花を色濃く咲かせておいた。みちるに抱かれるレイの声や雫が、みちるの未来を鮮やかにさせて、生きているという言いようもない柔らかな痛みを感じ、ただ、愛しいと思った。

ヨロヨロと学校に行くレイの背中を、ちょっとやり過ぎたかしらなんて思い見送り、みちるも少しふらついた足で、仕事場に向かった。急に眠気が襲わないように、ブラックコーヒーを飲みながら打ち合わせをする。

「それでこの、17小節目で…」
スタッフの言葉にドキッとする。指差す先の音符の奏でるメロディよりも、脳裏にレイの声が浮かんだ。
「海王さん?」
「あ、はい」
「えっと、この17小節目のことで」
「えぇ、…そうだったわね」
レイの唇がみちるの名前を綴る、その艶のある彩を思い出して体温が上がってしまう。
今は仕事中なのに。
軽く自分の頬を叩いて、それから小さく頭を振った。

打ち合わせでカレンダーを見つめると、4月17日が目に飛び込んできて、レイの柔らかい頬の熱を思い出してしまい。携帯電話を開くたびに、4月17日という数字が飛び込んできて、身体が瞬間震えてしまい。パソコンの画面も、街中の天気予報も、カフェのランチメニューの本日のおすすめと書かれたボードの横にも、4月17日という数字が書かれていて、その数字が視界に入るたびに、どうしてもレイを思い浮かべている自分がいる。


相当
もう、嫌になるくらい自分でも
あの子のことを

火野レイという人を愛しているのだと思い知らされる

昨日まではありふれた、世界中に散らばった日付や数字でさえ
今日だけはあまりにも特別に思えて
いいえ、間違いなく特別で

朝までは一緒にいたのに、この1年に1度の4月17日を24時間レイと過ごせないことが、こんなにもみちるにため息を吐かせるなんて。

本能的に、4と17という数字に反応してしまっている
レイを、ずっと想わずにはいられない身体

甘噛みされた胸の、情事の跡を服の上から押さえる
それだけで
一定のリズムを守りそうにない心臓が、1秒でも早くレイに会いたいと踊る

「レイ」

死んでしまいそうだわ
このどうしようもない胸の鼓動が
生きているという鼓動が
生きているという幸せが
みちるを優しく殺めようとする

『どうしたの?何かあった?』
学校の昼休みを狙って、電話をかけた

ロックナンバーは0417

いつもこの番号を打つたびにレイを思い浮かべているかもしれないって、今更ながら気が付いた。
「レイ、ちゃんと約束通り真っ直ぐマンションに来てくれるわね?」
『そのつもりだけど、お仕事、遅くなる?』
「いいえ、ちゃんと17時に帰るわよ」
『そう?えっと、それで?』
「それで?……それだけよ」
『そう。じゃぁ、夕方ね』
まだ、ずっと声を聞かせてってお願いするよりも早く、受話器の向こうからレイの気配が消えてしまった。
ガッカリな感情と、声を聞けた満足と、物足りない想い。

4と17という数字のせいで、レイへの想いが身体中に溢れだしてくる
1人ならニヤけたり、声に出してレイの名前を呼ぶこともできるけれど
ただ、ひたすらに想うばかり
想い続けるばかり
愛していると深く想うばかり



「お帰りなさい」
「レイ、ただいま」
両手に荷物を抱えてマンションに帰ってきた。エレベーターがゆっくりと降りてくるその時間も、昇ってゆくその時間も、ほんの数十秒くらいだというのに、長く遠く、地団太を踏みたくなるような想いをしながら耐えた。
「レイ」
持っていたヴァイオリンを手放してしまわないように、何とかちゃんと防音室に置いて、迎えてくれたレイを両手で抱き寄せる。
「レイ……会いたかったわ」
「そうなの?」
「会いたかったの、本当に」
「……どうしたの?」
手を取ってソファーに座らせると、不思議そうに見上げてくるその両頬を手のひらで包んだ。相変わらずひんやりしている。

レイの体温
みちるの両手にちゃんと、愛がある

「今日はずっと、レイのことばかり考えていたの」
「………そう?」
少し照れて視線を外す、その仕草が愛しい
「レイのことばかり考えていることは、心が満たされて、幸せなことなのよ」
何も答えようとしない、その手がみちるのシャツの裾をきつく握りしめてくる。
レイの膝の上に腰を下ろして、逸らされた視線の、その瞼の上に口づけを落とした。
「毎日想っているけれど、でも今日はやっぱり特別みたいだわ」
「………みちるさん」
きつく握りしめていたシャツの中に、冷たい指先が触れてくる。昨日、レイに抱かれる隙なんて与えなかった。いつもは愛し合うことが多いけれど、みちるがレイを愛し尽して、そのせいでレイの体力を奪ったから。
瞼と頬に口づけを落とす。ゆっくりと視線が重なった。
わずか数センチの隙間。
レイの中にみちるは溶け合えたりしない。
だけどその瞳に、みちるの姿を映し出すことができる。



「愛してるの、あなたのこと」




深く
高く
広く
大きく

そういう言葉でできる表現など、小さいと感じてしまうほど

火野レイを愛している

理由などない

その存在を愛しいと身体が訴えていることを
言葉で細かく説明などできない


レイが腰を抱き寄せて、唇を重ねてきた
真っ白い世界に投げ飛ばされたような錯覚に陥って

唇だけが温かくて
感じるそのレイの熱と想いが流れ込んでくる。

深く唇を求めるように、レイにしがみついて何度も何度も唇を求めた
キスをしているとき、死んでもいいっていつも思う
レイの頬や髪を撫で、指先に絡まる髪のサラサラと鳴る音
時々漏れる吐息の音、わずかな喉を鳴らす音

離れないようにしがみつくように、キスをする

愛しいのって
たまらなく愛しているのよ、と
傲慢でもいいから、レイの身体に伝わればいいのにって
願わずにはいられない

「……みちるさんが泣くの?」


乱れる呼吸を耳に感じながら、ゆっくりと離れると真っ直ぐな瞳がみちるを捉えた。
心臓を柔らかく握るような、その瞳の彩。
「………レイが好きよ」
「知ってるわよ」
「愛してるの。我儘だって思ってくれていいわ」
「思わないわ」
暖かい唇が頬を這う。
どうして泣いているのって、みちるは自分に問いかける。

愛しくて
愛しくて
愛しいと思う人と、触れ合えるこの幸せが
嬉しくて仕方がない

「レイ」
「………みちるさん、お腹空いたから、ご飯作って欲しい。一緒に食べて、一緒にお風呂に入って、その後、セックスしたいわ」
みちるの涙をぬぐうように、唇を頬に押し当て、耳元で誘う艶のある声。
「……そうね」
「みちるさんの我儘に、私、もっと振り回されてもいいわよ」
「本当?」
「もっと我儘になっても構わない」


また明日から、次の4月17日を待ちわびる
携帯電話のロックを解除するたびに
その数字をふとした日常で目にするたびに

レイを愛していると感じる日々が始まる
それが幸せだって、嫌になるほど思い知らされる

「レイ、あと1回だけキスしていい?すぐにご飯を作るから」

答えは唇に直接降り注がれた

身体中に流れる愛が
何度でも何度でも、みちるに愛していると言わせてしまう
同じ言葉をレイが選ばなくても
そんなことが必要だと感じないくらい
ただ

愛しい




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Date:2015/04/17
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