【緋彩の瞳】 恋をしている。 END

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

恋をしている。 END

いつも、思い描いて携帯電話を握りしめては、ここで止めてしまっている。
時間は16時を過ぎた頃。

みちるさんからレイへの電話は20時を回ってからだが多い。その日その日で時間は違うけれど、夕方はあまりない。
きっと、だからお仕事が終わっていない時間なのだろう。
レッスンも受けているって言っていたから、忙しいことには間違いない。
GWにもいくつかイベント出演があるって聞いている。


みちるさんが電話に出られない理由を心の中でいくつも並べているくせに
どう表現したらいいのかわからない鼓動が“言い訳”なんて無視をしろと、脈を打って全身を小刻みに震わせている。立ち尽くしたまま、それでも出られない理由を何度も想定しつつ、ダイアルボタンを押してみた。


RRR
RRR
RRR


『レイ?』
4コール待ってから切ろうって思っていたら、3コール目で聞きたかった声がレイの左耳に届いた。
「みちるさん」
『レイ。どうしたの?何かあった?』
「……みちるさん」
名前を声に出してみると、名前を呼びたかったのだと知った。
『なぁに、レイ』
「みちるさん、あの……ごめん、忙しかった?」
『いいえ、今は大丈夫よ』
声を聞いて、やっぱりその声を聞きたかったのだと思い知らされた。
「………会いたいの」

ただ、会いたい
会えたなら、触れたい
手をつなぎたい
指と指を絡ませて
袖同士がこすれ合う音を聞きながら
みちるさんの歩幅に合わせて
好きだと心で口ずさんで

『今、どこにいるの?』
「麻布十番の駅の近く」
『学校帰りなの?』
「えぇ」
『じゃぁ、どこかお店に入ってお茶を飲んで待っていて。30分以内に行くわ』
「いいの?」
『当たり前よ。私もレイに会いたいの』
「……昨日も会ったばかりよ?」

会いたいって言ってくれる
その気持ちがレイを清らかにしてくれる

『毎日だって会いたいわ』
「わ……私も……私もなの」

好き

『待ってて』
「……待ってる」


夕暮れが始まる頃
喫茶店の窓側の席から、外の世界を眺めている
ぼんやりではない
全身を震わせるような鼓動で、気絶してしまわないかしらなんて思いながら

みちるさんがどんな服を着てくるか
最初にどんな言葉をかけてくれるのか
どんな微笑みをくれるのか
そんなことを考えながら待ちわびている


「………みちるさん」
窓の向こう側に急ぎ足で信号を渡ってくるみちるさんを見つけた。
“あっ”って思った同時に視線が確かに重なり合った。
レイはすぐに会計を済ませて、近づいてくるみちるさんをお店の外で迎えた。
「レイ」
「みちるさん」
名前を呼びたかったし、名前を呼ばれたかった。
「レイ」
みちるさんに会いたかった。
「………会いたかったの」
「嬉しいわ。私もよ。レイから会いたいなんて言われて、夢みたいなの」
暖かい手のひらがレイの右頬を包む。
みちるさんに触れて欲しかった。
一つ一つ想いが満たされるたびに、もっともっと欲しいと希う感情を、何と呼べばいいのかわからない。


わからないのではなくて
みちるさんが、レイに生まれて初めての感情を与えてくれているのだから




繋いだ指の隙間の空気
互いの袖がこすれ合う音
ヒールを履いたみちるさんの歩幅に合わせる律動
ふわりと風を受けて舞う毛先の波


みちるさんが好き
そう想うこの感情が



心地いい


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Date:2015/04/19
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