【緋彩の瞳】 Crazy for you END

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

Crazy for you END

「………ちょっと、ごめん」
好きって、
キスしたいって
そう言う言葉は出ない癖に、立ち上がる言い訳だけは簡単に声に出せる自分が、本当最低だわって思う。
「レイ?」
「………外の、空気……」
言ってレイは部屋を出た。ここは神社じゃないのだから、外に出ても新鮮な空気を吸うためにはエレベーターで1階に下りないといけない。靴を履いて立ち上がると、みちるさんの足音が近づいてきた。
「レイ………ごめんね……嫌だったのなら……送っていくわ」

違う

「そうじゃないの、えっと。その……ごめん……帰りたいとか、そう言うのじゃ、なくて」
作り笑顔を見せて、せめて安心してもらわないと。
ふぅ、と息を一度吐きだして振り返ると、みちるさんが真っ赤な瞳で、ハラハラと涙を流していた。



…………


みちるさんを泣かせてしまった。
泣くようなことをしているのだと、今、初めてわかった。

「みちるさん………私、いつも自分のことしか考えられなくて……どうしたらいいのか、わからなくて、何て言えばいいのか………わからなくて……悲しませるつもり……じゃ、ないの………ごめんなさい」
好きだって言ってくれる人を泣かせるなんて。
「………レイ、私はあなたが好きよ。あなたが……私を好きじゃなくても、好きなの」
そうやって、声に出せる清らかさが欲しいって願う。
「みちるさん…………私、みちるさんが望むような、いい恋人じゃないと思う」
「レイはレイよ」
「………大切な人を泣かせるような恋人なんて」
しかもなかせるようなことをしていることに、全然気が付かなかったなんて。
真っ白な頬を伝う涙。そっとそっとその雫を拭うように手の平で頬を包み込んだ。ひんやりとした感触と、真っ赤な目。
「私のこと、大切だって思ってくれているのでしょう?」
「……もちろんよ」
「私のこと、好きって思ってる?」
「………好きよ………とても」
両手にジワリジワリと感じるみちるさんの涙が、レイの声に出せないという苛立ちを消した。声に出してもいいのだと、今は声に出すべきなのだと、その涙が告げている。
「……キスしたいわ」

レイだって

キス、したいって思ってる


この両手で包んだ頬を
引き寄せるだけでいいのに

「レイ………キスして欲しいの」

みちるさんに言わせなきゃ何もできない

情けなさすぎる

「みちるさん」

腕を引き寄せて、唇をゆっくりと重ねた。

狂い始める心臓のリズム
おかしくなってしまいそう
いえ、もう、みちるさんを好きだと自覚したころからずっと
レイはずっと感情のコントロールが正常にできていない

「………レイ」
「もう、泣かないで。悲しませたくないの。でも、その、ごめんなさい、どういう風に振舞うことがいいのか、わからなくて」
みちるさんの両腕がレイの腰をそっと抱き寄せてくれた。レイは靴を脱いで、その力にあらがうことをせずに、腕の中に納まった。濡れた手の平。見上げると、悲しそうな顔ではない。
「私、なんでこんな面倒な子を好きになっちゃたのかしら」
「…………ごめんなさい」
「いいわ。キス、してくれたから」
今更ながら、唇の感触が心地よかったって思いだしてしまう。恥ずかしくなってきて、その肩に顔をうずめて縋り付くようにきつくみちるさんの身体に縋った。
「レイ」
「………私……」
「好きよ、レイ」


私も

みちるさんのことが凄く好き



言葉に出せない代わりに、みちるさんに抱き付いている腕を解かずに、きつくきつく抱きしめた。






「ん、何?」
「別に何も。ちょっとね、思い出していたの」
レイの頭を撫でていると、ふと昔を思い出して小さく笑いが漏れた。
「何を?」
「私たちのファーストキスのこと」
「……あぁ、みちるさんが泣き落としをして、私がしたキス」
みちるの全身に付いている赤い情事の跡。レイの眠たげな声。みちるの胸に置かれた右手はまだ、緩慢な動きを止めようとはしない。
「あの頃は、初々しくて可愛かったのに」
「……みちるさんも、キスしてって言った顔は可愛かった」
最大限に甘やかせて、レイにして欲しいことをすべて口にして、そうやってレイの緊張感を解いていった。セックスができるようになったのは、あれから1か月くらい経ってからだった。それから2年が過ぎた。キスをねだる言葉を言わなくても、瞳が重なれば唇も重ねる。愛を囁けば身体を重ね合える。

「………ねぇ、して」
「まだするの?」
「足りないわ」
唇を重ね合わせて、あの頃よりももっともっと、愛しいって感じていることが伝わればいい。

好きだって言葉にすることを、レイは今でも苦手にしているけれど
もう、そんなことは大したことじゃないって思えるの
レイがみちるを愛してくれていることは、身体中で知っているから





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Date:2015/05/05
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