【緋彩の瞳】 「パフェ、食べよう」 ②

緋彩の瞳

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「パフェ、食べよう」 ②

あぁ、もう、何て言うか
わかりやすく機嫌が悪いオーラ


「あぁ、えっと後輩の美紀ちゃん。引っ越してくる前の中学の後輩でさ、麻布に引っ越してきて私と同じような境遇で、その、頼られているっていうか」
何か嬉しそうなまこちゃんは、まだよくわかっていないのかもしれない。
「そう。それで薔薇を見に行こうっていう約束をしていた土曜日は、あの子とデートをするの?」
まこちゃんと女の子が話す声は結構良く聞こえてきていた。お店の近くを歩いている、っていうのがすぐにわかるくらい。五月晴れで過ごしやすい温度だったから、たまにはオープンカフェでお茶をしようって、この場所を美奈が選んだ。うさぎは衛さんとデート、美奈はさっきちょっと遅れるっていう連絡が来ていた。まこちゃんを待ってからパフェでも頼む?っていう話も出ながら、いっぱい種類があるし1つを2人で分けて、先に食べちゃおう、って注文してから10分も経ってない。
亜美ちゃんから嫉妬っていうか怒りって言うか、マイナスオーラがプンプンと漂ってくる。レイは1人で全部なんて食べられないんだけど、って心の中で思いながらも、そう言えばみちるさんも呼んでいたわね、なんて考えていたりもした。
「あ、いや、その、あの、母の日のプレゼントを買うのに付き合ってって言われてさ、ゆっくり探すのには、土曜日が一番いいだろうって思って。だから何て言うか、時間をずらすか、薔薇を見に行った帰りにでもっていうか」
かわいい後輩に愛想よくするのは、まこちゃんらしいと思う。
亜美ちゃんが面白くないって考えているのは、先にデートの約束をしているのにっていうことなんだろう。
「そう?可愛い後輩がおねだりしているのだから、2人きりでデートに行ってあげたら?」
嫌味たっぷり言われているのに、それでもわからないとか、ちょっと鈍感かも。
「え?あ、でも、薔薇もせっかく満開だしね。じゃぁ、美紀ちゃんも誘おうか?」
お人よし過ぎるんじゃないかって心の中で突っ込む。レイはフルーツがぎっしり詰まっているパフェを食べるのを諦めて、まこちゃんに眉をひそめた顔を見せてみた。
「え?……やっぱダメだよね?」
なぜ、レイに確認を取るのだろう。
「………それ、もらったの?」
亜美ちゃんはとても冷静で、まこちゃんが乾いた笑いで誤魔化そうとしても、何の効果もありませんと言った様子。そして、まこちゃんの鞄の横にあるピンクの紙袋を指さした。
「うん、学校で作ったんだって」
何か、それも嘘っぽい。学校で作ってそんなピンクの紙袋に包むって。TAの女子じゃあるまいし。
「クッキーだね」
やめればいいのに、わざわざ取り出して見せて。ラブレターじゃありません、とかそう言うアピールをしたいのか、よくわからない。綺麗なラッピングと木野先輩へって書いてあるカードが見えている。
「よかったわね。じゃぁ、こんなところでパフェを食べない方がいいと思うわよ」
「いや、これはさ、家に帰ってから食べるよ」
美奈やうさぎは馬鹿だけど、まこちゃんの馬鹿は種類が違う。
静かに立ち上がる亜美ちゃんは小銭をレイの目の前に置くと、一度満面の笑みをまこちゃんに見せて、ゆっくりとお店を出て行ってしまった。
「え?亜美ちゃん?!ごめん、その何か、勘違いしてる?!」
亜美ちゃんは頭がいいから、勘違いはしていないと思う。すべての内容を理解して、腹を立てているってものすごくわかりやすいのに。
「もう、まこちゃん……馬鹿じゃないの?」
「……え、やっぱり?怒ってる?」
なぜレイに聞くのだろう。


美奈がなぜかみちるさんと一緒にお店に入ってきた。

「ねぇ、さっき亜美ちゃんが帰っていったけど、塾?あ、それおいしそう!一口頂戴!」
何も知らない美奈は亜美ちゃんが座っていた場所に腰を下ろした。食べるなとは言わない。言うよりも先にレイのスプーンで、パイナップルを掬っているのだから。
「レイ、お帰りなさい」
「みちるさん。ただいま。お仕事お疲れさま」
仕事終わりのみちるさんは、いつものレイの好きな香水を付けている。
隣に腰を下ろし、レイの髪をそっと撫でてくれた。
柔らかくて優しい笑みをくれる人。
「浮かない顔ね、何かあった?」
「……まこちゃんが亜美ちゃんとのデートの日に、後輩とのデートをダブルブッキングしたみたいなのよね。それで、亜美ちゃん怒っちゃったみたい」
「うわ、何だよ!レイちゃん、そんな誤解を与えるようなこと言わないでよ!」
まこちゃんは心外!みたいな抗議をしてくるけれど、何も嘘なんてついていない。
「あれ、まこちゃん、これ何?クッキー?木野先輩へって。まさかこれ、亜美ちゃんに見せつけたりしたわけ?」
「え?あ、いや、だって、その、もらったの?って聞かれたから」
「馬鹿だね、まこちゃん。デートをダブルブッキングした上に、モテますみたいなアピール?嫉妬させて、怒らせて……さては夜のプレイに利用するの?」
「はぁ?ちょっと美奈……」
別の馬鹿が余計に話を混乱させるから。
「えぇ、何で?何でそうなるんだ?!」
「美奈子、お黙りなさい」
最後の美奈の妄想は置いといて、亜美ちゃんに気を使って素直にすべて説明した結果、亜美ちゃんを怒らせたということは事実。
「レイ、亜美は本当に帰ってしまったの?」
「みたいね」
「そう。まぁいいわ。私たちが口を出すべきことじゃないでしょう」
「……そうね」
みちるさんは何か考えがあるのか、それとも静観しなさいと言いたいのか。でも、まこちゃんは馬鹿が付く程正直者でお人よしだってことは亜美ちゃんも知っていること。
「美奈、それ全部あげる。私、コーヒー」
「じゃぁ、私はケーキセットにするわ。一口食べる?」
「ありがと」
ケーキは何がいい?ってみちるさんに聞かれて、みちるさんの好きな苺のタルトと答える。
「え~!!!ちょっと、助けてくれないの3人とも!」
「助ける?なぜ?あなた、人の助けを求める立場にいるの?」
「……みちるさん、だって亜美ちゃんは怒っちゃってるんでしょう?」
「そうかしら?私は会ってないからわからないわ」
この話は終わり、みちるさんはそう宣言をした。
全て自分で種をまいていたと言うのに、今更ながら頭を抱えるまこちゃんと、それをニヤニヤ笑いながら見ている美奈。
どれくらいこの問題は尾を引くのかしら、なんて。自分たちで解決してもらうしかないんだけど。レイは人にアドバイスしてあげられるほど、恋愛上手とかでもないし、上手い言葉を使えそうにもないから、静観しかできないだろうって思った。



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Date:2015/05/20
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