【緋彩の瞳】 「パフェ、食べよう」 END

緋彩の瞳

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その他・小説

「パフェ、食べよう」 END

「亜美」
「……みちるさん?」
昨日と今日、まこちゃんを何となく避けてしまっている。1人で先に学校を出ると、門の傍に珍しい人がいた。
「ごきげんよう」
「こんにちは。どうしたんですか?こんなところで」
誰かと待ち合わせかしらって思っても、学校の校門前に立っているみちるさんが、TA女学院に通うレイちゃんを待っているはずもなく、それ以外の仲間の誰かに用があるのはわかる。
「あなたを待っていたのよ。仕事があるから、歩きながらでいいかしら?」
ヴァイオリンと鞄を持っているみちるさんは、移動の途中だと言う。亜美は小さく頷いて隣に並んだ。
柔らかくて甘くていい香り。
「レイちゃんのことで何か?」
「レイ?あぁ、レイは今頃、後輩にキャーキャー言われながら部活をしているわ」
「え?」
「今日は後輩が体験入部で一斉に押し寄せるみたい。デモンストレーションに担ぎ上げられているんですって。あの子目当てに部員の定員が埋まってしまうでしょうね」
「……あぁ、なるほど」
とても簡単に想像できる。レイちゃんは本当に例えじゃなく“キャーキャー”言われるから。
「うちのレイも本当にモテモテよね。手作りの類は受け取らないようにって言っても、頻繁に何かもらってしまっては、美奈子やうさぎに渡しているみたいだし」
それはよく見かける風景。レイちゃんと放課後に会うと、もらったからって、お菓子類を美奈子ちゃんたちに渡している場面に出くわすことがある。料理研究部だとか手芸部だとか、そう言う人たちがいろんな手作りの類を作っては、レイちゃんに届けに来るみたい。もう、レイちゃんに何かプレゼントをあげるという部活動になっているらしい。流石に受け取っても食べないし、マフラーもセーターも、コースターもペンケースもポーチも一切欲しくないと宣言はしているみたいだけど、手に触れてもらうだけで満足、なんていう子もいるとかいないとか。
「レイちゃん、外にも人気でしたよね、そう言えば」
「えぇ。先月の誕生日は知らない学校の子が、神社で何人か待ち伏せをしていたみたいだけど、あの子、ずっと私のマンションにいたから。おじいちゃんがプレゼントを受け取ったみたいで、レイは相当おじいちゃんを怒ったみたい」
みちるさんは、学校内の子たちにはある程度優しくしてもいいと思っている、と話を続けた。だけど、見知らぬ人からの好意は、何があるかわからないから一切関わるべきじゃない、とも。確かにレイちゃんは、後輩たちから貰ったというものをよく手に持っているけれど、見知らぬ人からの何かを受け取ったことはない。押し付けられても本人に捨てると宣言をしているみたい。そう言うスタンスでいることを、みちるさんは何となく遠まわしに自慢しているように聞こえてきた。
「あの子ったら、本当に。いつか学校で抱き付かれたりしないかしら。でも、学校でいじめられたり影で悪口言われるような子よりは、モテモテでいてくれた方がいいものね」
「……そうですね」
「でも、あの学校は綺麗な子ばかりだし、中学も大学も傍にあるでしょ?レイがほかの子に目移りしたりしないか、それも心配なのよ」
そんなことを話すために、みちるさんは亜美を待っていてくれたのだろうか。とても真剣に悩んでいるようにも見えないし、自慢にしか聞こえない。
「レイちゃんはみちるさんが大好きでゾッコンだから、そんなことはあり得ませんよ。たとえどんなにモテても、それに価値を見出していないみたいだし。それよりレイちゃんは、みちるさん以外を見るって言う考えなんて持ってないはずだから」

いつでも、レイちゃんはみちるさんのことをまっすぐ見つめている
出会ったその日から、ずっと、みちるさんのことを想っている
見ていてわかる
痛いくらいに
そしてみちるさんも
レイちゃんを一途に愛して
想って、優しい瞳で見守っている

「あの子、私に向かって大好きとか愛してるとか口にしないのに、亜美はわかるの?」
「そんなの、誰が見てもそうとしか見えないです」
まっすぐにキラキラと輝く視線
その先に愛している人がいるって、誰でもわかる
そこには必ずみちるさんがいるのだから
そして、みちるさんのことを話す時のレイちゃんの口調はとても優しい
聞いていて心地のいい安らぎを覚えるほどに
「そう?あぁ、でもそうかもしれないわね。まことが亜美のことを見ているとき、大好きっていうオーラが嫌になるくらい見えるもの」

みちるさん、レイちゃんから何か聞いたのかしら。
こういう励まし方をするのって、レイちゃんの方なのに。

「……みちるさん、レイちゃんに似てきましたね」
「嫌ね、あんなに不愛想じゃなくてよ、私」
みちるさんはクスクス笑っている。亜美は足を止めて小さくため息を漏らした。
「昨日の夜、せっかく2人でいたのに、まことがずっとレイと話し込んで電話を切ってくれないんだもの。事情をよく知っているのはその場にいたレイだけらしいけれど。私たちには貴重な時間なのよ」
「えっと……ごめんなさい」
思わず謝ったのは、みちるさんが可愛く拗ねたから。その拗ねた様子を見ながら、亜美もまこちゃんにこんな風に可愛らしく拗ねて見せて、それで終わりにした方が良かったのかもしれないって思った。
そうするべきだったのだろう。
昨日も今日も、朝早くから電話が鳴りっぱなしで、学校に行ったら門の前で待っているし、休み時間ごとに顔を見に来るし。お昼ご飯の時もずっと謝ってくる。
今日も、まこちゃんのクラスのホームルームがまだ終わっていないから、先に出ることができたけれど、きっと亜美のいない教室を覗いたりしているだろう。
「好きなのでしょう?お人よしで、いい子じゃない」
「………えぇ」
「そう言うところも含めて、良くも悪くも木野まことだと思うわ」
たぶん、亜美もみちるさんが言っていることを十分にわかっている。
わかっていて、でも、許すっていう感情をどの時点で見せたらいいのかわからなくて。後輩って言う子との約束は断ったから!って言われても、断って欲しいって言うわけじゃない気がして、ますます会話をしたくない気持ちになっていた。
亜美は子供みたいに拗ねているだけなのだ。
拗ねたふりして、自分を一番に想っていてほしいなんて子供みたいなアピールをしている。
「……そうですね」
「レイが誰を好きなのか見ていてわかるのなら、まことが誰を好きなのかだってわかっているはずよ」
なんだかものすごく恥ずかしいことをさらっと言われて、体温が上がってくるのが己惚れているみたいな気がしてならない。
「亜美もわかりやすいわ。だから、もうレイを相談相手にするのはやめるようにって、まことに伝えて頂戴」
「………わかりました」
交差点でみちるさんは、タクシーを拾った。
「じゃぁね、亜美」
「はい」
「後ろをついてきているストーカーに、よろしく伝えておいて」
「…………えっ?」
バタンとタクシーのドアが閉まって、でも亜美は見送らずに振り返った。
「ま…まこちゃん」
「ちがっ!いや、違うんだ!その、あの、教室の窓から、その、亜美ちゃんが帰るところが見えて、追いかけたらみちるさんと話をしていたから、えっと、声かけられなくて、ただ、そのえっと、歩いていただけで」


何か、怒りたいような恥ずかしいような
みちるさんに好きなのでしょう?って聞かれて、小さく頷いていたところまで見られていたのかも。でも確認なんてできない。

「亜美ちゃん………土曜日、お弁当作ってさ、2人で薔薇園に行って、それでうちに帰ったらご飯食べてのんびりしようよ。その、泊まりに来るだろ?」
それは、最初に交わした約束のままだった。
「後輩は?」
「大切な友達との約束の方が先だからって。雑貨屋さんの場所を教えておいた。友達誘って行って欲しいって伝えたよ」
「そうなの。怒ってたんじゃない?」
まこちゃんが責められたりすることだって、別に望んでいるわけじゃない。だから結局は、このお人よしの、まこちゃんらしさをもっと亜美が受け入れるべきなのだろう。
「そんな風じゃなかったよ。気にしないで。亜美ちゃんがずっと怒ったままの方が、私は何倍も嫌なんだからさ」
どうして怒っているのかって言うことをちゃんとわかってくれるまで、口を聞きたくないっていう気持ちが確かにあったはずなのに。
あれだけ惚気を聞かされたら、2日間ムッとしていた自分が馬鹿みたいに思えてくる。
「まこちゃん……この前、パフェをちゃんと食べていないし、あのカフェに行かない?」
「そうだね。あぁ、じゃぁ、美奈たちはどうする?」
レイちゃんは、部活でキャーキャーらしいからきっと来られない。
「まこちゃんは、2人は嫌?」
「え?ううん、じゃぁ、2人で1つのパフェ食べようか」
「………そうね」
子供みたいに飛び跳ねんばかりのまこちゃんは、亜美の腕を取った。
「よかった。なんか昨日の夜さ、レイちゃんから散々、鈍感馬鹿鈍感馬鹿って言われ続けて。もう気が滅入っていたんだ」
それでも、長々と電話を切らずにその言葉を聞いていたっていうのも、まこちゃんらしい。
「あげくに、途中からみちるさんの家にいるのに、邪魔しないでって言って来て。向こうで幸せそうな顔してんだって思うとさ……亜美ちゃんに会いたくなってさ」

結局、まこちゃんも亜美も、人の惚気を聞いただけでお互いを恋しく思えてしまう単純馬鹿って言うことなのだろう。

「あの2人、何だかんだ凄いよね」
「……レイちゃんとみちるさんだもの」
「そうだよな」
「えぇ」

まこちゃんは、もう後輩のことを改めて話題に出して謝ったりしてこなかったし
亜美も、もうその子についてなんて考えることはやめた

何十人というファンのいるレイちゃんと
有名人のみちるさんが付き合っていて
お互いに愛し合っていて
モテる恋人を自慢できるような
そんなのを聞かされてしまえば

なんだかもう、ちっぽけだから






うちのみちるとレイが最強
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Date:2015/05/20
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