【緋彩の瞳】 私の恋人 END

緋彩の瞳

美奈子×レイ小説

私の恋人 END

「ごめんね、悪いんだけど。この後の予定は決まっているの。それに、こうしてここまで送ったのだから、もう私はあなたのために費やす時間はないのよ」
きっぱりと言い放ったレイちゃんは、笑っているでもなく怒っているでもない。
淡々としている。緋彩ちゃんは美奈子へと視線を変えた。
「………は、はは」
何で作り笑顔を見せているのって、自分に突っ込みたい。
「今日のようなことがないために、もっと用心すること。それと、私はあなたに関わるつもりもないし、あなたを助けたからと言って、あなたと親しくするつもりもないわ。ほかの生徒に言いふらすのは自由だけど、私はそういうタイプの人間って嫌いなの」
レイちゃんって、強いし、学校では怖い先輩なのかもしれない。
って言うか、こんな怖い先輩なのに人気って言うのも不思議なんだけど。
まぁ、火野レイ様だから仕方ない。きっと周りはみんなドエムお嬢様なんだろう。
「…………はい、レイお姉さま」
「じゃぁ、そろそろ手を放してもいい?」
「……はい」
「それじゃぁね」
圧迫されていたようなレイちゃんの右手は、名残惜しいと言わんばかりに解放されていく。

「美奈、ごめんね、鞄持たせて」
「ううん、いいよ」
美奈子は最後まで何の発言もせずに、結局、レイちゃんの鞄持ちと背景だった。
鞄を受け取ろうしているその左手。
「美奈?」
「………鞄、持っといてあげるよ」
玄関先で、緋彩ちゃんはまだレイちゃんの背中を見送っている。
名残惜しいだけじゃないだろう。
たぶん美奈子を恨めしく思っているに違いない。
「いいわよ」
「いいから」
差し出された手に鞄を置かず、美奈子は指を絡めるように手を繋いだ。

手を繋ぐところを、後輩に見せつけた。

「ちょっと何すんの?」
そうそう、そのムッとした声と顔。
さっきまでの先輩ぶった凛々しくて厳しい顔とは違う。
「いいじゃん」
「いいわけないでしょ?放しなさいよ」
本気で逃げようとしないあたり、もしかして後輩を意識しているんだろうか。美奈子をどついたりするところを見られたくないのかもしれない。
「いいからいいから~。うちの方が近いから、たまには夜ご飯食べて帰ったら?」
「あぁ、……そっか。確かに近いわね。おばさまは大丈夫?」
「平気平気~~」
「そう?まぁいいけど。わかったから、もう放しなさいよ」
視線が消えるまでは絶対に放さない。
っていうか、美奈子の家に辿り着くまでは、絶対に放してやらない。
「……美奈、放してって」
角を曲がったところで、レイちゃんは声色を真面目に変えてきた。
「嫌」
「……何でよ」
「普通に嫉妬したんだけど、さっきの後輩とのおてて繋ぎ」
「はぁ?……何言ってんの?」
レイちゃんは、意味がわからないって言いたげなため息だった。手を放そうとする抵抗も諦めてくれているらしい。まぁ、そんなに遠くない距離だけど。本当はずっとこのままどこまででも歩きたい気持ちだってある。

でも、こんなよくわからない感情で手を繋ぐっていうより
清々しく愛しくてたまらない感情で
当たり前のように手を繋ぎたい
何かを意識するんじゃなくて
さりげなく
当然のように手を繋げたらどれだけ幸せだろうって思う


………でも


「あ~ぁ、私とは絶対に外で手を繋ぎたくないって思ってるくせにさ、後輩ならいいわけ?」
「あれは、その、成り行きで仕方ないでしょう?」
「仕方ない?でも、恋人と手を繋ぐことは当たり前の行動で普通のことで、仕方ないことじゃなくて、すごくいいことで、でもそっちは嫌なんだねぇ」
今更、八つ当たりしたいわけじゃない。まぁ、これは嫉妬しているっていうことをアピールしているわけで。
「……………」
レイちゃんからの反論はなかった。
「恋人がほかの子と手を繋いでいる後ろを歩くのって、すっごく嫉妬するよね。何も言わなかった私にご褒美くれてもいいでしょ」
「………だから、別に好きで手を繋いだわけじゃないわよ」
「レイちゃんから手を差し出したじゃない」
「それは、別に……手を繋ぐつもりがあったわけでもないわ」
レイちゃん、だんだん口調がしゅんってなってきた。野郎どもを目の前にしていた時の、あのものすごく怖いオーラや、後輩に注意しているときの凛々しさとは、全然違う、美奈子しか聞くことのできない、しゅんとした声。
「レイちゃんは、私が誰かと手を繋いで歩いていても平気?」
「…………」
「今、嫌だって思ったでしょう?」
「…………」
覗き込もうとした横顔は、そっぽ向かれる。
だけど代わりに、絡めた指に力が込められた。
この天邪鬼め。
「だから、私の家までは手を放すつもりはないから」
「………わかったわよ。今日だけよ」
「それ、言うと思った」

明日からもずっと、歩いているときは手を繋いでよ

そんな言葉を口にしたら、レイちゃんは本気で困った顔をして足を止めてしまうだろう

我ながら、レイちゃんの性格をよくわかっている


「でも、私が誰かと手を繋ぐこと想像して、それだけでレイちゃんは嫉妬するってわかったし、今日だけにしておいてあげる」
「………馬鹿美奈」



恋人

同じ歩幅で歩いて
手を繋いでデートして
横顔をチラチラ見て
ドキドキして


そういうのが幸せで
楽しくて



でも現実は違う

そんなドキドキを与えてはくれないし
手を繋いで歩くことだって
よほどのことがない限りしてくれない

それでもいい

だって、このどうしようもない恋人を
選んだのは
美奈子なんだもの




「照れちゃって、可愛いんだから」
「違うわよ」
「大好きよ、レイちゃん」
「………」

赤くなっちゃって
後輩にこんな顔は見せられないわね


私だけの恋人




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Date:2015/05/31
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