【緋彩の瞳】 恋の果実 ③

緋彩の瞳

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絵里×海未小説[ラブライブ!]

恋の果実 ③

「海未~?」
「あ、絵里ちゃん!海未ちゃんなら、真姫ちゃんと一緒に音楽室にいるよ」
放課後、部室に顔を出して最初に視界に飛び込んだのは穂乃果だったと言うのに、絵里は海未の名前を呟いていた。
本当に無意識だった。
歩きながら海未のことを考えていた自覚はないから、どうしてなのかはよくわからない。

わからない。って言い聞かせている。


「え?あ、そうだったわね。そう言えば昼休みにそう言いに来ていたわ」
だから、海未がいつもやってることを絵里にお願いしたいと、わざわざ3年の教室に来た。それは数時間前のこと。
「うん、上がってくるかどうかわからないみたいだから」
海未と真姫が頑張って作っている歌は大体のメロディラインは仕上がっていて、アレンジと歌詞を付ける段階だったはず。
「そう。じゃぁみんな、早く上がって柔軟始めるわよ」
いい天気の青空の下で今日も、柔軟を始めて、カウントを確認しながらのステップの基礎、体幹トレーニングをしなければいけない。
「えりち、どないしたん?」
「え?何が?」
「悪いものでも食べたん?なんか、調子悪いん?」
いつも海未が隣でカウントを数えている。それを今日は絵里が1人でやり、リズム取りもすべて絵里がやる。仲間の真剣な瞳が一斉に絵里を見つめてくるけれど、それはいつものこと。

ただ、海未が隣にいないだけ。

「だから、何のこと?」
「なんていうか、念仏みたいなカウントで、身体から力が逆に抜けそうなんよ」
「……そう?別にいつもと変わらないわよ?」
「そんないつも念仏唱えてたん?………誰かがおらんせいちゃうの?」
仕方ないなぁ、と希は小さくにやりと笑う。
絵里はその様子に眉をひそめて睨み返した。

意味が
わからないんだけど

「悪かったわよ。海未のカウントの方が正確なんでしょうね。ちゃんとしていたつもりだったけれど、上手く出来なくてごめんね」
「そう言うことにしとくけど。まぁ、取りあえず2人がおらんでも、ちゃんとやることやっとかな」
「じゃぁ、もうちょっと声のトーンを上げるわね。取りあえず次、アップでリズム取りをしましょう」

1,2,3,4
1,2,3,4

「もっと顎を引いて!背中もよ。腰からお腹、胸をもっと引き上げるように!穂乃果、上を向くんじゃない、顎を引いて。花陽お腹の力は抜かない!体幹を意識して!」

片耳でリズム取りの音を聞きながら、手を叩く。

1,2,3,4
1,2,3,4

「絵里ちゃん、さっきまで念仏唱えていたのに、希ちゃんに指摘されると今度は鬼になった」
「まるで海未ちゃんみたいだね」
「海未ちゃんは同じ歳だから、まだいいけれど、絵里ちゃんはちょっとスイッチ入ると怖いかもね」
穂乃果とことりがヒソヒソと話をしている。片耳でも十分に聞き取られる。
睨み付けると視線を逸らされた。

「10分休憩。今日はAメロからの復習をして、サビのフォーメーションを考えましょう。私は少し降りるから、休憩時間が過ぎたら、始めておいて」
全員が汗を流しながら、声にならない返事が返ってくる。まだ汗も掻いていない絵里は、水を手に取って、屋上から階段を降りた。
音楽室へと足が向かっている。
海未の…海未と真姫の様子が気になったからだ。

今、みんなが練習をしている曲以外にも、これからに向けて新曲をあと2曲くらいは欲しい。そんなことをみんなで話したのは3日ほど前。作曲の才能は真姫しか持ってないし、歌詞も3人の頃から海未がすべて書いていて、新曲となったら2人に視線が注がれるのは当たり前のこと。ことりに書かせたこともあったけれど、そう言う特別な事情やヒラメキを今のメンバーの誰かが持っていると言う風には、残念ながら思えない。
ピアノのメロディが音楽室から漏れてくる。ガラス越しに教室を覗き込んだら、海未が真姫に寄り添うようにして並んでピアノの前に座っていた。

………

この胸をくすぐるこのかゆさ
嫌な予感がしてならない


「えりちは、海未ちゃんのこと好きなん?」

………
「………………ひぃっ?!!!!」

何の気配もなく背後から希の声が聞こえて、思わず背筋が凍って悲鳴さえ上げられなかった。
「……な……の…の、の、希?!」
「音楽室、覗きに来たんよ。2人とも頑張ってるかなって。えりちもやろ?」
「………そう、だけど」
「海未ちゃんが心配やったんやろ?」
「べ、…別に。2人だけに押し付けているから、様子を見に来て」
絵里は心臓がスピードを上げて行くのを、落ち着かせようと深呼吸を繰り返して、声をなるべくひそめた。
「うちには物凄くわかりやすいんやけど……えりち、3人のμ'sの頃から、海未ちゃんのことばかり見てたやん?海未ちゃんが、ダンスを教えてくれって言ったからその気になったんやろうなって、うちは思ってんけど」
「…………な、何?いきなり、何、何言ってんの?」
希は確信ありますと言った笑み…いや、悪戯の笑みだ。
「なんや、えりち。えりちには自覚ないん?」
「……海未?私はただ、2人の様子を見に来たのよ」
「好きやから、やろ?」

咳払いをひとつで誤魔化して。
「ゲホゲホ……ゲホッ!」
ひとつ、なんてものじゃ済まなかった。
「大丈夫、えりち?」
「ゲホッゲホ、だ…、だ…」
咳払いがから回って、心臓が飛び出そうで、汗が噴き出して。

「絵里?希?どうしたのですか?」
目の前の扉が開いて、海未が姿を現したから、本当に死ぬのではないかと思った。

「う、う、海未っ。真姫も、ど、ど、どう?進んでる?」
「様子を見に来てくれたんですね?大丈夫です。真姫の紡ぐメロディは言葉を乗せやすいので、もう少しで仕上がります」
「そう。そっか、でも、今日のダンスレッスンは無理そう?」
「そうですね。今日は2人で完璧に仕上げてしまって、明日の朝練から参加しますが、それでよろしいですか?」
真姫はつまらなさそうに髪をいじりながら、ピアノの前に座ったまま。
絵里と希をちらっと見ているだけだ。
「え……えぇ、いいわ」
「残念やなぁ。えりちは海未ちゃんと一緒にレッスンしたかったのになぁ」
「…………希」
悪魔の尻尾と角が生えているようにしか見えない。絵里は脇腹をつついてくる希を睨み付けたけれど、それくらいで怖がる親友じゃない。
「そうですか。すみません。でも今日は、真姫と2人でもう少しここにいさせてください」

チクッって何かが心臓に刺さった

「いえ、別に謝ることなんてないわ」
「私たちに構わず、練習をして、時間が来たら帰ってくださっても大丈夫です」
「そんなわけにはいかないわ。下校時間になったら迎えに来るから」
「わかりました。では、真姫が待っていますので」
海未は丁寧に頭を下げて、絵里の鼻の先で扉を閉めて行ってしまう。
「………えりち、大変な子に惚れてるなぁ」
「そうね、……そうみたい」
「なんや、素直に認めるん?」
「っていうか、わかってなかったって言うか、何て言うか、蓋をしていたと言うか、安全な位置にいて、眺めていられた方が楽しい気がするって言うか、むしろこういう時は、どうしたらいいのか教えてもらいたいわ」

真姫に嫉妬をしたのか
海未の態度にショックを受けたのか
よくわからないけれど

チクって痛いと感じたのは
希が絵里の気持ちを教えてくれたからに違いなくて

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Date:2015/06/01
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