【緋彩の瞳】 恋の果実 ④

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

恋の果実 ④

「海未ちゃん、ぶっちぎりで恋愛から遠い場所で生きてるような子やからなぁ。そこに惚れたん?」
「………わからないわよ。どこが好きとか、何が好きとかも」
「それ、もっともあかんパターンや……」
「え?ダメなの?確かに海未の真面目でまっすぐなところも、何事にも一生懸命なところも、素直なところも、それでいて生真面目が行き過ぎて不思議なところも好きだけれど、でも、それは、別に恋っていうか、人として好きっていうのであって。すごくいい子だもの」

亜里沙が海未のファンになったって言うから、とりあえず海未のことを色々調べて、亜里沙に教えてあげて、撮影をしている希のビデオも見せてもらっていたし、海未がなぜか勝手に希から絵里がバレエをやっていたことを聞いて、ダンスを教えてくださいと頭を下げに来て。海未が言うからにはかなり本気なのだろうってわかっていたし、それに応えたかったし、何て言うか、隣で踊ってみたかったって言うのもあるわけで。

「あかん、聞いていて顔、熱くなるわ。えりち、取りあえず練習に戻ろう。少し、冷静になろう」
「……希がダメだって言うからでしょ?」
「えりち、もう、すでに重症や」

重症?

そこまで海未を好きって思っていたかしら
ピアノの音が遠ざかる。海未が歌う声が聞こえてきて、足を止めようと思ったけれど、希に腕を引っ張られてしまった。
「もう15分過ぎてるんやから、戻らな」
「……そうね」
薄暗くなり始めた屋上で、何をしようとしていたのか、しばらくの間、思い出せないでいた。




「海未ちゃん、真姫ちゃんの家に行くんやってな」
「……あと少しなんですって」
放課後、暗くなる前に音楽室に2人を迎えに行った。海未と真姫は疲れた顔を見せていて、ほとんど無言で先に歩き出してしまう。今日中に仕上がりそうだからと、真姫の家で夜も作業に取り掛かりたいらしい。
「ええの?」
「あまり無理をして欲しくないけれど、私たちは見守ってあげるしかできないものね」
「………そやな」
「終わったら、電話をするって海未が言っていたわ」
1人で家に帰すのも、どうだろうか。迎えに行ってあげた方がいいのだろうか。真姫の家だから大人がちゃんと送ってくれるはずだけど。
「えりち、自分がメンドクサイ性格やって……ほんまに自覚してるん?」
「………メンドクサイっていうことはわかってる」
「ほんならいいんやけどな。なんか、うちが余計なこと言ったせいで、朝のえりちと今のえりちが全然違うわ」

それは、取りあえず気が付かないようにしていた感情を
希が引きずって表に出させたせい

希のせいじゃないんだけど。

「そうかしら?」
「何や、海未ちゃんと手を繋いだりしてたんも、あれは恋心じゃないん?」
「………見られてた?」
「よく手を繋いだり、髪撫でたりしてたやん」
「………好きっていう感情の、違う部分っていうか、そう言う感情っていうか」
誤魔化していたいって言うか、自覚は本当になかった。
いや、たぶん、自覚することを避けていた。
「つまり、スケベ心を隠して海未ちゃんの手を繋いでいたんやな」
「そうじゃないわよ!」
「なんや、ムキになって。メンドクサイ性格やな」


……
………

「希………どうしたらいい……」
「うちに聞かれても。カードに聞いてみる?」

未来の可能性ゼロなんて出たら、絵里は明日から海未の顔を見ることができなくなってしまう。かといって、何かイイ方向なんて出ても、それはそれで恥ずかしくて顔を見られない。

「今は、やめておこうかしら」
「まぁ、今まで通り海未ちゃんのことを可愛がってあげて、よしよしってしてあげていたらいいんちゃうかな?」
「…………そうよね」
「好きって言ったところで、今の海未ちゃんは無理や。まず“恋”が何かを教えてあげな。“ありがとうございます、私も好きですよ“で終わりや」

それはもう、何度か経験済みだったから絵里はため息を吐くしかなかった。“好き”の感情の中に、恋と言う種類があるということを、海未はまったくわからないに違いない。
そして、絵里はそれを説明して納得させる技量なんて持っていない。
考えながら、絵里は海未に“恋と言う好き”の感情を持っているんだと、強く思い知らされた。
「何1人で、赤くなってるん。まぁ、考えていることはわかるけど」
「別に……。希、絶対誰にも…」
「いわへんよ。それに海未ちゃんに気付かれる心配も当分ないやろうし」
「……そうね」
「いいんか、悪いんか」
「そう、ね」

半年もすれば、絵里は卒業しなければいけなくて、出来ればその前に何か、海未と何かっていう気持ちがむくむくと沸き立つのに、相手があの子では、片想いを5年続けても、何も変わりはしないだろう。
「ええやん、えりち。青春や」
「………そうね。ひとまず、そう思うことにするわ」



青春なら、もっと甘酸っぱくてもいいのに
甘くはないし、酸っぱいほどのことも何もない
海未にまず、“恋”という感情について
一般的な知識を持ってもらわないと


何かまた、間違えた方向に行かないだろうか

……取りあえず、2人でパフェとか…いや、それはいきなりハードだから、学校のランチから始めてみるとか。あぁ、でも海未は穂乃果とことりといつも一緒にいる。


「えりち……ホンマに重症やな」
「…………私が重症っていうより、海未が」
海未があんな子だから。
「えりちや」
「………そうね」

甘くならないし
酸っぱくもないし


この果実を“恋”とさせるために
何をすればいいんだろう




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Date:2015/06/01
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