【緋彩の瞳】 カサブランカ

緋彩の瞳

火野レイのお題

カサブランカ

「はい、これ」
「………なんで?」
もう初夏と言える季節。レイの誕生日はもうとっくに終わっている。
梅雨空は、30分前の青天さえ忘れさせるような重たい雲を抱え込んでいる。
「えっと、お花屋さんの前を通ったら入荷しましたって書いていたから」
差し出されたのは、一輪のカサブランカ。可愛くリボンを巻き付けて、プレゼント用になっている。
「………何か、私の機嫌を取る理由があるの?」
「何よ、笑顔で受け取るくらいのサービスしてよね」
サービスって何よ。
声には出さないけれど、受け取りながら視線で訴えてみた。
「何か、私にお願いごととか?」
「お願い?うーん、恋人の好きな花をたまたま見つけたから買ったって言うだけよ」

恋人、だなんて。

認識を持っていなかったわけじゃないけれど、そう言う単語を使われると、言われてみればそうなのだと妙にこそばゆい想いになる。
「あ。照れた?」
「別に」
「レイちゃん、白が似合うよね。赤い薔薇よりも、白いカサブランカ」
「……そう?」
「うん」
本当は、何かお願いごととか謝ることがあるんじゃないのかしら。
なんて思いながらも、何も言いそうにない美奈。
隣に並んで、同じ歩幅で神社へ向かって歩いていく。

ジメジメとする空気がこの街を満たしても、レイを包む空気はいつでも
清らかで優しい

「………美奈は赤が似合うと思うわ」
「でしょ?だって、赤、好きなんだもの」
「でも、あんたに赤い薔薇は似合わない。花なんて似合わない」
「え~、何それ。レイちゃん、花くれたことないよね」
「欲しいなんて思ってないでしょ」
「うん。だって大好きな恋人が傍にいるんだもの。私はそれでいい」
人通りの少ない境内を潜り抜けると、当たり前のように腕を掴んで引っ張ってくる。
玄関へ入る前に、美奈はくるっと後ろを向いて、曇り空を見上げた。


「美奈?」
「私、赤が大好きだし!!赤、すっごく似合うもんね!!」

恥ずかしいくらいの大声で叫ぶ恋人は
曇り空を清らかにさせてくれる


「………そうね」

己惚れても許されるのならば

「でしょ?」

恋人の傍に寄り添っていたい

「馬鹿、ほら、早く部屋に入って」
「それは誘ってるの?」
「どうかしら」
「あ、今日はレイちゃん優しい。カサブランカの効果?」
「私はいつでも優しいわよ」
「何、嘘吐いてんのよ」


レイの恋人は赤が大好きで、とてもよく似合う





2015.6.18 お祝いday
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Date:2015/06/18
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