【緋彩の瞳】 恋の果実 ⑨

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

恋の果実 ⑨

「キャ~!海未先輩だわ!」
海未派と絵里派
1年は1クラスしかなくて、その中にいる女子はおおよそ、2つのグループに分かれている。


凛々しく礼儀正しい大和撫子、園田海未
スタイル抜群の青い目の生徒会長、絢瀬絵里

海未にもエリーにも、どっち派っていうわけでもないのは、μ’sのメンバーである3人組くらいで、羨ましがられたり嫉妬されたり。メンドウだからクラスの子とは適度にしか会話しないことにしている。

「真姫」
「………何、私?」
てっきり、振った弓道部の子に用事かしらと思っていたら、何か真剣な眼差しが真っ直ぐに真姫を捉えてきた。
「よろしいですか?」
「いや、いいもなにも、どうせ今から練習でしょ?」
今から部室に行こうと思っていたところだから、海未がわざわざ1年の教室に来るなんて、何があったのだろうか。

なんて

あの、昼休みに何かあったのは間違いないって顔に描いている。

真剣とはいうものの、困っているという様子が見て取れるから。

「凛、私ちょっと遅れるってみんなに伝えて」
「うん、伝えとくにゃ~!」

何やらざわざわしている教室の女子たちの視線が痛いようなかゆいような、いや、部活のメンバーなんだから、なんて心の中で言い訳を選びながら、歩き始める海未の背中を追いかけた。
「海未?何よ、何の用事なの?」
「お願いごとがあります」
「私に?」
「……色々と考えた結果、真姫しかいませんでした」
何その、消去法的なものの言い方。言ってやりたかったけれど、背中から発せられる何かマイナスのようなオーラ。お昼にエリーと会えたのは間違いないだろうし、そこで何かあったということも何となく想像が付いて、にこちゃんや希がニヤニヤしているのを見ているだけだった。

「図書館?一体何なの?」
「選んでください」
「は?何を?」
静かな図書館には、2年生と思われる図書委員の子が1人。放課後が始まったばかりで、それ以外に人はみあたらなかった。コソコソと海未に腕をひっぱられて、委員の子の視線から逃げるように本棚に隠れて、焦った表情。
「それはその、つまり、こ、こ………ここっこ、ここ、恋とか愛の指南書と言うか、その、人の恋心がわかるような、そういうようなものです」


……何、この先輩。


「はぁ?指南書?何よ、それ」
真姫はエリーと海未の間に何があったのかなんて、まったく知らないけれど、にこちゃんや希が話をしていることと、エリーのあからさまな態度で、大体の状況はわかっているつもり。
残念ながら、エリーの気持ちを海未はわかっていないであろう、ということも。
だけど、こんなことを大真面目に真っ赤な顔して真姫に頼んできたということは、少なからず、エリーに好かれているとわかったのだろうか。

それとも、あの休み時間に好きだと告白をされたとか。

でも、そんな衝撃的なことがあったら、凛々しい園田海未はおかしな方向へと向かい、倒れてしまいかねないだろう。あるいは、まったくもって恋愛での好きが伝わらず、エリーが倒れてしまうか。エリーが倒れたという情報はどこからも入っていないから、どちらもないと考えたとして、じゃぁ、この状況は一体どういうことなのだろうか。

「ですから、その……。人が人に恋をするという感情を理解したいんです」
「なんで?」
「………実は絵里が………いえ、言えません」
いや、もう十分というか。エリーのことだって言うことはわかっていて、知りたいのはその先。
「言えないことって言われても、言ってくれないと、選びようがないじゃない」
もっともらしいことを言ってみると、海未は本棚の影に隠れていても、よくよく見える真っ赤な顔を両手で覆って、深呼吸している。
「おそらく…………絵里が、その、誰かに……恋を」
「誰よ」


さぁ、本人はわかっているのかどうか



「私は、今まで何も気が付かなかったのですが、おそらくμ’sのメンバーだろうと。私が知っている人物で、絵里の知り合いとなると、μ’sしか考えられません」
「はぁ?いや、もっと具体的に。海未はわかってるんじゃないの?」
「わ、わかっているっていうか、その、そうらしいということだけはわかりました」

いろいろ惜しいのに
海未はどうやら、それが誰なのかを知りたいというよりも、人が人を好きになる感情について理解を深めて、友人としてアドヴァイスや応援をしてあげたい、ということらしい。

間違えてる
何かが間違えてる

「放っておいたらいいのに」
海未とエリーの場合は、放っておいてもエリーが自爆するに違いない。ってにこちゃんも希も言ってる。
「そうはいきません。私が、恋と言うものに否定的な態度を取ったことで、絵里を傷つけたようなのです。傷つけるつもりはなかったのですが、そう言う言葉が人を傷つけると言うことを知らなかったということは、反省すべきことです。違いますか?」
「いや、状況がわからないから何とも言えないわよ」
「それは、その、色々です。とにかく、指南書を選んでください」
“色々”は海未が1年生から告白されたのを、エリーが盗み見たくだりなんでしょうけれどね。
メンドクサイんだから、まったく。
「………ロミジュリとか?」
「シェイクスピアの作品ですか」
「高校の図書館に、恋愛のHow to本なんて置いてないわよ」
それに巷に溢れているHow to本は、もっと大人の女性をターゲットにしているだろうし、海未がそんなものを読んだら、気絶するんじゃないかと思う。
「そうですね……では、いくつか恋愛がメインの本を選んでください」

間違えてる
何か、間違えてる

腕を掴んで放してくれないから、何でもいいから本さえ選んだら、取りあえずこの場は丸く収まるだろうと思った真姫は、ロミオとジュリエットと最近なんたら賞を取ったとかの、殺人が絡んだ男女の恋愛模様を描いた小説や昔の有名どころの本を選んで、海未に持たせたのだった。






「……最近、えりちよりも海未ちゃんの方も様子がおかしいと思わへん?」
あれから3日経った。いつもは誰よりも早く朝練の集合場所に来ている海未は、ここのところ最後に現れて、何かキリリとした表情が消えてしまっている。エリーはエリーで無意味なカラ元気が続いていて、ちょっと前まで開口一番「海未!おはよう!」だったのが、「みんな、おはよう」に変ったまま、いつもみたいに海未の横にいたくていたくて仕方ありません!みたいな、ポニーテールの尻尾の靡いた様子もなくて。
「エリーもでしょう?何なのよ、あの二人。あれから、何かよくない方向に進んだんじゃないの?」
「えりちのあれは、そのうち自爆するからいいんよ。ただ、えりちのせいで海未ちゃんが可愛そうな目に合うんもなぁ。真姫ちゃん、何か知ってる?」
いつもはキビキビと準備運動をして、凛やエリーの運動レベルについて行けるはずの海未は、のろのろと鞄を下ろして、何やら目の下にクマを作っている。眠そうな顔なんて、本当に珍しい。
「……あぁ、もしかして、恋愛小説」
「ほぇ?海未ちゃんが?」
「指南書を教えろって言われて、とりあえずロミジュリと“こころ”とかあと何冊かの本を適当に選んで押し付けたのよ」
「海未ちゃんが、恋愛についてお勉強を始めたということなんや。えりちと一体、何を話ししてやる気になったんやろ?」
真姫は、海未が何を考えてそのような行動に出たのか希に話した。それはそれはおかしいと言わんばかりに笑いをこらえながらも、止めるに止められなかった真姫も、すっかり協力的になっちゃって、と、からかってくる。
「私は関わらないし!」
「あかんて、もう手遅れや。海未ちゃんはきっと、本を読んで益々、恋って何ぞやという迷路に迷い込んでしもうたんや。もう、夜も寝られへんくらい」
フラフラになりながら階段を駆け上り始める海未の背中は、何か本当に大丈夫かといいたくなる。エリーはエリーでわかっているくせに、心配そうな顔をしながらも、ものすごいスピードでダッシュしていくし。


何か間違えてる


「海未、大丈夫?顔色悪いんだけど」
「………真姫」
「どうしたのよ?具合悪いんなら休んだら?」
「いえ……大丈夫です」
「そうは見えないんだけど」
3本目のダッシュで、海未はほとんど歩いているような感じだった。10秒遅れでスタートした真姫があっさり追い越せるくらいだ。声を掛けたくてうずうずしているエリーにも正直イラッとしているんだけれど、なかなか一歩が出せないようなので、見るに見かねた。
「………真姫が指定した本は、なかなか読みごたえがありました。恋という意味で人を好きになると、好きな人を殺したり、自ら命を絶ったり、それに恋敵を殺したり……。殺人の罪を被ったり、私、絵里がそんなことをするのではないかと思うと、心配で心配で……」


やっぱり


何かが間違えていたみたいだ

フィクションだからって言ってもわからないだろうし
あぁ、何で殺人ものや自殺するものを選んでしまったのだろうかと、後悔しても遅い

「いや、海未、あり得ないことが起こっているから本になるんだって」
「ですが!真姫が教えてくれた本は、一般的な、こ、こ、恋と言うものがどういうものかと言うことが描かれてあるはずなのでしょう?」
「え?えぇ?!なんか、ちょっと………いや、人を殺したり、自殺したり、家族を捨てたりとか、普通はしないから!第一、肝心なところはそこじゃないし」

ロミオを想って、バルコニーで名前を呟いたり
会いたくて会いたくて仕方なくて泣いたり
お互いに想い合う幸せとか
純粋すぎる愛とか
色々感じることがあるはずなんだけど

肝心な部分をスルーしてる


「真姫は、恋とはそういうものだと言う指南のための本を選んだのでしょう?」
「いや、違う、その、間違えてる。間違えたわ。いや、ある意味正しいけれど、いや、ちょっと、本で学ぶって言うところからして間違えたと思うから」
クマができるくらいということは、あの5、、6冊の本を3日で制覇したあげく、衝撃過ぎて眠れなかったと言うことなのかもしれない。
「………あ、あの、2人とも、どうしたの?海未、か、顔色悪いんだけど。体調悪いんじゃない?」
ぎこちない笑みを浮かべながら、ものすごくタイミングを計ってましたと言わんばかりに、エリーが声をかけてきた。エリーのせいでこうなってるのに。
「絵里、自殺はダメですよ」
「…………は?」
「それに、好きな人を殺すのも、恋敵を殺すことも、犯罪です!!ダメです!μ’sのメンバーの中でそんなことがあってはいけません!いえ、人としてダメなんです!」

エリーの両腕をがっしり捕まえた海未は、具合悪そうな顔色のくせに真顔でそんなことを言うから。

「え?!え、絵里ちゃんが人を殺したにゃ?!」
「いや、待ってよ!自殺したいとか思ってるの?!」
「何があったの?!」
「海未ちゃん~~!絵里ちゃん~!」
何も知らないであろう4人が、海未のセリフだけを聞いて驚いている。
もちろん、言われたエリーもあっけにとられて、口が開いたままで。
「う、海未ちゃん?どうしたん?落ち着こう。な?」
間違えた方向だけなら笑えるけれど、他のメンバーまでも巻き込みかねない事態に陥り、希が割って入った。
「お願いですから、絵里。殺したり死んだりしないでください!お願いします!!!絵里!」
「いや……言ってることが…わかんないんだけど……」
面食らったエリーは、海未に揺さぶられるだけしかできないみたい。
「まぁまぁ、海未ちゃん。小説読み過ぎたんや。もぅ、フラフラやん?ちょっと休もうか~」
海未の頭を撫でて、希がエリーを掴んだままの海未の手を取ろうとすると。

「わわぁぁ~~!」
「海未!」
「きゃ~~~!!!」


海未は希とエリーに挟まれたまま、気を失ったように倒れ込んでしまった。

たぶん、寝不足で低血圧状態のまま、無理にダッシュを繰り返してしまったせいだろう。
あと、そういう状況で興奮しすぎたから。


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Date:2015/06/26
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