【緋彩の瞳】 恋の果実 ⑰

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

恋の果実 ⑰

「何なのよ!もぅ」
イベントは無事に終わったし、成功もした。スクールアイドルとしての知名度も上がって来て、毎日みんな、一生懸命練習に励んでいる。
「何や、真姫ちゃん。何、怒ってるん?」
「希!いい加減に、あれを何とかして欲しいんだけど」
イベントが終わってから1週間経った。
エリーと海未はずっと、ぎくしゃくぎくしゃくしていて、はっきり言って気持ち悪い。
傍から見ていてすごく気持ち悪い。
エリーが無理やり海未に笑顔を見せて、それを海未が何か苦しそうに見ていて、そのくせお互いを無視しているわけでもなくて、むしろものすごく意識しまくっていて、会話が挙動不審で。周りは、何となくその気持ち悪いさを分かっているのに、何も言わない。
穂乃果なんて気づいてさえない。まぁ、彼女はその方がいいんだろうけれど。
「せやけどな………えりちのあれは、振られたっぽいから。傷に辛子塗りたくるのもどうかと思うし、海未ちゃんは海未ちゃんで、なんやえりちに悪いと思ってるんと違うんかな。まぁ、もう少し時間が経てば、何とかなるって」

何それ、おかしくない?

なんでそうなるの。
エリーが海未を好きなのはあれだけど、海未はエリーを好きじゃないわけ?
って言うか、気を遣っているって言うよりも、エリーに気を遣われて辛そうにしか見えないんだけど。

「本当に海未はエリーを振ったの?」
「あの時な、お昼休み終わった後に、また泣きながら戻って来てん。なんや、えりちには笑っていて欲しいって言われてんて。海未ちゃんなりのお断りの表現やって」
「相手はあの、園田海未なのよ?はっきり確認したの?」
どうせ、お互いに誤解したまま、噛合わずに何となくはっきりさせていないだけじゃないのだろうか。

あの海未の様子は、どう見てもエリーの態度に困っているのに。

「泣いて戻ってきて、えりちは、もうこれでいいって言うんよ。仲間として、海未ちゃんと仲良く出来たら、それでいいって。うちもまぁ、また海未ちゃんのことやから、ちょっと恋愛事は的をよう当てん子やでって言うてんけど。傷が浅いうちに終わらせたいんかなぁ」


何それ、意味わかんない。


「……何でよ。海未はエリーが好きじゃないの?」
「そうなんかなぁ、そうやったんかなぁ」
「希は何を見ていたのよ!」
「いや、うちはえりちが海未ちゃん追いかけてるところばっかり見てたし。まぁ、海未ちゃんもな、そうなんちゃうかなっていうのは思っていたんやけど」
あてにならない人なんだから。すっとぼけているだけかもしれないけれど。
「でも、いいの?真姫ちゃん、巻き込まれたくなかったんやないん?」
「べ、別に!イライラするのよ、こういうのは!」
本当にこのμ’sは学年が上がるほど、問題のある人が多すぎる。
「ことり!」
「な、何~~?なんか、怖い顔~」
「どういうことよ。何がどうなってるって言うのよ、あの2人は」
パート練習で、海未とエリー、穂乃果が3人でステップの確認をしている。日本語が通じない人同士みたいな、ものすごくぎくしゃくしまくっている風景が気持ち悪い。
ことりと希と3人パートの真姫には関係ないかもしれないけれど、本当に気持ち悪い。
「あの2人?どの2人?」
「とぼけないでよ~~」
「へへ~~。うーん、取りあえず見守ろうかな、みたいな?」
「みたいな?じゃないでしょ!海未はエリーが好きなんじゃないの?ことりは知らないの?」
お人形みたいに首を傾げて微笑んだって、それが真姫に何の効果もないって言うことくらいわかってるくせに。それでもことりは笑ってるだけ。
「ことりってば、どうなのよ」
「真姫ちゃんも知ってたんだ」
「……見てたらわかるわよ。そうじゃなくて!」
「う~ん、じゃぁ、真姫ちゃんが何とかする?」
「ぅええ?え?私が?」
なぜ、そうなるの。
「うん!私はもう少しだけ見守っていようかなって思ってたんだ。海未ちゃん、毎日、どうしたらいいんだろうって呟いてるけれど、自分で何とかしたらって言うしか、私にはできないの。絵里ちゃんは振られたと思っているみたいだし、でも海未ちゃんはきっと、そんなつもりもないんだろうけれど……海未ちゃんが悪いんだと思う。でも、ほら、それも含めて海未ちゃんなんだよ」
だから、ことりは今は何もするつもりはないけれど、真姫がアドヴァイスをするのは自由、だなんて言って来て。

なんでそんな、めんどくさいことしなきゃいけないの?





「海未!」
放課後、後輩に大人気の凛々しい園田海未が、どんよりとした重たい足取りで部室へ向かっている後姿を見つけた。
「あ……真姫。ご機嫌よう」
「ご機嫌?よくないわよ!ちょっと来て」
「え?」
「音楽室!歌詞、出来てるの?」
「……あ」
曲が出来上がっているのに、歌詞が付いていないでいつまでも待ち続けているものがある。ドタバタが始まる前に渡したデモテープの存在を、海未は忘れているに違いなかった。
「何よ、忘れていたの?」
「すみません、今まで忘れていました」
「ちょっと、2週間経ってるのに?」
正直、それは仕方がないんだろうなって思っていて、つついたりするつもりもなかったけれど、このままだと作詞家が機能してくれそうにない。それに、イライラが積もっていくばかり。
「すみません」
「もう、さっさと仕上げて、振付して、衣装も考えないとダメでしょ?今が勝負だってわかってんの?ほら!」
「え?」
「作らないとダメでしょ?こっち!」
海未の手を取ると、引きずるように音楽室へと連れて行こうとした。
「あ、真姫ちゃん、海未ちゃん。どこいくん?」
部室へと向かって歩いてきていた希とニコちゃんとばったり会う。エリーはいなかった。
「音楽室!海未に大事な話があるの!今日はレッスン行かないから」
「え?真姫は何、怒ってんの?」
「怒ってない!」
ニコちゃんがきょとんとしているけれど、真姫は海未の手をずっと引っ張ったまま、音楽室に軟禁してやった。



「ま、真姫……」
「………歌詞ノートは鞄の中にあるの?」
「あ、はい」
「一言くらいは書いてよ。どうしてもだめなら、アイディアくらい出すから」
誰もいない音楽室。放課後のこの場所が好き。いつも一人でピアノを弾いていた。たまにダンスレッスンに出ないで、放課後に作曲作業に取り掛かることもあるけれど、その時は大体海未が付き合ってくれている。よく2人でいる。
実は、エリーよりも真姫の方が海未と2人きりになることが多いんじゃないかって思うことがある。ことりや穂乃果は別として、海未は真姫の横に座って言葉選びをしていることが多い。

恥ずかしくなるくらい純粋で清らかな言葉が好きで
そう言う意味ではロマンチストなんだろうけれど
恋も愛も1mmも入らない、小学生が清々しく歌えそうなくらいの歌詞

最初は、意図的にそういう歌詞にしているんだろうって思っていた
3,4曲の歌詞を書いてもらった時点で、ラブソングを書けない人なのだろうと知った。
それを指摘しようかと思ったことがあったけれど、書いてくれる歌詞に不満があるなんてもちろんなくて、仲間のみんなが清々しく歌い上げるその顔を見るのも好きで、純粋な想いも心地いいって思っていた。
「海未、最近、変なんだけど」
「……そうですよね。えっと、気を付けます」
「何よ、自覚あるわけ?」
「一応。ですが、その、すみません、歌詞を忘れていたことの言い訳じゃないんです」

真姫はこれ見よがしにため息をついて、ピアノの前に腰を下ろす。
「こっち来て」
「……はい」
右隣に座った海未の亜麻色の瞳は、恋情っていう病にかかってしまっていて。
「ちょっと、私にまで、その落ち込んだ顔を見せなくてもいいでしょ?」
「そんなつもりは」
「エリーのことなんでしょ?」
そんな、お化け見たような驚き方しなくてもいいのに。
ばれていないって本気で思っていたのなら、ものすごくおめでたい人。
「……ま、ま、真姫、だ、誰に?誰に聞いたのですか?」
「いや、誰からも聞いてないけれど、顔に描いてるし、エリーの顔にも描いてる」
指ならしに、“愛してるばんざーい!”を弾いてみる。頬を赤くして困り果てた海未の横顔は可愛い。

せっかくこんなかわいい顔ができるのに

「歌ってみたら?すっきりするかも」
前奏を弾いて、真姫は歌を歌い始めた。1フレーズ遅れて、海未も重ねてくる。踊れる曲じゃないから、μ’sのメンバーで歌ったことはない。時々、海未と2人で発声練習の代わりに歌っている。海未が作った歌詞じゃないし、真姫がずっと前に作っていた曲だけど、海未は好きだって言ってくれる。
恋愛を意識して書いたつもりはないし、愛してるっていう言葉や大好きっていう言葉も、特定の誰かを思い描いたわけじゃない。でも、今、海未はこの言葉をどんな風に感じているのだろうか。


「すっきりした?」
「はい。少し」
「……ほんとに?」
ヤケって思うくらい、途中から大声になった海未は、エリーのことを考えているに違いなくて、いつもの声とは何かが違うようで。
「……不思議ですね。歌で大好きだっていうことは、わりと言いやすいんですけれど」
「何よ、エリーに言えないってわけ?それでそんなに落ち込んでるの?」
「………よく、わからないのです」
「わからないって何よ!それじゃぁ、こっちはもっとわかんないでしょ?ちゃんと説明してよね」
「な、なぜそんなに真姫が怒るのですか?」
イライラする。見ていて、イライラするのよ!
って、言いそうになるのを堪えた。
「……仲間、でしょ。ぎくしゃくしていて、楽しそうじゃないの!せっかく私が作った曲なのに、2人とも楽しそうに踊ってくれないんだもの」
「……すみません」
「だから!もう、謝ってばかりいないで説明しなさいよね!」
手を鍵盤に強く押し当てると、不穏な和音が教室に響いた。
びくっと身体を震わせた海未がたじろいでいる。
「ほら、説明して!」
「わ、わかりました。えっと……何を?」
「だから、エリーと何があったのよ?っていうか、エリーに何したのよ?」
リボンをぎゅっと掴んで、真っ赤になっていく頬。
何、そんな可愛い顔をして。
腹立たしい。
「……海未ってば」
「その………絵里に好きだと言っていただきました」
「で?それはわかってるけれど?」
「し、知っているのですか?!」
「知ってるわよ、エリー見てたらわかるわよ!それよりもその後、海未はなぜエリーを振ったのかを聞いてるの!」

これだから、園田海未っていう人は。
真っ赤な顔をして焦ったって、今更何が恥ずかしいのかわからない。
全部わかってるって言ってやりたい。
エリーがあからさまに海未のこと好きだったのに、気が付かなかったなんて馬鹿だって言ってやりたくなる。

「………いえ、私は別に、そのことについては何も。絵里からは、す、好きだと言っていただけましたが、お付き合いをして欲しいということは、言っていませんでした」

何それ、意味わかんない
どっちも最低

「……ちょっと待ってよ。海未はエリーになんて言ったのよ?」
「えっと、絵里には傍で笑っていて欲しい、と言うようなことを」
「はぁ?」
「え?なぜ、そんな怒った顔をするのです?」
ダメなのですか?ってきょとんとしているけれど、ちょっと恋愛経験がないなんて言葉で濁すレベルじゃないと思う。
「それってお断りって言う意味で言ったの?」
「お断り?何をお断りするのです?」
「だから、好かれても困るから、今までのように友達でいましょうっていう意味なのかってこと」
真姫の問いかけた言葉の意味をしっかりと理解するように、瞳が天を見つめている。
「…………困るだなんて、そんな」
「じゃぁ、エリーの好きって言う気持ちに応えたいって言う意味だとでも?」
キョロキョロ動く瞳、これはきっと、答えがないんだろうなって思ってしまう。
「えっと……応えるというのはどういう意味でしょうか?」

ほら、やっぱり。

「つまり、付き合うっていうことよ。なんでわかんないのよ」
だから、お化けを見たような驚き方をしないでほしいんだけど。
「お、お付き合い?こ、交際をするということですか?」
「……そうよ。放課後に手を繋いで帰ったり、一緒にクレープ食べに行ったり、キスしたりそう言うことをしたいかどうかって聞いてるのよ!」
ぎゅっとリボンを掴んでいた両手が、キャ~って言わんばかりに顔を覆ってしまって。
なんでそんな可愛い仕草ができる癖に、絵里とむっつりしあっていられるんだろう。
「ま、ま、ま、ま、待ってください。絵里はそのようなことを、私に求めたりしていませんでしたっ」
「いや、好きっていうのは、そう言うことがしたいって言う意味なの。エリーが海未を好きっていうのは、海未と手を繋いでデートしたり、キスしたりしたいっていう意味なの。普通はそうなの。海未がわかっていなかっただけ!」

やっぱり、いまだにわかってなかったみたい。
ことりも希も、何でそんな大事なことを教えてあげないのだろう。

「……わ、私は、ことりにアドヴァイスをされて、その、自分の気持ちを素直に伝えようと思って、絵里に、傍で笑っていて欲しいと、その、す、す、好きだと伝えてしまいましたが……」
「大丈夫、エリーは海未と違って馬鹿じゃないから、海未の使う“好き”がそう言う意味じゃないってわかってるし、わかってるから落ち込んでんのよ。あっちもそう言う意味では、馬鹿っていうか、相手が海未なんだからもう少し頭使わないとダメなのに」

あっちといい
こっちといい

「では、その、なぜ、絵里は様子がおかしいのでしょうか?」
「だから、振られたからでしょう?お断りするようなことを海未が言ったから」
「い、言ったつもりはありません!」
「海未はそうじゃなくても、エリーはそう受け取って落ち込んでるんでしょ?」
「そ、そうなのですか?!」
「そうなのですか、じゃないってば、もう!メンドクサイんだから~!ていうか、海未はどうしたいわけよ?エリーと付き合いたいって思わないの?好きって思わないの?好きって思っていれば満足なわけ?あんな風にぎこちなくしているエリーの傍にいたいわけ?両想いなんでしょ?」
指の間から覗かれた、その瞳がウルウルと真姫を見つめてくる。
真姫が答えを持っているとでも思っているのだろうか。
「海未は、エリーのことが好きなんでしょ?その、傍で笑ってとか、そういう仲間っていうものじゃなくて、もっともっと、エリーと一緒にいたいとか、2人きりになりたいとか、思わないの?エリーは海未が好きだって言ってんのよ?恋をしているのよ?」
「そ、それは、その、わかってます」
本当にわかってるのだろうか。
「じゃぁ、どうして付き合わないの?付き合いたくないのなら、その理由は?」
「こ、怖いです真姫!椅子から落ちてしまいます!」
だから、お化けじゃにのに。
ズンズンと海未を追い詰めていると、逃げるように椅子からお尻をずらしていく。
「海未、エリーと付き合いたくないの?」
「わ、わ、わかりません!」
「海未のことでしょ?エリーのこと、好き?」
「そ、それは……」
「どうなのよ、どうしたいのよ!はっきり言いなさいよ!」




エリー

教室の外に、エリーの姿がチラリと見えた。
様子を見に来たんだ。いつもエリーは、真姫が海未と2人で練習をしていると、ソワソワと外から眺めていた。不自然なくせに、通りかかったみたいな風を装ったりして。

「わ、私は、絵里が好きです!」

聞こえてるんじゃないかな
……好都合だけど



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Date:2015/07/08
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