【緋彩の瞳】 恋の果実 END

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

恋の果実 END

……
…………


「絵里」
「はっ!…ご、ごめん」
手のひらに感じる海未の体温。
暖かくて、久しぶりに触れて、こんな状況なのにドキドキ心臓がうるさくて。

心地よくて。

「………絵里………えっと…その…真姫が、教えてくださったのですが…私は絵里に誤解を、与えていたみたいです」
「ごめんね、私が勝手に……勝手にそう思いこんだの」
「いえ!すみません、説明不足でした!」
いきなり正座したかと思えば、海未は手をついて頭を下げるから。
「なっ!ちょっと、海未、そんな風に謝らないでよ。誤解をした私が悪かったわ」
「ですが、その…絵里を悲しませてしまったのは、私が、私がきちんとお応えしなかったせいです」


”私は絵里が好きです!“

さっきの言葉がよみがえってくる。
「………ちゃんと、言えばよかったのね。ごめんなさい。やっぱり、私が悪いのよ。取り乱して馬鹿丸出しで好きって言い放って。どうしたいとかちゃんと、海未に言わなかったから」
「いえ、その…………あの……」
完全に振られたんだと思っていた。
でも、優しい海未は傍にいて笑っていてほしいと、励ましてくれさえした。
だから、その気持ちには応えるべきだと。
そう思って頑張ってみたけれど、顔を見ることも、声を聞くことも、何をしても、やっぱり簡単に割り切って、仲間として頑張ろうっていう気持ちは止められなくて、好きと言う感情を押し殺してくれなくて。
あからさまに距離を取ることもしたくないしできないし、それは海未をさらに傷つけるって思って。だから、1週間、絵里なりには頑張ってきたつもりだった。
希は見てみぬ振りをわざとしていた。ニコもそうだった。こっちから、毎日メソメソした話を聞かせたところで、どうしようもないことだってわかっていたから、もう自分でこの想いを何とかしないといけないっていう覚悟みたいなものはあった。
海未をずっと好きでいるのだろう、と。この学校を卒業するまで、顔を合わせる限りはずっと好きでい続けることになってしまうだろうし、それを受け入れるしかない。
振られたのは、相手が園田海未という特殊な人物だからではなく、絵里に何かが足りなかったのだと。海未に好きになってもらえるだけのものを、絵里は持っていなかったのだから、と。
1週間、自分に言い聞かせて、何とかごまかしていた。でも、希に真姫が海未と音楽室に籠って、何やら真剣に話をすると言われた時、耐えきれなかった。2人でいることが多いのは知っている。絵里はほとんど2人きりで放課後を過ごしたことがないと言うのに、真姫は頻繁に海未と2人になるから。関係がないって割り切れなくて、気が付いたら音楽室の前まで来ていた。
歌い始めて、教室に入るタイミングを逃し、漏れ聞こえてくる2人の話。

そこで、絵里は酷い勘違いをしていたらしいことを知らされた。
そして、勢い余って好きだと言ったけれど、確かに海未にどうして欲しいなんて、何一つ言っていなかったのだということも。


「もう、その土下座止めてよ」
「………はい」
おずおずと絵里の様子を伺う海未のその赤い頬は、どれくらい熱を持っているのだろう。
「え、絵里…」
ドキドキしながら両手で頬を包み込むと、大きく見開いた目が慌てて視線を逸らそうと泳ぎ始めた。
「……海未。海未が好き」

いつから、海未を意識したのだろうか。まだ、仲間になるずっと前。3人だけでガラガラの講堂で踊っていた、あの動画を見た時だったかしら。
名前と顔が一致する、その程度だった頃から、なぜか海未が気になって仕方なかった。

凛として清らかな大和撫子
あがり症で恥ずかしがりやで
何事も一生懸命で生真面目で
友達思いで優しくて、強くて
恋愛に疎くて

「私も絵里が好きです。ずっと、絵里が仲間になる前から、絵里の笑顔を見たいって。傍で、笑っていて欲しいって思っていました」
「……本当?」
彷徨っていた瞳が、意を決したように絵里を見上げる。
綺麗な綺麗な
嘘など吐けない真っ直ぐな瞳。
「すみません、あの、私は嘘が苦手なんです」
「知ってる」
「………ずっと、その、絵里は私の、傍で、笑っていてくれますか?」

振られたと思った言葉と同じなのに、今はそう思えない。
真姫があの時、海未に会う前に、海未が絵里を好きだと思うって言う言葉を、もっと真剣に考えて信じるべきだった。最初から振られるっていう考えしかなかったから。

「海未が私と手を繋いで帰ったり、デートをしてくれるって言うのなら」
「は、は、はい!喜んで!」
わかってるのかな。
ぱ~って子供みたいな笑顔になって、凄く可愛らしいんだけど。
「海未が好き」
「……は、はい!」
「付き合って欲しい」
「ど、どこまででも」
「いや……だから、交際しましょうって言ってるの。恋人になって欲しいってお願いをしているのよ」
ムードとか、もう、今更いいけれど。
お願いだから、ちゃんと理解して欲しい。
「わ、わかってますっ」
ぐっと、制服の裾を引っ張られて、しがみつくように抱きしめられた。
「………さ、流石に私でもそれくらいわかります」
「そ、そうね」

ドキドキしている心臓が、ドキドキ聞こえてくるその心臓にぶつかったみたいで

幸せで
よくわからないっていうか

何だかもう、
幸せで

この1週間、残りの学生生活は、海未への恋情を背負わないといけないんだって思っていたのが嘘みたいで

「絵里のことが好きです」
「……初めから、両想いだったの?」
「ど、どうして気が付いてくれなかったんですか」
「それは私のセリフ。っていうか、私は海未に好きって何度も言ってたわ」
「私だって、好きだとお応えしていました」
「あ~、もう、付き合ってって言っておけばよかったってこと?」
「その通りです」
「何よ、言ったところで絶対に意味が通じなかったわよ」
「……それは、まぁ、否定できません」
「ほらぁ」
「だ、だから土下座したじゃないですか!」

こんなにも傍にいて
絵里を見つめてくれる

真姫がいなきゃ、諦めのカギをきつく掛けて
好きなのに何もできないで、でも、傷つけないために笑わなきゃいけなくて。
そんな日々が続いていたに違いない。

「な、泣かないでください!どうして泣くのですか?」
「嬉しいからに決まってるでしょう、もぅ」
でも、そういうのがわからないのが、園田海未っていう子。
「え?……あの、こういう時は、えっと、どうすれば?」
素直に聞いてくるのも、園田海未って言う子で。
「もう一度、言わせて」
「え?何をです」
「海未が好きだって。大好きって。今日から海未は私の恋人だって」

抱きしめようとするより先に、勢いよくしがみついてきて

「こ、恋人…その……なんだか、照れます」
「可愛い。もぅ、海未、可愛いんだから」
「絵里だって可愛いですよ」
「なっ……やるわね」
「照れてますか?」

笑い合って、ゆっくりと立ち上がる。海未は指先でそっと涙を拭いてくれた。
「真姫に、お礼を言いに行かないといけません」
「……そうね」
「やられました、あの子に」
「私は希たちにやられたから、文句を言いに行きたいんだけど」
「そうしましょう」

自然を装って手を繋いでいたあの頃と違い、まっすぐ見つめて手を差し伸べる。

「行きましょう、海未」
「はい」
しっかりと繋がれた。
「恋人同士は、こうやって繋ぐの」
指と指を絡めるように繋ぎなおしてみる。
「は、はい!」
「次からは、こうだからね」
「はい」
「他の人とこの繫ぎ方したら、許さないから」
「えっと、はい。絵里だけにしかしません」
って言うか、絵里以外とはどんな繫ぎ方でも嫌なんだけど。ことりと穂乃果の顔が浮かんできて、彼女たちは仕方がないって思ってしまう。


「あ~~!恋人繋ぎ~~!」
「こ、ことり!」
「ずるいよ、海未ちゃん。ことりより先に恋人できるなんて」
「お!なんや、えりちはついに海未ちゃんを落としたんや!」
「面白くないわね、って言うかアイドル同士が付き合うとか、アイドルの自覚あるわけ?」

ことりと希、ニコがあっという間に2人を囲んできた。
「………真姫!」
髪をいじりながら椅子に腰を下ろして、わざと視線を外していた真姫。
海未が絵里の手を放して、彼女の背中に抱き付いた。
「真姫、ありがとうございます」
「な、何が?」
「真姫のおかげです」
「だから、何のことよ。離れてよ~」
「放しません。お礼をちゃんとさせてください」
「別に何もしてないわよ」
「いいえ、真姫が私に気づかせてくれたんです」
相変わらずだけど、真姫と海未は仲がいい。
悔しいから、絵里も真姫の背中に抱き付いてみせた。
「真姫~、ありがとう」
「エリーまで!もぅ、何よ~~!」
「お礼に、今度ハンバーガー奢ってあげる」
「要らないし」
「では、私がお弁当を作って差し上げます」
「要らないってば。希~ニコちゃん、これ何とかしてよ!気持ち悪いんだけど」

海未と視線が合う
優しい微笑み
可愛い顔をしている
だから絵里も笑って見せた

「いや、もう2人の救世主として、拝められたらいいやん。まさか真姫ちゃんが、2人のために一肌脱ぐなんて、うちらも想定外やったわ」
「そんなことしてないし!意味わかんないし!」
真姫の照れくさそうな頬を、2人で撫でまわす。

「あ~、みんな!いつまで制服でいるの!早く屋上に行こうよ~」
穂乃果がいつもの元気な声で部室の扉を開けた。その後を凛と花陽が入ってくる。
「ごめんごめん。すぐ行くわ。さて、今日も頑張りましょう!行こう、海未」
「はい。ほら、真姫も」
「いやよ、私を間に挟まないでよ!意味わかんない!」
言いながらも、本気で逃げようとしない真姫なんだから。




「海未、おはよう~~」
「絵里、おはようございます。わっ!ち、近いです、近いです!」
「ふふふ~。可愛い~」
抱き付くと、一瞬で赤くなる耳たぶ。
朝はこの海未の照れる顔を見ないと、始まらない。

「これはこれで、イライラするんだけど」
そして、真姫のふて腐れている顔と。


絵里が大切に育ててきた恋の果実は甘い

ただただ甘い




2015/7/9



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Date:2015/07/09
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