【緋彩の瞳】 Love & Peace END (R15)

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

Love & Peace END (R15)

22時ごろにレイに電話をかけてみた。
『みちるさん』
「……レイ。今日は誰か泊まりに来ているの?」
『うさぎがいたけれど、帰ったわ。美奈も帰るって』
「そう。明日、私はオフなのだけど」
レイも学校がお昼までで、何もなければ会いたい。
『そう』
「会える?」
『大丈夫よ。どこか行く?暑いから、涼しい場所がいいんだけど』

家に来て

「行きたいところはあるの?」
『うーん……』
「うちでご飯食べる?」
『そうね。じゃぁ、学校が終わったら行くわね』
「えぇ」
『お休みなさい』
「お休み、レイ」
嫌そうな声じゃなくて、とても元気そうで
ついでに言えば、
みちるがレイを恋しいって思っていることが
伝わっているような気もしない

「……レイの馬鹿」

レイは今日も、スヤスヤと寝息を立てて1人で寝ているのだろうか
眠れぬ夜を過ごすみちるの気持ちなんて、知りもしないで







「お帰りなさい」
「ただいま、みちるさん」
梅雨もそろそろ終わる。湿気も雨もレイには天敵だけど、夏の暑さも得意ではない。真夏に大雨が降ったりすると、レイは機嫌を損ねてしまう。
「雨、凄いわね」
「そうね。でも、これが終われば日差しがきつい日が続くのよね。……嫌な季節」
傘立てに傘を置いて、湿り気のあるローファーを脱ぐ。髪をアップにしているのは珍しいけれど、首筋を伝う汗が絡みつくのが嫌なのだろう。
「シャワー浴びる?」
「うん、でもお腹空いたから先に食べてもいい?おいしそうな匂いがする」
「わかったわ」
食欲が落ちていないようでよかった。クーラーを効かせたダイニング。向かい合って腰を下ろして、おいしそうにご飯を食べる、その顔は幸せそうに見える。
「昨日、みんなと何をして遊んだの?」
「夏休みになったら、どこ行くっていう話をしていたのよ」
「旅行?」
「亜美ちゃんは予備校があるから、長い間は無理だけど、2泊とかの旅行でも行こうか、なんてね」
「そうなの」
レイと旅行って行ったことがあるかしら、なんて考えるまでもなく、“ない”
たまにはのんびりしましょうって、ホテルに泊まったことはある。旅行なんてする心の余裕なんてなかった。
「ここ最近は、みんなでどこかに行く暇もなかったから。やっとゆっくりできるの。みちるさん、日程が合えば来る?」
「いいえ、せっかくだもの、5人で行きなさい」
「そう?それもそうね。美奈だって、せつなさんを呼ぶことは絶対ないだろうし」
おそばを食べながら、レイはいくつか候補地を上げて、楽しそうに話を聞かせてくれた。
命を削り、死の淵に立っていた頃に見せていた、涼しげな目つきのそれではなくて。

幸せそうで、楽しそうで。

やりたいことがたくさんあった、それができなかった時間を取り戻したいのかしら、と思う。みちるがレイと知り合うよりも前に、ずっと仲良くやってきた、背中を預けてきた仲間たちと、平和を噛みしめる日々に気を取られているだけなのかしら、と。
そう思わなきゃ、寂しくなってしまう。



「シャワー浴びてくる」
「あ、私も。お風呂、沸かしているのよ」
食べ終わると、レイは制服のリボンを解きながら廊下へ行こうとした。みちるは食器洗い機に急いでお皿を放り込み、慌てて後を追いかける。
「沸かしてくれていたの?」
「えぇ」
「ありがと」
湿り気を含む制服を脱いで、綺麗な素肌が見える。丁寧に身体を洗い、汗を流す。レイより先にすべてを終わらせて、その腕を掴んだ。
「………ねぇ、レイ」
「何?」
「………」

ただ、言えばいいだけなのに。

「みちるさん?」
今更、なぜドキドキしたりしているのかわからない。腕を引っ張ってバスタブに腰を下ろす。1か月の間も、ちゃんと、こうやってお風呂に入っていた。冬ではないから、あまり長くいないせいかそういう雰囲気にもならなくて。
「……ねぇ、レイ」
腕を指先でなぞり、その掌を両手で握る。
「どうしたの?」

……
………


その左手を開かせて、自分の乳房に押し当てた。
「みちるさん?」
「……………したいの」
目を見られなくて、視線を逸らす。もわりとあがる湯気の向こうの素肌。
今更、そんな一言で恥ずかしがるような、初々しい経験の浅い関係じゃない。
散々、濃厚で愛を塗りたくるようなセックスを何度も何度もしあったはず。
「……そう言えば、最近してないかも」
両手で押し付けたレイの指先が、乳房を愛撫するように動く。それだけで腰から背中が震えた。
「全然、してないわ」
「でも、誘われなかったわ」
「だって……すぐ寝ちゃうんだもの」
「……そうだったかしら……そう言えば、最近、結構よく眠れるのよね」
その横で、抱きしめることも悪い気がして、10センチくらい空けて眠っていた。
幸せな寝息を立てるその音を聞いていた。
「………幸せそうな顔で、すぐに寝ちゃうから……」
初めのころは、幸せそうな顔を見られることが嬉しくて。
何かに耐えている、1人の世界へ行ってしまうのではないかっていう不安を抱くこともなくなって、ホッとしたこともあった。
「寝る前に言ってくれてもいいのに」
乳房をなぞる指の腹が、頂を擦る。嫌でも固くなっていることはわかってる。久しぶりに触れられた身体はレイを欲しがっているのだから。
「レイは欲しいって思わなかったの?」

みちるの身体を欲しいと願わなかった?
みちるに愛して欲しいと思わなかった?
みちるの身体に触れようと思わなかった?

「……………気が付いてなかった」
数秒の後、気まずいですという感情と共に、小さな声で呟かれる。
ちょっと、罪悪感が芽生えたみたい。
「レイは……したくない?」
「そんなわけ、ないわよ」
みちるに身体を預けてくれて、ため息が首筋に吹きかけられる。チクチクと襲う快感がうなじから心臓へと伝わってくる。
「ごめんね、みちるさん」
「謝ることじゃないの……でも、そういう気分にならなかったの?」
「何もかもが終わって、気が抜けてしまっていたかも。ありふれた、何も恐れることがない日々なんて……ある意味、初めてっていうか」
「初めて?」
みちるの膝の上に乗ったレイは、肩に頭を置いてくれた。乳房をなぞる指先が戯れのように踊る。
「うん、そう。何度も敵を倒してきたけれど、その次の日にはもう、また、何かが近づいてくる予感はずっとあったの。でも、今は何もない。本当に何も感じないの。空が澄んで見えることが楽しくて。うさぎたちと子供みたいにはしゃぐのも楽しくて」
嬉しそうに、うさぎたちと遊んだことを話してくれる毎日。
邪魔をするつもりもないし、楽しそうな声を聞くこともあまりなかったから、レイの本来持っている一面なのだって思うと、もっと好きになるのは間違いなくて。
「……レイ、今は幸せなのね」
「一度も不幸だなんて思ったことないわよ」
嘘なんて吐いていない
レイはそう言う子だから
「そう?あれだけあなたは苦しんだのに」
「でも……不幸じゃないもの。だって、私には仲間がいるし、みちるさんが傍にいるから」

それでも、レイは孤独を身に纏う人だった
待ち構える未来の痛みを独りで背負い、耐えていた
何もできず、みちるは傍にいることしかできなくて

「毎日が幸せなのね」
「そうよ」
「それで、私とセックスするのを忘れていたと言うこと?」
「………ごめん、拗ねないで」
気まずい顔をしてもらいたいわけじゃないけれど、拒否されないだけよかったっていうことかしら、と思いながら。
でもそれはそれで、ちょっと複雑。
密かに新しい下着を買ったことが恥ずかしく思えてくる。
「私はレイのことばっかり考えていたわ」
「本当?」
「当たり前でしょう?戦いが終われば、2人でのんびり旅行しょうって考えたり、ゆっくり時間を掛けてセックスをしたいって考えたり……」
「じゃぁ、どこかのんびりできるところへ連れて行って。そこで、飽きることなくずっとセックスしましょう」
1か月モヤモヤした想いを抱いていたけれど、レイは本当に清々しいくらい。
「………今からは?」
すっかり、また忘れられたんじゃないかと思うと、確認せずにはいられなくて。
「もちろん」
「んっ……」
「欲しいって、鳴いてるから」
足の間に遠慮なく侵入された腕。迷う仕草さえなく、その指先が愛を求める場所に触れてきた。
「んっ…だって…あ、待って…」
胸を指先で触れられただけなのに。レイに抱きしめられただけなのに。
もう、身体がレイを待ちわびて、期待してしまっていた。
簡単に受け入れてしまっていて。
「もぅ、意地悪しないで」
「じゃぁ、抜いていいの?」
「………抜かないで」
縋りつくその肩には、いくつも傷跡が残っている。うっすらと。お風呂に入って身体が温まったら浮き上がるそれは、レイを初めて抱いたときにはすでにあった。
「いいの?」
「指を入れておいて、酷いわ」
「……イきたいって、疼いているものね」
否定なんてしようと思わない。
どんな言葉を選べばいいのか、本当に迷ってしまう。
「……愛して」
「拗ねるなんて、珍しい」
顔を上げてと言われ、そっと視線を上げると唇を覆われた。緩く柔らかく掻き回す指と、熱のこもる唇のせいで、本当にすぐに身体が跳ねあがってしまう。
「んっ。…ん、ん…ぅ…ん…ん」
ビクビクと震わせて、レイの指を飲み込んで溶かしたくて。
腕を取られ、いつもはみちるが甲斐甲斐しくするようなことをレイにされて、身体を引っ張られるようにベッドルームへ向かう。
「どれくらいすれば、機嫌を直してくれる?」
「……知らないわ」
「わからないくらい?私、体力持つかしら?」

いつもは、こんな風に声を弾ませるような子じゃないのに
愁いを帯びて、捕まえておかなきゃいけなくて
儚くて脆くて、危うくて

「レイにする体力を残していたいわ」
「加減なんてしないつもりだけど」
「後で後悔するのはレイよ?レイが無理って言っても、私はするわよ」
「相当、拗ねちゃったのね」
「拗ねてないわ。……寂しかったの」

みちるを必要だって思って
愛をねだって
愛を必要として
身体を求め合って
そのことに、喜びを感じて欲しいって

そんな我儘を口にはしないけど

「……私は寂しくなかったわ」
鼻先が触れ合う距離でその瞳は、あの頃の孤独を抱いた彩ではない。
「レイ」
「だって、みちるさんがちゃんと生きているんだもの。それだけで満たされちゃってたみたい」
「…………馬鹿」
「そうかも」
「私はちゃんと生きて、レイを愛しているの」

ずっと、平穏な世界をレイと生きて愛していくの

「……そうね、わかってる。だから、ちゃんとみちるさんを満たしてあげる」

求めて、息ができないくらい唇を求めあって
絡ませて、押し付けて、塗るように
溶けあえるように
一つになれないことを
忘れるくらい

「して……愛して、レイ」


あのランジェリーは、旅行に行った時まで、つけないでおかなきゃ。
どうせ、レイは見ていないはずなのだから。
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Date:2015/07/11
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