【緋彩の瞳】 単純と鈍感の馬鹿 ①

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

単純と鈍感の馬鹿 ①

単発小説になります。
今後の小説は基本的に「恋の果実」とは無関係とお考えください。




「お揃いかぁ」
ジワジワと暑くなってきたこの時期、屋上は影もなく、容赦ない太陽の光が降り注いでいる。
「何が?」
「え?あ、いや、何でも」
何となく呟いたのを、たまたま隣にいた真姫に聞かれていた。
絵里の視線の先には2人しかいない。
「海未先輩とことり先輩のこと?」
「べ、別に」
「お揃いって、リストバンドのこと?穂乃果先輩と3つお揃いの」
「だから、別に何でもないわよ」
「欲しければ、売っているお店を聞けばいいだけじゃないですか?」
じっとしているだけで、額に汗がじわりと浮かぶような季節。
仲睦まじい様子で、ことりさんが海未さんの髪を撫でて、風を送ってあげている。
「絵里先輩ってあからさまに、海未先輩のこと好きですよね」
「っ?!………あからさまって何よ」
「そのままの意味ですけれど。まさか、それでμ’sに入ったんですか?」
「そんなわけないでしょ?」
「あの人、結構メンドクサイ人ですよ」
ボトルから水を飲みながら、真姫は絵里が見ていた人物を指さす。言いたいことはいったと言わんばかりに、ニヤリと笑って傍を離れる1年生。
「……メンドクサイ?しっかりした子なんだけど」
亜里沙がメンバーの中で一番好きだって言っていた。μ’sに入った日にサインをもらってくるように言われて、そんな恥ずかしいことができるわけがないからと、ライブの時に直接書いてもらって、亜里沙は本当にうれしそうにして、部屋に飾っている。色紙にめいいっぱい名前を書かせることに相当苦労した。最終的には毛筆で、縦に書いてと命令したのだ。書道だと思えと。
「ことり、ほら。汗を拭いてください」
「は~い。海未ちゃん~」
「海未ちゃ~ん、穂乃果もして~」
「もう、穂乃果。ほら、あなたも汗を拭きなさい」
3人揃ってイチャイチャしている。甲斐甲斐しくお世話をしている顔が楽しそう。メンバーになってから2年生が相当な仲良しで、3人揃って幼馴染だと言うことを聞かされた。それにしても、幼馴染ってあんなにベタベタするものかしら。
「……呼び捨てかぁ」
1年生のことは、わりとすんなり呼び捨てにできるんだけど、どうも2年生は初期メンバーだからか、あと、色々と絵里が強くあたったこともあって、ちょっと距離を感じている。
「海未ちゃんに絵里って呼んでほしいん?」
「まぁね………って、希?!」
今度は希がニヤニヤした顔で観察してくれていた。
「安心し、えりち。あの大和撫子ちゃんが、えりちをそんな風に呼ぶことなんて、絶対ないから。そういうことには、うるさい感じやん?」


「花陽、凛、ちゃんと水分取りました?」
「「は~い」」
「真姫は?」
「取りました」
1年生が揃って手を挙げてアピールしている。リーダーの穂乃果さんがあれだから、海未さんが仕切らないとダメなのだ。
「では、絵里先輩、そろそろ再開しますか?」
「そうね」
柔軟と準備運動終わって、まだ具体的に歌詞が出来上がっていないから、今日はダンスの基礎レッスンをするだけ。
ステップや体幹の使い方を教え、真剣な瞳で見つめられる居心地のいい時間が終わると、2年生は仲良く揃って先に帰って行った。秋葉原でメイド喫茶のアルバイトを始めたらしい。嫌がっていた海未さんを、ことりさんと穂乃果さんが引っ張っていってしまったのだ。

「来てもいいって言っていたから、あとから行くって伝えているにゃ~」
「楽しみだね」
凛と花陽はこの後、メイド喫茶に行くらしい。
「みんなで行きましょう、みんなで!」
思わず絵里は声を上げた。
「……メンドクサイ人」
「どうせまた、海未ちゃんをからかうんやで」
「にこはタダでジュースもらえるなら行ってもいいけど」
メイド服、見たくないとでもいうのかしら。
あの子の、海未さんのメイド服姿を。
「あなたたち、チームワークでしょ?」
2年生が頑張っているのだから、応援しに行くのは当たり前なのに。
「チームワーク乱してるのは絵里だと思う人~」
勢いよく希と真姫が手を挙げて、その後ろで控えめに手を挙げている凛と花陽。
「何よ、ニコ!」
「あからさまに、あの海未をいじって遊んでるくせに」
「……し、してないわよ!」
「絵里先輩はいじっているっていうか、狙っています」
「真姫!」
「そやなぁ、もう、構いたくて構いたくて仕方ないんやろうな。えりちは大和撫子に弱いんよな。っていうか、顔?顔なん?面食いやなぁ」
絵里を輪になって囲んだメンバーがヒソヒソどころか、はっきりと声に出して主張する。
だんだんと顔が熱くなってきて、腹立たしさと恥ずかしさが湯気になりそう。
「いいでしょ、別に!」
開き直ってみた。
「えりちには無理やなぁ。ことりちゃんたちみたいにイチャイチャできるレベルになんてなられへんわ」
「絵里先輩って呼ばれて、気を遣われてるしね。にこの方が絵里より先にメンバーになってるし、海未のこと呼び捨てにできているし」
両サイドの悪友が、ドヤ顔してくる。
「私は最初から真姫って呼び捨てにされてる」
「わ、私もです。あと、今日は3回も頭を撫でてもらいました」
「凛は今日、お茶もらったから、間接キスしたにゃ~」
ドヤ顔に囲まれて、絵里はどの顔から引っ叩いてやろうかと見渡した。
「何よ、みんなして!私だって、手を繋いだことあるんだから!」
悔しくて、言い返してみる。
「いや、あんたは腕を掴んだだけだし」
「肩抱かれたことだってあるんだから!」
「抱き付かれたわけじゃないやん?手を置いただけやん?」
「ほ、放課後2人で話したことあるもの!」
「私、週2ペースで2人きりで音楽室に籠ってますけど」
ニコも希もチェックしすぎだし、真姫はなぜそんなに仲がいいの。
「………とにかく、メイド喫茶に行くわよ」
「えりち、盗撮したらあかんで」
「しないわよ!」
「写真もダメよ」
「………しないわよ」
「希、ちょっとこの犯罪者を見張ってなさいよ!」
ちょっと、からかうだけなのに。
からかいたいだけなのに。
どうしてみんな邪魔をしようとするのかしら。




「い、いらっしゃいませ、お、お嬢様」
「……ハラショー」
「み、見ないでくださいっ!」
お盆で顔を隠されたから、思わずそのお盆を叩き落としそうになった。
「か、可愛いわ!」
「ありがとうございます、絵里先輩。その、恥ずかしいので、そんなマジマジ見ないでください。取りあえずこちらへどうぞ」

可愛い
もう
可愛いにもほどがある


「ほら~、海未ちゃん、こっちむいて~」
「な、何してるんですか!」
「撮影やん?PVに使うから、カメラに向かって“いらっしゃいませ、ご主人様”って言ってみて」
「嫌です、それはことりにお願いしてくださいっ!」
「あかん、あかん。ちゃんと3人分やるで。これも廃校から学校を救うためや!」
口から出まかせに違いないのに、大真面目な顔になるんだから可愛い。
「……い、いらっしゃいませ、ご、ご主人様。こ、こんな感じですか」
「おぉ、あかん。かわいすぎる!」
希、何ちゃっかり撮影しているのかしら。座ってしまった後に始まった撮影会、今更、覗きに行けないし。
「絵里先輩!!」
「穂乃果さん」
「お飲み物はどうしますか?」
「……コーヒー。っていうか、海未さんが案内してくれたのに、穂乃果さんがオーダーを取るの?」
「いやぁ、海未ちゃんは希先輩の指名が入ったからって」
「何よそれ」
散々真っ赤な顔をして撮影された後、サービスしてな~とか言ってる希がニヤニヤしながら海未さんに抱き付いている。
わざとに違いないんだけど。
「あの……海未ちゃん、呼びますか?」
「別に。穂乃果さん、コーヒーは?」
「は、はい!」
少し離れた席の希と凛が、海未さんにオーダーを通してもらっている。
「あとな、あとな、スマイルもくれへん?」
「何ですか、それは」
「海未先輩の笑顔がみたいにゃ~」
「え…いや」
「ほらほら、スマイルやで~。お嬢様の命令やねんから」
「うぅ……こ、こうですか?」
顔が見えないじゃない。なんでそっちでそういうことしているのよ。
イライラする。
「きゃ~!可愛いやん!可愛いやん!」
「海未先輩、可愛いにゃ~!」
っていうか、言われて真面目に応えているんじゃないかしら。
希、そのメイド服のスカートを手に取って何するつもりなのかしら。
まさか、覗くつもりじゃ…
「ことり~~、悪いんだけど今後のμ’sの活動のために、海未を絵里に付けてあげて」
絵里がギリギリと歯を食いしばっていると、ニコの声がフロアに響いた。





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Date:2015/07/12
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