【緋彩の瞳】 contrast ①

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

contrast ①

「何してるん?」
「あ、希」
両手いっぱいに紙袋を持った海未ちゃんが、校舎裏の手洗い場へと向かう後姿を見かけたので、声をかけた。海未ちゃんの後姿はすぐにわかる。

真っ直ぐな黒髪で
真っ直ぐな姿勢で
真っ直ぐに歩く姿はどの角度から見ても綺麗だから。
えりちがそう言っていた。

「どうしたん、それ」
「昨日、染めたTシャツを一度洗うんです。今度の衣装ですよ」
「あぁ、ことりちゃんと昨日、染めてたやつ」
「はい」
「手伝おうか?」
「よろしいのですか?」
「えぇよ」
2つあるうちの紙袋の1つを受け取ると、想像以上の重さだった。
「すみません、試作っていうか、つい色んな色や形を試したいっていうことりに乗せられて、必要以上に作ってしまいました」
「なるほどな」
これはきっと、ことりちゃんのことだから、本当にいろんなTシャツが出てくるかもしれない。水道水を桶に貯めて、1枚1枚を念入りに見ながら手で濯いでいく作業。海未ちゃんは丁寧に染め落としや、ムラが出ていないかを見ているので、希もそれを真似した。1枚目2枚目と洗いながらコツをつかむと、直ぐに馴れてきた。
「………なぁ、これに合わせるスカートはどんなんやろうね」
「そうですね、できればひざ下のものが良いとは伝えていますが」
「あかんやろ、それ」
「……ことりは、認めてくれそうにありませんね」
「踊りにくいしなぁ。ひざ上でフリフリしたやつがいいんやない?」
「………」
毎回、衣装のスカート丈で海未ちゃんはことりちゃんに異議の申し立てをして、惨敗している。着て踊っているときは、もうすっかり開き直っているのに、それでも、衣装を着ることに抵抗がなくなった、と言うことはまだないみたい。
「大体、足を出し過ぎです」
「えりちは気にしてないけどな」
「……破廉恥です。絵里は誰よりも長い…いっそパンツルックにしてしまえばいいんです」
「いや……まぁ、海未ちゃんの気持ちはわかるけど」
「この前だってファンだと言う人から、足が綺麗だとか、スカート可愛いとか、美人だとか、スタイルがいいとか、散々褒められていましたよ」

じゃぶじゃぶじゃぶ

Tシャツを水に漬けこみながら、綺麗な横顔がムッとしている。
海未ちゃんはちょっと面白い子だと思う。
だから、希は2人きりになったらこうやって、えりちの話題を出すのが好きなのだ。

恋愛経験ゼロから、一気に大好きへの階段ダッシュをした園田海未と言う子
親友のえりちを骨抜きになるまで、メロメロにして使い物にならないくらいのことを、恥ずかしげもなく言うことがあって
当然、メンバーにはその様子がダダ漏れなのに
当の本人たちと言えば、とりわけ海未ちゃんなんかは恋愛経験がないものだから、それに対して恥じらいだとか、秘め事にするべきだとか、わかっていない節がある

もう、公開恋愛みたいな
お互い大好き同士は見ていて楽しい

そのうち、公開初キッスまでしてしまうのではないか、なんて
それはそれで、えりちの親友としては心配ではあるけれど

「褒められてたんやろ?」
「えぇ、褒められていました。絵里の足は綺麗です。そんなことは知っていますが、スクールアイドルは足を褒められるためにあるものじゃありません。絵里も絵里です。年下の女の子にヘラヘラ笑って……」
「えりちは、“たらし”やからな」

じゃぶじゃぶじゃぶ

「足を褒めていた人たちと、ピースして写真まで一緒に撮っていました」
「いやいや、海未ちゃんも散々、他の学校の子とか1年生と写真撮ってるやん。えりちと喧嘩になったんやないん?」
「私は、スクールアイドルとして一緒に写真をと言うリクエストにお応えしただけです。怒られる謂れはないのですよ」

じゃぶじゃぶ
じゃぶじゃぶ

イベントの後、海未ちゃん推しという中学生たちが押し寄せて、何枚も写真を撮っていたその横で、えりちが”私の海未の腕に触った“だの”何が好きですよ、私の方が海未を好きよ“だの、1人でブツブツ言っていて、1人の子が海未ちゃんに抱き付いてしまった後、喧嘩になったのだ。
キョトンとして、怒られている意味がわかっていなかった海未ちゃんに、えりちは敵わなかった。
“意味がわかりません。絵里はこの子たちがうちの学校を受けたいと言っている気持ちを削ぐつもりですか!” って、蹴散らされたのだ。

何て言うか、公開大好き同士って本当に面白い


「えぇやん。えりちは大好きな海未ちゃんに、知らない子が抱き付くんが嫌やってん」
「………」
「あ、赤くなった」
「な、なってません!」
「可愛いなぁ~、海未ちゃん」
「からかわないでください」

じゃぶじゃぶ
じゃぶじゃぶ


「それくらいはスクールアイドルとして、大事なことなのです。絵里が足を褒められたり、容姿を褒められることとは、まったく別ものなんです」

お互いにそれに対してイライラしているのだから
まったく同じようなものなのだけれど

「こっちはみんなのカラーで2枚ずつか。染物のTシャツも可愛らしいね」
「2色を組み合わせたりすることもできるんですよ」
「なるほど。でもベースは白なんやな」
白と紫、白とオレンジ、白と緑。基本の白シャツに染料でいろんな柄を作っている。
「スカートの色をどうするかは、ことりが考えていますが、あまり派手になり過ぎないように、と」
「そうなんや」

ぎゅっと水分を絞り、海未ちゃんも隣で丁寧に洗い終わるのを確認した。
洗濯用の紐を屋上に張り巡らせて、簡易の物干しを作るつもりらしい。




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Date:2015/07/13
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