【緋彩の瞳】 単純と鈍感の馬鹿 END

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

単純と鈍感の馬鹿 END

「……あの……コーヒーをお持ちしました」
「えっ?ほ、穂乃果さんじゃないの?」
ニコが言ったことを真に受けたことりさんが、海未さんにコーヒーを持たせて連れてきた。
「いえ、私じゃ嫌ですか?」
お盆で顔を半分隠している海未さんは可愛い。
やっぱり、可愛いものは可愛い。
「い、嫌なわけないでしょう?」
「そ、そうですよね」
「可愛い」
「ありがとうございます。でも、ことりのほうが」
「ううん、海未さんが可愛い」
「……真顔で言わないでください」
「海未さんは、可愛い」
「ひっ……や、やめてください」
せっかく傍に来てくれたのに、真っ赤な顔をして逃げて行ってしまった。
厨房で穂乃果さんの背中を押して、お盆を押し付けている。
「絵里、気持ち悪いんだけど」
「そうですよ、やりすぎると嫌われますよ」
ニコも真姫も大きなグラスに入ったジュースを仲良く2人で分け合ったりして、なんて羨ましいことをしているのかしら。

それ、海未さんとやりたい。

「………何か、こう、もっと仲良くなれるような方法はないのかしら」
「そりゃ、絵里が“海未さん”なんて他人行儀に呼ぶんじゃねぇ。希とニコの方が、まだ海未と仲良しだもんねぇ」
「くっ……な、なるほど」
ニコはそんなこと言いながら真姫と仲睦まじくジュース分け合ってるくせに。全然気を遣われていない感じ。
「わかった。もう、……先輩って言わせないわ」
「いや、絵里先輩が”海未“って呼べばいいんじゃないですか?」
「………はっ。そうよね、そうよ、それを頑張ればいいんだわ」
興味なさげに髪をいじりながら、真姫が呟くから。
今更、呼び捨てるとか。

海未
海未
海未

「怖い、念仏唱え始めた」
「真姫、他人のフリよ」
「う、う、う……」
結局、絵里は海未さんのメイド姿をずっと追いかけ続けるだけで、名前を呼ぶことさえできなかったのだった。





「リストバンドですか?」
「絵里先輩が、海未先輩とお揃いのものが欲しいんだって」
メイド喫茶でのアルバイトの次の日、放課後にことりから受け取った歌詞を手に真姫と2人で、いつもの様に歌作りを始めた。
ことりの歌詞は可愛らしいけれど、曲に合わせて言葉を少し変える必要がある。ピアノの前で2人並んで、鼻歌交じりに言葉を補ったり削ったりしていく。
「え?なぜですか?」
「いや、嘘……わからないんですか。まぁ、そうだろうと思ってたけれど」
真姫は眉をひそめて海未を見つめてくる。何が言いたいのか、海未には全然わからない。もっと、真姫が考えていることを分かってあげられる先輩にならなくては、と思う。
「絵里先輩、そういえばリストバンドは付けていませんね」
「2年生だけ、お揃いでしょ?」
「3人の頃にことりが買ったものですから」
「だから、羨ましいみたい」
「なぜですか?」
「……メンドクサイ」
「何がですか?」
リストバンドってメンドクサイものだっただろうか。
海未はよくわからないので、真姫に聞くしかないというのに。
「絵里先輩は、海未先輩のことを凄く気に入っているみたいですよ」
主旋律を片手で演奏し始める真姫のセリフは、海未の身体には全然入って来ない。
「それは光栄です」
「………わかってない?」
「え?ですから、気に入っていただけているのであれば、光栄です」
「ラブよ?」
「ラブ?」
「熱視線」
「……なんですか、それ」
「言うと思った。大好きって思われてるの」
「光栄ですね」
「………メンドクサイ人なんだから。ことり先輩や穂乃果先輩と仲良くするみたいに、絵里先輩も仲良くして欲しいって思っているの。っていうか、本当はそれ以上だけど」
「ですが、あの2人は幼馴染ですし、絵里先輩は上級生ですよ?」
「だからこそ、仲良くなれなくてウジウジしてるみたい。お揃いのリストバンドがうらやましいとか思ってたり」
「……そうですか。では、ことりにあのリストバンドが売っているお店を聞いておきます」
「………もう、好きにしたら」
伝わってない、なんて呟かれたけれど、絵里先輩がお揃いのリストバンドを付けたいようだと言うことは、ちゃんとわかった。
レッスンが終わったら、ことりと買いに行こう。人数分売っていればいいのだけれど。




「絵里先輩が、絵里って呼んでほしいって言ってきたのですが……」
「……よ、よかったね~。絵里先輩も海未って呼んでたね」
真姫と曲作りをある程度終わらせて屋上に行くと、いきなり絵里先輩が“海未!”と抱き付いてきた。抱き付いてきてからかわれることは、これまでに何度かあったので、それ自体は構わないっていうか、恥ずかしいのだけれど、それより名前の呼び方が気になった。そして、いきなり、“海未も、絵里って呼んでいいわよ”と言われて、ますます混乱してしまっている。よくわからないけれど、全員がそう呼ぶのですかと聞いてみても、海未だけは呼んでも構わないとか、よくわからないことを言われた。
「ことり、何か知ってますか?」
「うーん、きっと海未ちゃんのことを凄く気に入っているから。もっと、仲良くなりたいから、先輩って気を遣われたくないんじゃない?」
「それは、似たようなことを真姫も言っていました」
「あぁ……そうなんだ」
放課後、一緒に帰りましょうっていう絵里先輩の申し出を丁寧に断ったら、ものすごく落ち込まれた。ことりと一緒にリストバンドを見に行かなければならない。一緒に見に行ってもいいけれど、なかったら悲しませるような気がして、お断りするしか方法がなかった。
「ことりは何か知っているのですか?」
「ううん、し、知らないよ~?」
「そうですか」
スポーツウェアの量販店に入り、ことりがお揃いで買ってくれたものと同じものを探してみるけれど、色違いが2つ置かれているだけで、あとは全然デザインが違うものしか置かれていなかった。
「青が2つですか……」
「海未ちゃん、色違いのこれを絵里先輩にプレゼントしてあげたらどうかな?」
「ですが、それではみんながお揃いになりません」
「いや、ううん。欲しいって思っているのは、絶対に絵里先輩だけだから」
「……なぜですか?」
「いいの、絶対そうだから」
「ですから、なぜですか?」
「いいから、これ、海未ちゃんが絵里先輩に渡してあげて」
「絵里先輩だけでよいのですか?」
「いいの。だって、絵里先輩、すご~~く海未ちゃんのことお気に入りなんだもの」
「………はぁ」
「海未ちゃんだって、嫌じゃないでしょ?」
「まぁ、それはそうですが」
どうせなら、仲間みんながお揃いの方がいいのではないかと思ったけれど、頑なにそうしろとことりに言われて、結局1つだけ買うことになった。
「絵里先輩も、きっと喜んで付けてくれるよ」
「そうですか?1人だけだと、かえって気を遣ってしまうのではないですか?」
「絶対ないよ、見せびらかすよ」
「まさか」
「……絶対だよ」
ことりが微笑みながらも、ものすごく押し付けてくるので、海未は言われたとおりにしておこうと思った。ことりはなんだかんだとのんびりした口調の割に、怒らせると怖い人だから。



「え?……海未がくれるの?」
「はい。あの、色違いなのですが」
「本当に?」
「はい」

キラキラキラキラキラ

海未は見る見るうちに瞳に星マークが飛び始めた絵里先輩を、マジマジと観察していた。絵里先輩は時々子供みたいな表情をする。可愛いなと思うけれど、普段の生徒会長の姿とは全然違うので、どう対処すればいいのかわからない。
穂乃果を相手にするみたいに、“落ち着きなさい”なんて言えるわけもない。
「ありがとう、海未!!!」
「いえ、とんでもない」
何か、すっかり当たり前のように”海未“って呼ばれてしまっていて、それは別に構わないのだけれど。
「絵里先輩に気に入ってもらってよかったです」
「だから、絵里だってば」
「いえ、ですが」
「……もう、絵里って呼びなさいよ!」
「でも、先輩です」
「いいの!私がいいって言ってるの!」
右手首にリストバンドを付けてくれた絵里は、海未の腕をガッチリつかんで、名前を呼べと迫ってくる。
「さぁ、海未」
「え……絵里さん」
「絵里でしょ」
「え、り」
「………よろしい」

キラキラキラキラキラ

嬉しそうだから
困ります、嫌です!って強く言うのも悪い気がしてくる

「見て、海未にもらったの!」
「いや、見てたから。報告とかいらないし」
「海未が私にって!」
「見とったから、もうわかったから。落ち着き、えりち」
ニコ先輩と希先輩に見せびらかし始めて、サンタクロースに玩具をもらった子供みたいだ。ことりが言った通り、本当に見せびらかしている。
「ことりの言う通りですね」
「うん、みんなに渡したら、かえって落ち込むと思う」
「はぁ、何となくわかります」
「好かれていることも、何となくわかる?」
「……そうなのでしょうか?」
「ラブでしょ」
「えっと、これはラブなのですか?意味がわかりません」
「………きっと、そのうち唇を奪われちゃうんじゃないかな」
「え?」
「がんばってね、海未ちゃん」

何を
がんばれと




3年生からの先輩禁止命令がこの数日後に発表になったのだけれど、それは海未が絵里って人前で呼びづらそうにしているのを見るに見かねて、全員の上下関係を取り除いた方がいいという希からの提案だった。
絵里からしてみたら、絵里って呼ばれたいと思うのは海未からだけらしく、海未が希やニコを呼び捨てにするのも嫌だったらしいけれど、絵里って呼ばれないよりはマシということで、提案を受け入れた、とかなんとか。






関連記事

*    *    *

Information

Date:2015/07/12
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/599-94bc12b7
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)