【緋彩の瞳】 このメロディに名を付けたなら ①

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

このメロディに名を付けたなら ①

*どの小説とも繋がりはないです


真姫と海未





「海未ちゃん、海未ちゃんお願い~~」
「ダメです」
「海未ちゃん……お願い♪」
「……くっ…いつもいつも……あなたたちはズルいにも程があります!」
2年生のトリオ漫才は開始から2分で、あっけなくオチを迎えてしまった。海未先輩に内緒で膝上のスカート衣装を作ろうとしていたのがバレて、結局は説得させられたという、ただそれだけのこと。
「海未ちゃん、ミニスカート似合うから。ことり、一生懸命作るね」
「……たまには私の意見も聞いてください」
「だ~め。だって、衣装の時くらいしか海未ちゃんのミニスカ見られないもん」
「ことりの目的は、一体何なのですか?」
「そんなの、可愛い海未ちゃんの姿を見るためだよ。ねぇ、穂乃果ちゃん?」
「うん!」
海未先輩は、一気に顔を赤くして、あなたたちは!あなたたちは!と慌てふためいているけれど、毎日毎日繰り返しているのに、それでもまだ、飽きずに漫才ネタは尽きないらしい。
「……あの、今日はもう、やることがないっていうことですよね?」
穂乃果先輩が海未先輩の背中に抱き付いて、甘えた声で”海未ちゃ~ん“を連呼する。からかわれながらも、本気で拒絶しない海未先輩は、よくあの人たちと幼馴染を続けていられるものね、と思う。
「あ、うん!ことりちゃんと衣装に使う布とかボタンとかを買いに行こうかって言ってるんだけど、真姫ちゃんも来る?」
「いえ、やりたいことがあるので」
「そっか。じゃぁ、また明日の朝練で」
衣装の相談っていうことだったのに。相談も何も、デザイン図は出来上がっていて異議があるのは海未先輩だけで、1年生3人は無言で漫才を見ているしかなかった。花陽と凛は穂乃果先輩たちと一緒に買い物に行くらしいけれど、付き合うだけ面倒。ニコ先輩はアイドルのライブチケットがどうとかって、そもそも部室に来ていない。

鞄を手に、真姫は部室を出て音楽室へと向かった。
家に帰ってもよかったんだけど、ママがいると勉強をしなきゃと言う気持ちになって、ゆっくりとピアノを弾けないし、作曲作業に集中できない。
誰もいない音楽室のピアノ。2人は座れる椅子に腰を下ろして五線譜ノートを広げる。7人になって2曲目をそろそろ作らないといけない。海未先輩はまだ、詩を持ってきてくれないから、先に曲だけでも作って渡しておいた方がいい。
「……あ」
ペン回しをしながらサビの部分を鼻歌交じりに考えていると、コンコンと扉を叩く音がした。

海未先輩

「真姫、やはりここにいましたか」
「海未先輩、買い物じゃないんですか?」
「いえ、私が行くと、無駄に体力を消耗させられるだけなので」
「……はぁ」
音楽室に入ってきた海未先輩は鞄を机の上に置いて、真姫の座っている隣にとても自然な流れで腰を下ろした。真っ直ぐな髪がシャラシャラと鳴って鍵盤をくすぐるようになぞっている。それを丁寧に手櫛で後ろに追いやって、それから口角を上げて真姫に視線を投げかけてくる。

全ての動きが丁寧でいて、完璧だって思った。

「何か用ですか?」
「次の曲についてですよ」
「……あぁ。詩は?」
「少し、悩んでいます」
ノートを真姫の五線譜ノートの横に広げて見せた、その罫線の入った紙は真っ白だ。
「ふーん、悩むこともあるんですね」
「私だって、色々あります」
昨日の夜、海未先輩は電話でみんなに相談があると言って来た。穂乃果先輩につきっきりでテスト勉強を教えるようになる少し前から、何か1人で真剣な顔をして悩んでいるところを何度か見た。あれくらいから、1つも詩を書いてきていないと言うことになる。
生徒会長にダンスを教わりたいという相談は、なぜ海未先輩がその名前を出すのか、よくわからなかった。μ’sのことを目の敵みたいに思っているような人に、ダンス指導を受けるという理由が、ただ、上手くなりたいからというそんな単純な理由だけではない気がして、でも、その真意を聞き出せずにいた。確かに、ダンス経験者が1人もいない今の状況では、振付を覚えて行く作業ばかりだし、ダンスの基本的なことっていうのを誰一人分かっていない。身体づくりの基礎とは違う、ダンスの基礎なんて、何から始めるべきかさえ知らない。
でも、生徒会長じゃなきゃいけないとは思わない。部活としてなりたった今、外から講師を招いたり、あるいはスタジオに行くなんていうことだって、ありなのに。
「……さっき、生徒会室に行ったんですよ」
「え、海未先輩が1人で?」
「えぇ。その、私が言いだしたことなので、先に私に話をさせて欲しいって、穂乃果たちに伝えていたんです」
「で?」
「……生徒会室に行く途中で偶然お会いしたのですが、目が合った瞬間、逃げられてしまいました」
「逃げられた?」
「何て言うか………気まずいのです、お互い」
「なんで?」
海未先輩はピアノの鍵盤に指を置いても、音を鳴らすことはない。
ただ、白と黒の鍵盤が並ぶその規則性を見て、言葉を選ぶ間を取っているだけ。
「……少しだけ、仲違いをしただけですよ」
「っていうか、そもそも仲良しなの?」
「いいえ。ですが、生徒会長がどう思っているかはわかりませんが、私は尊敬しています」
ハッキリ尊敬しているなんて言って。
鍵盤を見つめる瞳は、何か隠すに隠せないような強い意志と憧れみたいな色が見えていて。
そう言うところばかりを気にしている自分が、馬鹿みたいって思う。
「尊敬するような要素なんてある?容姿?肩書き?」
「……何でしょうね。あの人のバレエは本物です。ダンスで人を魅了するというのは、生徒会長みたいな人じゃないと無理なのでしょう。私たちがその半分でもできるようになればと思うのですが。…結局、お願いできませんでした」
1人では無理だから、明日は幼馴染を連れて行くつもりらしい。上手くいけば、ダンスを基礎から練習できるはずだと、海未先輩は言うけれど。
「私の曲と、海未先輩の歌詞と、ことり先輩の衣装じゃ、全然ダメってことですか?」
スクールアイドルを認めないと言っていた生徒会長の指導なんて、本当にいるのだろうか。潰されるだけじゃないだろうか。
「そうじゃないですよ。真姫の作る曲は素晴らしいです。ダンスは曲がなければ始まりません。拗ねないでください」
「す、拗ねてないわよ!」
立ち上がりそうになったけれど、椅子を引かなければ立ち上がれないから、太ももが鍵盤裏にあたって、ガタンと鈍い音を立てた。
「大丈夫ですか、真姫」
「だ、大丈夫!っていうか、海未先輩は生徒会長以外の人を探そうとか思わないの?ダンスできる人なんて、探せばいくらでもいるじゃない」
メンドクさそうな人よりも、部外者で応援してくれる人の方が、みんなだって受け入れやすいに違いないのに。その方が楽しくできるのに。
「そうなのですが……きっと、私の我儘なのでしょう。私が生徒会長に教えてもらいたいだけかもしれませんね」

何、それ
それが本音なんでしょ
意味、わかんないし


「歌詞、明日までに1行くらい書いてきてもらいたいのですが」
海未先輩の本来の担当は、ダンスじゃなくて歌詞を書くこと。
「……努力します」
「生徒会長のことで頭いっぱいになられても、困ります」
「そうですね。真姫に迷惑をかけるのもよくないですね」
聞き流してください。
海未先輩はそう言って、真姫の頭を撫でてきた。
少しだけ真姫の方が背は高くて、でも真っ直ぐに背筋を伸ばして座っている海未先輩とはそれほど差を感じたりしない。

穂乃果先輩たちをあやす時と同じ、この馴れた手つきは
花陽や凛の頭を撫でることもある
当たり前のように

「……っ!べ、別に迷惑とかではありませんけれど」
「書きたいって思えるようなフレーズはあるんです。でも、確定していない希望的なことなので、それを歌にしていいのかどうか、少し悩んでいます」
「確定?何それ?ちゃんと説明してください」
肩に少しかかる真姫の髪を指で掬って、いつもの癖を海未先輩が真似ている。
「少し、もう少ししたらきっとわかりますよ」
「意味わかんない!」
「……私だって、馬鹿なことを考えているな、と思っています」
「だから~!曲を作るのは私なんだから、ちゃんと説明してもらわないと、こっちだって作れないんですってば!」


何を考えているのか知りたいだけ
曲を作るためとかじゃなくて
海未先輩が何に希望を見出しているのか
知りたいだけ



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Date:2015/07/19
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