【緋彩の瞳】 このメロディに名を付けたなら END

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

このメロディに名を付けたなら END

「それもそうですね。真姫は作曲者ですし。ですが、まだ……そうですね、アップテンポで、楽しく踊れるような曲を作っておいてください」
「いや、そういうことじゃなくて!」
また、立ち上がろうとして、太ももに鍵盤裏がめり込んだ。流石に2度目は痛い。
「大丈夫ですか?」
「べ、別に痛くなわよ」
控えめに笑いをこらえながら、海未先輩は真っ白な作詞用のノートをぺらっと1枚めくった。そこには「仮」と書かれた数行の言葉が並んでいる。
「何だ、ちょっとは書いているじゃない」
「ちょっとだけです。歌詞っていうか、まだ何も繋がっていないんです。とりあえず並べてみただけです」


答えなくていいんだ わかるから
胸に描く場所は 同じ

憧れを語る君の譲らない瞳

何度でも諦めずに
僕と君との挑戦




「アップテンポで、踊りやすい曲を作ればいいんでしょ?」
「はい」
「……それは誰のため?っていうか、曲調のリクエストなんて、海未先輩らしくないです」
海未先輩は、何か先を見据えている。生徒会長にダンスを教えてもらうことを、諦めたりすることもないに違いない。
それを見据えて、踊りに適した曲調であるべきだと思っている。
「たぶん、“私たち”が踊る最初の曲になるからです」
「は?」
「いえ、だからこそ少し悩んでいるんですよね……」
「だから、何のことよ」
「………きっと、そのうち分かります」
「どうして、私に教えてくれないの?」
「拗ねないでください」
「だ、だから拗ねてないってば!」

並んだ椅子から追い出してやりたいって思うけれど、その身体を押したりできない。
ふんって横を向いても、拗ねないでくださいって指先が頬をつついてくる。
今までもこうやって、あの2人をなだめたりしてきたんだろうって
同じような扱いをされながらも、悔しいけれど許さなければいけない想いにさせられてきて。

「真姫、きっと明日から、ハードな練習になります」
「……生徒会長がOK出すと思ってるの?」
「はい」
「おめでたい人。学校説明会で踊ることさえ邪魔しようとする人よ?」
「あの人は……生徒会長は、私たちのことを嫌ってませんよ」
「どうしてそう思うんですか?」
「さぁ。でも、わかるんですよ」


答えなくていいんだ わかるから
胸に描く場所は 同じ


目の前のノートに書かれている言葉が
瞬間にメロディーになって
真姫の指先は、本能的に白い鍵盤を弾いた

「………ちゃんと踊れるような曲を作るから、説得してくださいよ」
「真姫」
「だって、これ、生徒会長に向けた曲なのでしょう?」
「………私たちと、新しいメンバーを繋ぐための曲にしたいんです」




まるで、ラブレターじゃない。


言葉にしてからかってやろうかと思ったけれど
何かがそれを言わせてはくれなかった
喉に何かが引っ掛かって
ほんの少しだけ呼吸がしにくいって思って


「………曲の何となくのイメージはできた。だからそれに歌詞を合わせて作ってください」
「わかりました」
「明日中にデモテープ作ります」
「流石ですね、真姫!」

仕上がった歌詞を読んでしまったら
身体中痒い想いがしそうで嫌だ、なんて
ちょっとそんな風に思っているのはどうしてだろう

別に海未先輩が誰を想っているとか、誰のことを考えているとか
真姫には関係のないことなのに

生徒会長を想う曲は真姫が作ったものに、歌詞を添えただけ
そういうことにしておきたい、だなんて
子供みたいなことを考えている
それは、らしくない考えだってわかっているのに、それで自分を納得させようとしているとか

意味わかんない

「真姫が作った曲なら、私も上手く言葉を繋げられるはずです」
「あっ……当たり前よ、私しか海未先輩の歌詞に曲を付けられる人はいないんだから」
「ふふ、そうですね。真姫は天才ですから」

作曲の邪魔になるからって、海未先輩は仮として書かれてある言葉の部分をちぎって、真姫に渡し、お願いしますと、一礼をして席を立って音楽室を出て行った。

「……別に、曲を作るくらい、なんてことないわよ」
頭の中に流れ込むアップテンポのメロディー
その曲に合わせて踊っている自分たちのイメージ
その中に生徒会長がいて
海未先輩は楽しそうに生徒会長を見つめている

「……何考えてんの、別に、興味ないし」

この曲を書き上げて海未先輩に渡したら
満面の笑みをくれるだろう
そして、すらすらと歌詞を書いて、それで生徒会長を口説き落として
“新しいメンバー”に入れるに違いない

勝手な妄想を繰り広げては、“そうじゃない”可能性が出てこなくて
だったら、この身体中から溢れるメロディーを握りつぶしてしまおうか、なんて考えてしまうのだけれど、そんな低レベルなことをするのは、西木野真姫ではない。
海未先輩の望む未来のために曲を作ることだけが、彼女を喜ばせる手段だって知っている。

「いや、別に海未先輩のためじゃないんだから」
誰への言い訳か、1人呟いた。

「………第一、好きとかじゃないんだから」

それは、真姫の海未先輩に対する気持ちなのか
海未先輩の生徒会長への想いなのか

よくわからない

よくわからないし
わかりたくもないから


何も、聞かなかったし
気が付かなかったことにしよう

この想いも
あの人の想いも








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Date:2015/07/19
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