【緋彩の瞳】 一進一跳 ①

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

一進一跳 ①

亜里沙が雪穂ちゃんの、つまり穂乃果の家にお泊りに行くというので、海未にうちに来てほしいと誘った。お泊り用の着替えとチョコレートケーキを手に部屋に遊びに来てくれた海未は、相変わらずちょっとだけ頬を赤く染めて、それでいて1分とも目を合わせてくれない。
「ねぇ、お風呂入る?」
「お、お風呂ですか?」
「だって、入らないと寝られないでしょう?」
「そうですね。じゃぁ、お先にどうぞ」
「………亜里沙、いないわよ?」
「わかってますよ。それがなにか?」

デートも絵里が誘って
手を繋ぐのも絵里からで
キスをするのも絵里からで
身体に触れるのも絵里からで

「一緒に入らない?」
「えっ」
「亜里沙、いないでしょ?」
「えっ…いや、ですが。その、えっと、ですが、その…」
海未は部屋を暗くしないと、身体を重ねてくれない。
でも絵里は真っ暗が大の苦手で、触りたい触りたいって駄々をこねる絵里と、無理です恥ずかしいです、せめて電気を消してと粘る海未の攻防は付き合ってから1か月続いて、豆電球という結末を迎えた。
だけどもちろん、1か月それでもめるくらいなのだから、豆電球1つであるにもかかわらず、海未はパジャマを脱いでくれないし、胸を隠そうと腕でガードするし、下着に手を掛けることさえさせてもらえないし、絵里が何をしたいかという意志がまったくもって伝わらず、初めてのセックスは泣き落としで、海未に懇願した。豆電球攻防終了から、そこまでになんと2か月も費やしたのだ。

「海未と一緒にお風呂に入りたい。海未と一緒にお風呂入りたい。絶対入りたい」

と言うことで、海未も今日は豆電球に照らされたセックスを覚悟の上ではあるのだろうけれど、いまだにその身体のフォルムを間近で見たことがない絵里にとっては、こんなチャンスは逃したくないわけで。

「………絵里、その、なぜですか?」
「なぜって、だって恋人なのよ?一緒にお風呂入って、お互いの肌に抱き付いてイチャイチャしたいって思わない?」
甘いチョコレートケーキと、ストレートティ。海未は赤く染めた頬のまま、絵里の視線から逃げて、天井のLEDライトを見つめてはどうやって断ろうかって考えているのだろう。
「……それは、その、ですが、恥ずかしいです」
「私しかいないわ」
「え、絵里に見られることが恥ずかしいんです!」
「お風呂なんだから。みんなでお風呂に入ったことあるでしょ?」
「あ、あれは、その、また違うではありませんか」
「同じじゃない?」
「……ち、違いますよ」
「う~み~、お願い。お願いったら、お願い。私、海未と一緒に2人でお風呂に入りたい。恋人なんだから、そういうことしたい」
巷で手を繋いで歩いている恋人同士は、普通に一緒にお風呂に入ったり、朝の光を浴びながらセックスをすることだってある。海未にそう言えば、そういうことに疎いって馬鹿にされたくない、みたいなムキな態度に出ることはわかっている。
だから本当は、その手を遣わずに可愛く誘ってしまいたい。
誰かと比較するのだって、絵里も好きじゃない。
「絵里、泣き落としを考えていますか?それとも、それが普通だと説き伏せてくるのですか?」
最近、海未は絵里のパターンを解析しているようだ。とはいえ、絵里だってその2つくらいしか海未に通用しないってわかっているし、そろそろ別の攻め方を考案しなければとは思うところなのだけれど。
「お願い、海未。今日しかないの」
「…………ずるいです、いつもいつもいつも」
「海未だって」
「私が、ですか?」

“こんなことをこっちにばかり言わせて”
それを言えば、海未は落ち込むだろうか

とはいえ、恋愛と言うものを絵里が教えてあげないと、海未は永遠に友達の延長線を仲良くおテテ繋いで歩くだけなので、絵里が『恋愛鈍感無頓着大和撫子、園田海未』にあらゆることを教えてあげなきゃいけない。
でも、時々思う。
海未の言うように、確かにずるいのかも知れない、と。
絵里が導いているすべては、絵里のしたいことであって、海未は絵里に何を望んでいるのだろうか、と。



「こ、こっちを見ないでください」
「いや、お風呂はそっちだから、仕方ないわよ」
「う、うぅ、後ろを向いておいてください!」
「だから、そっちがお風呂なんだって」
なかなか服を脱ごうとしない海未を裸で待っている、こっちの身にもなって欲しい。先に行こうにしても、目の前に下着姿の海未が立ちはだかっているし。
「もぅ、海未。ほら、早く脱いで。私をいつまでこの姿で待たせるの?」
「…………わ、わかってます。気持ちの整理をしているんです」
「いや、まぁ…」
意を決したように指を震わせながら背中を向けてホックを外す。その綺麗な筋肉の付き方をした真っ白な背中。海に行った時にビキニを着ていて、かなり綺麗だと言うことはわかっていたけれど、やっぱり近くで見ると別。
「ほら、入るわよ~」
「う、うぅ…はい」
恐る恐ると言った様子でパンツを脱いで、丁寧に小さく折りたたむのをじっと待ち続けた絵里は、その背中を押してバスルームへとようやく入ることができた。
「身体、洗ってあげようか?」
「結構です」
「……即答ね」
「絵里、お先にどうぞ」
「じゃぁ、私の身体洗う?」
「そ、それも結構です!」
トマトみたいな顔で、海未は相変わらず胸をしっかりガードしたまま。1つしかないシャワーで、仕方がないといえば仕方がない。とりあえず一緒にお風呂って言う小さな願を達成するためには、ある程度諦めが肝心だから。

絵里が先にシャワーを使い、その後海未がシャワーを浴びるのを、温めのバスタブの中から眺めて、“見ないでください”を何度も何度も浴びせられ続けてもめげたりしない。身体を温めろと命令をして、同じバスタブに向かい合って腰を下ろす。
正直、ここまででもう結構気力を使ってしまったような気がする。
セックスしてくれるようになってからそろそろ1か月が過ぎる。とはいっても1か月の間、毎日一緒ではないのだから、まだ片手で数えられる回数にさえ達していない。
「………海未、一緒にお風呂に入るのは楽しくないの?」
「は、恥ずかしいです」
「恥ずかしいっていうのと、私と一緒にいて楽しいっていうのは、どっちが上?」


……

ずっと胸を両手で隠したまま、それでいてこっちを見ない海未がいつものように眉をハの字にさせている。
その表情を観察するのは、もう絵里に課せられた使命のようなもの。メンドクサイ人を好きになった自分が悪いっていうのは、気が付いたときにはもう、どうしようもなかったのだから仕方がない。

仕方がない。

そう思っているくせに、こっちを見てと思う。
こっちを見て
絵里に見せて
言葉にしなくても、絵里の望むことをして、と。

それは、海未が言う通り、“ずるい”ことなのだろうか

「…………絵里……怒っていますか……」
一度きつく目を閉じた後、意を決した丸い瞳が絵里をまっすぐに捉えてきた。
その強い眼差しが、どうしようもなく海未を好きだと思わせてしまう。
だから、海未の方がやっぱりずるいような気もするのに。
「怒ってるわけじゃないわ」
「では、悲しいのですか?」
「……そう言う感情じゃないわ。それに、質問をしているのは私なの。海未は楽しくない?私とお風呂に入ったり、キスしたり、手を繋いだり、一緒に寝たり、あと身体に触れることも」
胸の前でクロスされたままの腕。その左手を取った。抵抗はほとんどないから、その指を開かせて、少しだけ迷って、自分の頬に添えてみる。胸に置くと驚かれそうで、出来なかった。
「……その、絵里が楽しいって思うのなら」
「海未はそんな風に思っているの?」
「……わかりません。私は絵里と一緒にいられたら、楽しいです」
「一緒にいるだけなら……それでいいなら、どうして私が恋人になってと言ったときに、OKしたの?」
「そうすれば、一緒にいられると思いました」
キスしたいとか
触れたいとか
そう言うことを考えているのは、本当に絵里だけなのだと認めたくないし
認めて欲しくないし

あぁ、もう、海未は本当に馬鹿正直

「……私がキスしたり、海未に触れたりするのは海未が好きだからなんだけど、海未は私がそれをしているのが楽しそうだから、それに付き合ってくれていたの?」
「いえ、その、そういうわけじゃ」
「じゃぁ、どういうわけ?一緒にいるだけ以上は望まないのなら、そう言えばいいのに」
怒っているつもりもない
それでも穏やかな口調を保とうって思って
意識した口調になっていっていることはわかる
真っ直ぐ見つめてくる瞳が、絵里の言葉を懸命に理解しようとしてくれていることも



「絵里が好きです」


海未


右の手もそっと頬に添えられた。赤い頬と、真っ直ぐに見つめてくるハニーブラウンの瞳。甘く優しい色なのに、その真剣な瞳はいつも呼吸を辛くさせる。


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Date:2015/07/25
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