【緋彩の瞳】 The poison of love

緋彩の瞳

絵里×海未小説[ラブライブ!]

The poison of love



ことりは自分の初めての恋に
毒と名付けた

時々奥歯に近いよくわからない場所が
こうやって痛みを発するけれど


毒が全身に回るようなことさえしなければ

この毒をことり自身が飲み込みさえしなければ

大丈夫
ずっと傍にいられる




「海未ちゃん、ねぇ、これはどうかなぁ?」
「……ことり、その、それは短いです!」
「でも、かわいいよ?ね?絶対に可愛いから~」
7月に入って早々始まった夏服のセール。ことりはいつもみたいに海未ちゃんと来ている。中学生にあがった頃から、海未ちゃんは自分で私服を買いに行くようになったみたいなんだけど、よくわからないって言うから、季節ごとにこうやって一緒に買い物に行くのは恒例。
とはいっても、海未ちゃんは短いスカートやワンピースを勧めても、必死になって抵抗してくるから、あんまりことりは役に立たなくて。結局ロングスカートやハーフパンツ、シャツだって可愛らしいキャミソールをひっそり買わせてみようと思っても、ことごとく却下されていくのだ。

この前のセールまではそうだった。

「お願い、お願い、お願い!前に着た衣装と同じくらいの長さだよ?ねぇ、試着だけでもいいから」
「………何か、最近のことりは強引です」
「海未ちゃぁ~ん。だって、海未ちゃんはこれくらいのスカート丈なら、衣装で着たことあるでしょ?人前で踊ったよね?」
「それとこれとは違いますって!」
「……海未ちゃぁん」
短い真っ白なスカートを差し出して、ちょっと膝を曲げて下から伺うようにじっと見つめる。



……
…………


「くっ……いや、ダメです…いつも、そうやって……そうやって」
「ことり、海未ちゃんが可愛いこと知ってるよ?」
視線を合わせていることが危険って察知されたみたいで、慌てて左上へと視線を逃がしても、もうあと少しだってすぐにわかる。
「そ、それはことりの勘違いです!」
「………海未ちゃん、可愛い。これは海未ちゃんに似合う。海未ちゃんが着ないとダメだよ。それに、ほら、きっとこれを着てデートしたら、喜ぶと思うよ?」

“絵里ちゃんが”

短いふわっとしたスカートを海未ちゃんの胸に押し付けて、その名前を耳元で囁いた。


一瞬にして赤く染まる耳たぶ
そのまま唇で挟んでしまいたい想いが、首筋を震わせても
ぐっと奥歯を噛んで感情を押し殺した



海未ちゃんはずっと
いつだってずっと
ことりの隣にいる人


これは
この感情は毒


「……え、え、え、絵里が、どうか、しましたか?」
まるで糸で操られたようなぎこちない幼馴染は
「ふふっ。わかりやすい、海未ちゃん」
「な、何が、何のことでしょうか?」
耳からうなじ、頬も赤く染めて小さく唇を震わせて
もう瞳が何を見ようとしているのか、眩暈しないか心配になるほど右往左往していて

ことりが何をしても
こんなにもオロオロするようなことなんてないのに

抱き付いても
身体を寄せても
戯れに頬にキスをしてみても

恋なんて一度もしてくれたことはないのに

「そのスカートに青系のキャミを合わせて、それからサンダルは少しヒールの付いたものがいいよね。凄く可愛くなる。絵里ちゃん、きっと可愛いって言ってくれるよ」
熱い頬を両手で挟み、誤魔化すなんて無意味なことを、それでも続けようとする大切な幼馴染。


大好きな幼馴染

幼馴染じゃなければ
海未ちゃんはことりを恋する人の対象としてみてくれたり、したのかな


「べ、べ、別に絵里に見せるために買うわけじゃありません!」
「でも、今度2人で遊ぶ約束をしたんでしょ?」
「どっ…どうして知っているのですか?!」
暑さ対策のために午後の練習のない日、絵里ちゃんが海未ちゃんをデートに誘ったことは知っている。何か洋画のチケットが手に入ったからって。
「ことりは海未ちゃんのことなら、何でも知ってるよ。こういうスカートが凄く似合うっていうことも。絵里ちゃんとデートをするから、可愛いお洋服が欲しいって思っていることも」



海未ちゃんが、生まれて初めて恋をしていると言うことも
海未ちゃんと絵里ちゃんが、相思相愛だって言うことも

海未ちゃんが絵里ちゃんを好きだって知った
その瞬間に
ことりは自分の気持ちに気が付いてしまった


「……ことりには敵いませんね。何もかも、お見通しです」
両手で抱きしめていたスカートをまじまじと見つめながら、海未ちゃんが今、何を想像しているかも全部わかる。
「うん。じゃぁ、次は可愛いキャミソール探そう。それで、靴屋さんにも行こうよ」
「………はい、よろしくお願いします」
想像の中で海未ちゃんに微笑んでいるのは、ことりではない。
「うんうん、素直でいた方が、海未ちゃんは可愛い」
「あんまり、可愛い可愛いって言わないでください。恥ずかしいです」




首筋に感じる気持ち悪さ
初めて感じる
奥歯なのか、こめかみなのかよくわからない場所に
不快な感情が痛みとなってドンドン溜まっていく
それなのに、飲み込むことは許されない
飲み込んでしまえば、毒になって身体を襲ってしまいそうだから


その毒に身体を蝕まれたら
清らかで真っ直ぐな瞳が、悲しみと驚きの色に染まってしまう


「私、海未ちゃんのことが好きだもん。だから、可愛いって思ったから、思ったことを口にするだけだよ」

伝わらない想いが
こめかみの近くを刺激する

「今日のことりは、やけに楽しそうですね。ことりの服もちゃんと選ばないとダメですよ」
「うん!じゃぁ、海未ちゃんとお揃いを買おうかな」
「えっ?!それは恥ずかしくないですか?」
「え~、最近、お友達同士でお揃いって、流行ってるから大丈夫だよ~」
「そうなのですか?」



もっと早く好きだって気が付いていれば
海未ちゃんが絵里ちゃんを好きになる前に気が付いていれば
海未ちゃんに抱き付いて、大好きだよって言えたのに
唇にキスしたいって、声に出してお願いできたのに
ことりを好きになってと、我儘を言えたのに

「うん、“お友達同士”で着るの。いいでしょ?」

今までもずっと大好きで
大好きだよって言ってきたけれど

違う好きだって言う感情は
ことりの身体には毒に等しい想いだから


「わかりました。じゃぁ、穂乃果の分も買いましょう。3人お揃いにしたら穂乃果も喜んでくれるはずです」
「………うんっ!」

大切な幼馴染の
初めての恋を守るために


ことりは自分の初めての恋に
毒と名付けた

時々奥歯に近いよくわからない場所が
こうやって痛みを発するけれど


毒が全身に回るようなことさえしなければ

この毒をことり自身が飲み込みさえしなければ

大丈夫
ずっと傍にいられる

ずっと





205年7月26日:本日のお題「恋の訪れ」
海未 ことり 穂乃果

でした。穂乃果出てきませんでした。
関連記事

*    *    *

Information

Date:2015/07/26
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/608-9c7fec2b
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)