【緋彩の瞳】 歌ってあげる (まきうみ)

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

歌ってあげる (まきうみ)

【付き合っている設定です】


真姫ちゃんと海未






最終予選を新曲にする。

ニコちゃんの提案に周りも当然と言ったような流れだった。PVやライブ映像として作った曲はほとんどネットに流してしまっていたけれど、2、3曲はまだ学校外には知られていないものもあるのだから、完成度を上げてその曲で勝負した方がいい。真姫は本当にそう思った。それに、ラブソングなんて提案する希や、それに賛同するエリーの意図がわからない。なぜ、今更になってラブソングを歌わなければいけないのか、ラブソングを歌って誰に何を伝えたいのか、そう言うことの全部が不透明だと思った。
それに、海未の今までの歌詞じゃ勝負できないと言われたような気がして、内心腹立たしいとさえ思った。



海未がラブソングを書かないのは、書けないからじゃなくて、この9人で歌う今の状況で、書く必要性なんてないからに決まっているのに。

それに、海未は……


「大丈夫、海未?」
「………真姫」
書けないことにされて、恋愛経験がないからだと周りから少し笑われた海未は、しばらく部室の隅っこで体育座りをしていじけていた。これはこれでメンドクサイ人だとは思うんだけど、前のことりみたいに無理やりにでも歌詞を書かせたりしない限り、誰ひとりとして自ら作詞しようとしないんだから、海未を責めるのは筋違いなのに。
「別にラブソングをやる必要なんて、ないと思う」
膝に顔を埋めているその隣に座り、真姫はヨシヨシと頭を撫でた。海未はみんながいた時はムキになっていたけれど、歌詞作りという繊細な作業をする間、1人でいつも悩んだり落ち込んだりしている。真姫がピアノを弾いている傍で小さく膝を抱えていたり、誰もいなくなった部室の端っこで、今みたいにじっとしていたり、家にいても電話がかかって来て、言葉の響きをどう思うか、なんていうことを聞いてくることも少なくはない。穂乃果もことりも幼馴染だから、そうやって必死に歌詞を作っていることを知っていると思っていたけれど、どうやらわかっている様子じゃない。
「ですが、みんなが望んでいるのなら、やはり優勝するためには必要なことなのでしょう」
「でも、書けるの?」
「絵里には土曜日いっぱいまで考えるって伝えました。無理しないで、みんなで考えればとは言われています」
落ち込んでいると顔に張り付けて、それでも気を遣って無理やり笑おうとする海未。スランプだなんて騒いだこともあったけれど、その時だって結局スランプは1日で脱したし、今までの曲全部、決められた期日までに、必死になって歌詞を作って来てくれた。
「私は別に新曲じゃなくってもいい。私が曲を作れないって断りましょうか?」
「いえ、みんながラブソングを歌いたいと言うのであれば、その希望を出来る限りは……」
「でも……海未は書けるの?」
書けないからこうやって、膝に顔を埋めているのに。
「恋をしていないから、ラブソングを書けないと言うわけじゃないのです」
「…………うん、知ってるわ」
黒髪をそっと指先に絡ませても、サラサラと逃げて行く。それでも真姫は何度も髪を指に絡ませて撫でるように梳いた。そうすれば、困った眉毛が落ち着いた笑みを見せてくれるって知っているから。
「真姫……好きだと言う感情は、誰かを想うと言う感情は、一個人のものだと思うのです。言葉にして伝えたい想いを9人で歌うと言うことに、私はどうしても違和感を覚えてしまいます」

真姫の大好きな海未は
真姫の想いを受け取ってくれた海未は
恋という感情をμ’sの歌にしたりしない

「……私は海未が好きだから、海未のことを想って曲を作ってるわ」
海未の言葉に曲を付ける。その作業がとても好きで、いつも海未のことを考えてしまうのだから、その感情はしっかりと音符に残されている。誰も気づいたりすることなんてない、真姫にとっては全部、海未のための曲みたいなもの。
一生懸命歌詞を考えてくれた海未を、いつも、好きだと思っている。
「真姫はそれでいいんです」
「なんかズルい…でも、海未がラブソングを作ったら、私以外の誰かが歌うのも嫌だし」
「ですから、作りませんよ。作れません。真姫がくれた感情以外、私は恋を知りません。それに、一般的なものをイメージしてと言われても、私は知りたいと思いませんし、きっとわかりません」



大好きになったのは真姫から
凛々しくて真っ直ぐで
素直で優しくて
海未の書く詩のすべてを、真姫は自分へのエールだと思い込みながら曲を作っていた
だから、3曲目あたりからもう、言わずにいられなかった


海未が好き
海未の歌詞も好き
海未と一緒にいたい
2人きりの時間がたくさん欲しい


「海未って、恥ずかしげもなくそう言うことを口に出すから」
「……そうでしょうか。私は私が恋をしていないとみんなに決めつけられたことで、真姫が怒っているのではないかと、少し不安でした。あの時、真姫がムキになって何か言いだすかもしれない、なんて」
「なっ!そ、そんなことするわけないでしょ。むしろ、こっちこそ、海未が余計なことを口走るんじゃないかって、内心ドキドキしていたんだからね!」

μ’sのことが大好きで、今がとても大事だって言うことはわかっている
だから、絶対に誰にも言わない
幼馴染であっても
仲間であっても
どんなことがあっても、誤魔化してでも、認めない

だから、海未を好きでいさせて欲しい
傍にいて欲しい
こんな想いに応える形で、海未は真姫を抱きしめてくれた
穂乃果の我儘を飛び越えた人物は真姫が初めてだと、笑いながら


「私は大丈夫です。そのあたりは徹底しています」
「わ、私だって!」
頬に空気を貯め込んでふて腐れて見せると、冷たい指先でつつかれた。
「……真姫、明日おうちに遊びに行っても構いませんか?」
「え?構わないけれど、まさか、無理にでも歌詞を書くの?」
「いえ、それはやはり時間を掛けて考えなければなりません。絵里たちも、私が書けないということを、真実は別としてわかっていますから、何かしら方法を考えてくれるでしょう。ですが、新曲という可能性がある限り、曲を先に作らないといけません」
つまり、部屋でイチャイチャしようというお誘いじゃなくて、真姫の家のピアノで作曲作業をしようということらしい。
「うぇぇ…曲作り?デートとかじゃなくて?」
「曲作り、というデートです」

何それ
意味わかんない

いや、海未の考えそうなことだけど


「……じゃぁ、歌詞はひとまず置いといて、曲は作るから。でも、新曲で勝負するかどうかは、日曜日に改めてみんなで話し合いましょう」
「そうですね。私は別に真姫が詩を書いてもいいとは思いますが」

ラブソング

「うぇぇ~?!無理!無理無理!それ、無理に決まってるでしょ!」
「……顔が赤いです」
両手が頬を包んで、その真っ直ぐな瞳が真妃を見つめてくる。
ドキドキして、体温が上がったのは海未がとても近いから。
「な、何よ!わ、私だって、書けないわけじゃないけれど、みんなに歌わせたくないだけなんだから」
「そうですか?そうですね。真姫はきっと、大好きだって沢山言ってくれるでしょうから」
「べ、別に!一般的なラブソングだって、書けなくはないけど!」
「じゃぁ、書いてくれますか?」
「……そ、それとこれとは別なの!」

本当に大好きな人がいると
一般的なラブソングなんて無理に決まっている
全部が海未への想いになる自信しかない
そんなものをみんなに歌わせたくはないし、出来れば海未にだって歌わせたくもない
恥ずかしすぎて、死んでしまう

「可愛いですよ、真姫」
「ば、ばかっ!海未はまた、そう言うことをさらっというんだから。そういうところが、タラシなの」
「そんな、私は思ったことを言っただけです」
「そうやって、他の1年生にも可愛いとか綺麗な瞳とか、言い回ってるんじゃないの?」
「そんなことしていませんよ」
本当は裏が取れているけれど、全員勘違いして告白しては振られているらしいので、今のところ、真姫も見てみぬ振りをして信じている。真姫に相談してくるような人までいて、ちょっと心の中では自慢だったり苦しかったり。
「……はぁ。海未、もうそろそろ帰りましょう?」
「そうですね」
「ん」
先に立ち上がって手を差し出すと、キラキラした瞳が真っ直ぐに見つめてくる。
「真姫」
「なぁに?」
「いいえ。ただ、可愛いなって思っただけです」
「………タラシ」
繋がれた手は、それほどきつく握られてはいない。
柔らかく優しく海未らしい気の使い方。

「………ねぇ、いつか私だけのためにラブソング作ってって言ったら、海未は歌詞を書いてくれる?」

仲間からは無理だと笑われていたはずの海未は
少しだけ頬を赤く染めて繋いだ手をきつく握りしめた

「真姫が作曲をして、真姫がソロで歌うのなら」
「……海未が歌ってよ」
「真っ赤な顔をして歌う真姫を、じっと見つめていたいんです」
「何それ、意味わかんない」

想像したらそれだけで恥ずかしくなってきて
海未の肩に顔を埋めて抱き付いた

「可愛いですよ、真姫」
「……そこは、大好きって言うべきよ」
「そうですか?」
「そうよ」
「真姫のことが大好きです」

嘘を吐いたことが一度もない
そんな純粋無垢な瞳

「………歌詞に私の名前入れちゃだめだからね」
「気を付けます」


じゃぁ、大好きは入れましょう

平気でそう言うことを言えるんだから
本当
変な人を好きになってしまった自分が、不思議で仕方がない


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Date:2015/07/28
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