【緋彩の瞳】 ♭【フラット】 ⑦

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

♭【フラット】 ⑦


「海未、真姫」
被服室の方から、絵里の声が聞こえてくる。採寸が終わったのだ。憂鬱な想いを抱いた海未が絵里の声に反応して、わずかにまつ毛を震わせた。
「どうするの?ねぇ、海未。もう、ユニットはやめましょう?やめるべきだわ」
「……ですが…」
「もういいわよ。あなたはよくやったわよ。ユニットを辞める理由なんて、なんとでもなるし、元々、私もやりたかったわけじゃないし、私が適当にみんなを説得するわよ」
ひとまず絵里のところに顔を見せて、ことりの採寸を断らなければいけない。真姫はそっとそっと海未から身体を離した。足元へと落とした視線は、真姫を見つめてはくれない。
それでもいい。
「海未、私はどんなことがあっても海未が好きよ」
「……真姫?」
言葉の意味なんてきっと正しく理解してくれない。それでもそうやって視線を上げてくれるのであれば、真姫を少しでも見つめてくれるのであれば。
「この私が海未を守ってあげるから」

ことりも絵里も海未が好きで
好きなのに、海未を苦しめていく
好きだと告げればいいだけなのに

もう、2人とも想いを告げることが許されない場所に立たされた
たった1つの嘘のせいで

ことりは自らが招いたこと
絵里はせっかくの両想いを素知らぬふりしたせいで
ことりに想いを摘まれてしまった

絵里が
絵里だけが恋人になれたと言うのに




「あ、真姫。海未も。ここにいたのね」
「………絵里」
「ちょうどよかったわ。海未、話があるの」
絵里が2人の前に姿を現して、真っ直ぐに海未だけを見つめて近づいてくる。


“明日の午前中がリミット”

真姫は自分が昨日、絵里に伝えた言葉を思い出した。

「絵里、待って」
「何?真姫、これは私の問題よ」
「違うの、ちょっと、待って!ユニットのことはまだ、考え直す。気が変わったから、リミットはもう…」

やめてあげて
海未をもう傷つけないでよ

一大決心をしたような絵里の瞳は、ただ真っ直ぐに海未を見つめている
互いに想い合っている

想い合って“いた”

「真姫、黙ってて。別にあなたに言われたからじゃない。これは、私の気持ちなの」
「だって、ことりがっ……」

海未に嘘を吐いたから

2人の間に割って、海未を守るようにして見せたけれど、そんなことをしても無力で、絵里は海未の腕を引っ張って、真姫を睨み付けて身体を押した。
「待って、絵里!」
「……あの、2人とも?」

真姫が絵里に余計なことを言ったせいで
でも、ことりが嘘を吐いているなんて知らなかったから
知っていたら
こんなことにならなかったのに


「海未、私はあなたが好き。ずっと好きだった。私の恋人になって」


止められなくて
絵里のハッキリとした清々しい想いの言葉は
塞ごうとした真姫の耳を抉るよう響いた


「……………どういう………こと、ですか?」

海未の震える声
知りたくはなかったと思っているからだろうか
この状況に混乱しているのだろうか
今更、もうすべてが遅いと嘆いているのだろうか

「あなたが好きなの、海未。μ’sのことが大事で、仲間で恋愛のことで、色々あると困るなって思って、今まで言えなかった。でも、やっぱり私は海未が好き。ずっと海未のことを意識してい…」
「やめてください!!そんなの、聞きたくありません!」
必死に思いを告げる絵里の声は、海未の悲鳴によってさえぎられた。

ぐっと耳を塞いで痛みを吐き出すように、絵里の恋情を断ち切ったのだ。

「………海未?」

呼吸を苦しいと感じるのはどうしてだろう
真姫はただ、観ているだけなのに

「ズルいです……絵里……どうして……今、…今…それを言うのですか。……私は、……私は…」
「海未?」
逃げるように階段を駆け下りて行く。ただただ、呆然として絵里は声も出せずに立ちつくしている。すぐに追いかけたくても、真姫もまた、足がすぐには動いてくれなかった。
「……絵里と海未は、恋人同士にはなれない」
状況を理解できずにいる絵里は、口をぽかんと開けて、真姫に向かって首をかしげる。
「ユニットも白紙に戻しましょう。ねぇ絵里、海未は確かに絵里が好きだった。でも好きでいられない状況にさせられたの。ことりがそうさせたの」

付き合えると思って告白した絵里に、同情してしまっている自分がいる。
絵里にそうさせたのは、真姫だから。
あの時はそうするべきだと思っていた。
知らなければ、あんな嘘さえなければ。

「……言ってることがわからない。真姫、あなたの言っている意味がわからないのよ。ねぇ、私たちは両想いだったのでしょう?海未は私を好きでいてくれたはずよね?」

確かに両想いだった。それはさっき、真姫がちゃんと海未の言葉で確認した。
憶測ではなくて、ちゃんと事実として聞かされた。
絵里の気持ちも。


誰かが、本当に自分の想いをちゃんと粋な人に告げておけば


あぁ、せっかくそれが許されていた絵里の想いは
伝えたところで、実ることはない

海未を苦しませるものでしかない

止められなかった自分が嫌になる
守ろうって決めていたのに
海未を守ろうって思っていたのに


それなのに
このタイミングで絵里が
いや、真姫が絵里をけしかけてしまったから




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Date:2015/09/06
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