【緋彩の瞳】 ♭【フラット】 ⑧

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

♭【フラット】 ⑧

「説明して。ねぇ、どうして……海未に何があったの?何を話していたの?どうして海未は逃げたの?どうして、私はズルいって言われなきゃいけないの?」
「………ことりに聞いてよ。私は……わからない」
絵里が知ってしまえば、μ’sはどうなってしまうだろう。
ことりは絵里に、また何か、嘘を吐くのだろうか。
嘘に嘘を塗りたくってしまうのだろうか。
「……絵里、きっと告白するのが1か月早ければ違ったわ」
「どういう…」
一筋の涙が綺麗なロシアンブルーの瞳を霞ませている。真姫は海未の後を追いかけるように走った。見ていられなかった。
励ますこともできないし、ごめんねって言うこともできない。
何も、言葉が浮かばない。



「絵里ちゃん」
「…………ことり」
「真姫ちゃんと海未ちゃんは?」
寒い、と思った。
今は夏だっただろうか、いや、真冬だっただろうか。半袖から出ている腕も足の小指も冷たいって感じているけれど、瞼だけは熱を帯びている。
「絵里ちゃん、どうしたの?どうして泣いているの?」
「………ことり」
きょとんとした表情は作り笑顔すらない。止める権利はないと言っていた彼女は、絵里が振られると言うことを知っていたのだろうか。
知っていたに違いない。
そう思えて仕方がなかった。

「……ことりは知っていたの?」
「え?何を?」
「だってあなた……」

ことり、あなたは……何を知っているの

どうして
どうして
どうして


「絵里ちゃん、どうしたの?」
「……ことり、海未に何かあったの?」
「何のこと?」
色のない微笑み。誤魔化すように笑うのではなく、後ろめたさと言った笑みでもなく、冷たく微笑む。ひどく痛々しいとさえ思えるくらい。
「穂乃果や海未は、そうやって笑えば許してくれるでしょうけれど、私は違うの。海未に何があったの?海未との間に何があったの?」
「えっと……何のことなのか、ことりにはわからないんだけど」
「海未が私を……」

両想いじゃなかったとでも言うの
いえ、海未はいつだって絵里を想って見つめてくれていた

「海未ちゃんが、絵里ちゃんを?どうしたの?」
「……ことりは海未が私を好きだって知っていたわよね」
「うん………」
「真姫だって、海未が私を好きだと言っていたわ」

海未は、絵里を好きだった
好きでいてくれていた

どうして想いを受け取らずに走り去って行ったの
苦しそうな表情を見せて
断ち切ろうとするように

「でも、真姫ちゃんだって、本人に聞いたことないんじゃないかな」
「………どうして」

想いを受け取ってもらえるという、揺るぎない自信は
そもそもどこから湧き出てきたのだろう
何を確信して、想いを告げたのだろう

今更になって
振られる可能性を消していたということに気が付いた


「海未ちゃんは絵里ちゃんを好きだと思っていたよ。でも、本人になんて聞いてない。それに私は、私は、そんなの……聞けるわけないよ」
海未が好きなことりは、海未が誰を好きなのか、本人に問い詰めることなんてできるわけもない。分かっているからこそ、想いが募り続けて行ったのだろう。
「………そうね」
「知りたくもないことだもの」
「………そうね、ごめんなさい」
ことりに確認をしたところで、たった今、絵里が振られたと言う事実を変えることなど出来るわけがない。真姫が言っていた、1か月前にという意味はどういうことなのだろうか。それは真姫に聞けば教えてもらえることなのだろうか。
どんな事情があれば、振られたということを覆すことができるのだろう。
海未にちゃんと理由を聞くしかない。
聞くべきは、海未だけだ。

「………ねぇ、ことり。やっぱりあなたは、海未に好きだと言うべきだわ。想いは言葉にしなければ伝わらない。周りの考えや勝手な憶測とか、思い込みで、その想いを殺したままでいて、あなたはそれでいいの?傷ついたとしても、想いを伝えなければ、始まることもないのよ」

海未がなぜ絵里の想いを受け入れてくれなかったのかわからない。海未は、もしかしたらことりの想いを知っていたのかもしれない。知っていて、悩んでいて、ことりのために、絵里の想いを受け入れられなかったのかもしれない


海未に聞かなければ何もわからないと言うのに
そう思えてならない

それしか、辻褄が合わないのだ
でも、そんなことは……


「……絵里ちゃん、海未ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「えぇ」
「私も、大好き。凄く好きだから、ことりが告白をしたら、海未ちゃんがどういう態度になるかくらい、わかってる。ずっと傍にいたんだもん。海未ちゃんの優しさが残酷だっていうことくらい、知ってるよ」
「…………そうね。あなたは海未を守りたいの?それとも、海未から欲しい愛がもらえないのが嫌なだけなの?」


海未を混乱させたくないから告白できない
海未から、欲しい愛がもらえないから告白できない

それは同じものではない




「何が嫌とか、そんなのないよ。海未ちゃんはずっと、私の友達としてこれからも傍にいてくれるもの」
「………それが嫌なこと、じゃないの?」
「どうかな。そうかもしれないね。でも、海未ちゃんだもん」

絵里が振られたのは、ことりのせいなのか
いや、絵里自身のせいだ
絵里が海未を好きだと思ったときに、ことりの恋心を気にしないで
自分の想いと向き合うべきだったのだ
相談を受けたことが、真姫の言うように牽制の意味だったとしても
堂々と、自分も海未が好きだと言えばよかったのだ

「………私は海未を諦めたくないわ」
「それは絵里ちゃんの自由だけど、でも、海未ちゃんは一度決めたことは変えないよ。絵里ちゃんが思えば思うほど、海未ちゃんは苦しむことになると思う」
「それは、海未の親友としての意見?それともライバルとしての意見?」
無理やり口角を上げて笑おうとしていることりの表情には、温度も色もなくて

あるのは

一筋だけ溢れて零れ落ちた涙

「海未ちゃんは、ことりのことを大切な親友だって思ってくれるのに、ことりは海未ちゃんを傷つける存在でしかないよね。そんなのって親友でもないし、絵里ちゃんのライバルですらないんじゃないかな」

親友でいることも辛い
恋人になれないことも辛い
海未が誰かを好きになることも辛い
でも
離れたくはない
海未が離れてはくれない

「ことりが誰を好きなのか、海未は知っているのね?」
「さぁ……………どうなのかな」






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Date:2015/09/06
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