【緋彩の瞳】 恋人占い ①

緋彩の瞳

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みちる×レイ小説

恋人占い ①

「………あ~、バカバカしい」
どうしてこんな仕事をやるはめになったのだろう。今更ながらに深いため息を吐いたところで、逃げられないってわかっていても、やっぱりため息を吐かずにはいられない。

いかにも“怪しげ”としか言いようのない、アラビアン的なコスプレをさせられて、小さなブースに押し込められているのは、罰ゲームのようなもの。
隣街のイベント会場に設けられている占いコーナーのブース。隣は水晶占いのおばさん、その向こうは自称霊感占いというおじさん。
レイはタロット占いという名目で、かれこれ3時間ほどじっと座っている。
時給は5,000円だった。占い料金は10分1,000円だけど、こんなところに人が押し寄せるわけもない。これはおじいちゃんが知り合いに頼まれて、酔っていた席でOKしてしまい、引くに引けなくなってレイに縋って来たという結果だった。時給5,000円はレイがおじいちゃんから報酬として受け取るものであり、客が1人も来なかったとしても、きっちりと払ってもらう契約を交わしている。

「………占いを信じる人って、どれだけ他力本願なのかしらね」

さっき、中学生らしき女の子が好きな人のことを相談しに来た。
その彼とうまくいくにはどうしたらいいのって。
自分で考えたらいいのにと声に出しそうなのを、フェイスベールの奥に隠してタロットカードを切る。タロットカードに頼らなくても、見えるものも多少はあるわけで。
想い人に気持ちを送っているその子の愛情は途切れていた。上手くはいかないだろう。
だけど、おじいちゃんから占いではダメなものをダメだとはっきり言うな、と言われている。
お金を払ってきている人には、少しでも希望を与えてやるべきだ、と。
だから、今は愛情が届いていないけれど、想いを伝え、願い続けたら希望の光が差し込むかもしれない、と言った。真剣な眼差しで見つめられると、本当にこんないい加減なことを言ってもいいのかって思わずにはいられないけれど、“がんばります”なんて言って帰っていくものだから、お大事に、とも言えずに頭を下げるしかない。
これも商売だし、なんて心の中で言い訳をしつつ、今は少しお客が途絶えている。

そういうわけで、ため息を吐きながらも、客を待ちわびているのだった。
せっかくみちるさんと会えるチャンスだったのに、こういう日に限ってデートをキャンセルしてしまうなんて。
ただでさえ、もう2か月ほどまともなデートをしていないのに。3日ほど前に今日のデートができなくなったと言う連絡をしたときに、電話で口論になった。いつもレイはみちるさんの仕事に合わせているから、夜遅かったり、土日に会えなかったりしても仕方がないと思っている。ここ2か月デートがないのは、春のコンサートやリサイタルがいくつかあるために、レイの学校が休みの日にはみちるさんは舞台の上っていうのがずっと続いていたからだった。もちろん責めたりはしない。レイは必ず観に行くようにしているし、電話も2~3日に1度は必ず自分からするようにしている。
だから、レイの方がデートをダメにしたことで、みちるさんから責められるなんて思ってもみなかった。それでやり合ったのだ。
確かにみちるさんはデートを約束してキャンセルをしたことは、ほとんどない。真面目な人だから、キャンセルをする可能性がある日にデートの予定を立てたりしない人なのだ。でも、だからこそ、2か月の間、デートができなかったともいえる。平日の夜のたとえば、2時間だけとかでも、会ってどこかでごはんを食べたり、あるいは家でのんびりしたりする誘いなんてこの2か月は一度もなかった。みちるさんは個人レッスンなどもちゃんとしているし、体調管理も怠っていない。わずかな隙間なんてほとんどないし、あるのなら特にこの忙しい時期だから、身体を休めることに使っているはず。
そう言うところも好きだと思える。でも、レイと言う存在が支えになっていないような気がしてならない。
レイが存在しなくてもいいのではないか、と思うこともある。


「自分のことを棚に上げて、私がどうしても都合がつかなくなったら怒るって、ずるくない?」
言った後、レイだって言い過ぎたって心の中で思ったけれど、言い放ったものは巻き戻しができない。
『ずるいですって?私はレイとの約束を反故にしたことはないでしょう?』
この土曜日の休みを取るためにマネージャーさんと色々やりあったらしい、ということは聞かされていた。みちるさんみたいな音楽家は、土日にコンサートを開くことは当然なのだから。せっかく取れた休みにレイと一日デートすることを、楽しみにしてくれていたことだってわかっている。
「いつだって、みちるさんの都合に振り回されているのは私でしょう?私だって好きでキャンセルするわけじゃないわ」
もちろん、みちるさんに振り回されているなんていうのは大げさな表現であって、それでもみちるさんと想い合っているのだから、それが嫌で別れたいなんて思わないし、仕事を減らして欲しいというわけじゃない。本来なら怒りの矛先はおじいちゃんだけに向けるべきであり、みちるさんには謝り通すしかないのに。






「……今頃、何してるのかしら」
まともなデートができるのは、次はどれくらい先になるのだろう。
2か月待ってやっとだったのに、また2か月待たないとダメなのかもしれない。その頃になったらレイの苦手な夏が来てしまい、クーラーの前から動かない日々が終わると秋になって、そしてまたコンサート続きになって、会えなくなってしまう。

最後に聞いた声は怒っていて、悲しそうで、辛そうで。
本当のところを言えば、人の恋愛相談ごとなんて聞いている場合ではないのに、これが原因であんな風になったわけだから、逃げ出すこともできなくて。
「……向いていないっていうのは、わかってるのに」
恋愛なんて、自分には向いていない。
人を好きになってしまうのが怖いと思っていた。
その人のすべてを自分だけのものにして、その人しか世界にいなくてもいいと思ってしまうことが怖い。その人をダメにしてしまうだろう。
その人の手首を縛って、自分の傍にいてと願ってしまうだろう。そして、嫌われてしまう。恋なんてしなくても、生きていける。誰かから愛されなくても、生きていける。
そう思っていたのに。
マナーモードに設定してある携帯電話は、誰からも着信がないようで、小さなライトも点滅はされていない。それなのに画面を確認してしまう。

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Date:2015/09/13
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