【緋彩の瞳】 恋人占い ②

緋彩の瞳

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みちる×レイ小説

恋人占い ②

その後も2人のお客さんが来た。不倫をしているというOLと、彼氏が浮気をしているかもしれないという女子大生。どっちとも、別れた方がいいに決まっているようなことで、何をどうしたくて占いにやってくるのかが不思議だった。略奪をしてもその人とは結婚できないですよ、とアドヴァイスして、浮気男は、浮気の相手は4人くらいいて、あなたは優先順位の中で最下位だと伝える。いくらおじいちゃんからは、期待を持たせるようになんて言われているからと言って、幸せになれない道を辿ることを励ませるわけもない。2人とも悲しそうな顔をして帰るけれど、自業自得なのに、なんて思わずにいられなかった。

自業自得とはレイに向けて言うべきことだって、十分にわかっている。


「あの、よろしいですか?」
2人の客が帰り、10分ほど間が空き、暇を持て余していたころに、またお客さんが入って来た。
「…………」
咄嗟に自分のオーラを消した。フェイスベールはよほど近づかない限り、相手に顔を見られることはない。レイはうつむいて、手を椅子に向けた。
声を聞いた瞬間に、ずっと想っていた人の声だったから背筋が凍った。わかっていて入って来たわけじゃないということは、最初の一言で分かったから、わずかに身体を震わせながらも、正体がばれないようにとみちるさんを座らせたのだ。


占いが好きだなんて、聞いたことないのに。



「付き合っている人のことで………」
「……………何を、占いますか?」
声色をどうやって変えようか。レイはできるだけ低めを意識して、みちるさんの顔を見ないようにうつむいたままタロットカードを手にした。

怖かった。
別れたいんです、なんて言われたらどうしよう。
頭の中はそれしかなかった。
そんなことを考えているから、血迷った挙句にこんな隣町の嘘くさい占いブースに入って来たにちがいない。誰でもいいから、とりあえず話を聞いて欲しいって思ったんだろう。美奈やはるかさんたちのような励まししか言わない友達じゃなくて、誰も事情を知らない人に話を聞いて欲しいって思ったに違いない。占いはそういうところでもあるから。



「あの子が……私をどう思っているのか……わからなくて」



……好きなのに


レイはタロットを切れなかった。自分自身のことを占うときは無心にならなければならないが、こんな状況でとてもじゃないけれど、できるわけがない。ましてやみちるさんの前だと言うのに。そしてみちるさんのことだって、占えるわけもなかった。どんなカードが出ても、いい解釈をしてしまうに決まっている。
「……わからないっていうのは、どういうことでしょうか?」
「あの子が私のことをどれくらい好きなのか…。わかっているつもりでいたのですが、あの子は口に出さない性格で……」
ごめんなさい、と思わず声に出しそうになった。不安にさせてごめんなさい。めんどくさい性格でごめんなさい。昨日の電話での喧嘩のあとも、みちるさんはずっと悩んでいたのだろう。レイがウジウジして夜を過ごしたように、みちるさんだってあれだけ口調をきつくしてレイを責めていたのだから、穏やかに眠ったとも思えない。顔を覗きこみたいけれど、視線が重なってしまえば、いくらフェイスベールをしていても、正体がばれる気がしてそれも簡単にできない。
「……それで?」
レイは続きを求めた。みちるさんが何を求めているか、レイにどうしてほしいのか、ちゃんと聞きたい。
「私は…その……仕事をしていて…忙しくてゆっくり会う時間がなくて……。そのせいであの子に寂しい想いをさせていることはわかっているのですが……寂しいとか、会いたいとかも言ってくれないし、もう、2か月くらいまともに会えてなくて。それなのに……やっと取れた休みに、予定を入れられて。避けられているのか、本当はもう、好きじゃなくなってしまったのかと思うと……」
みちるさんは昨日の電話で、レイは私に会いたいと思わないの?と聞いてきた。
それを聞いて腹が立って、何も言わずに電話を切った。
会いたいと言う気持ちを毎日どれくらい抱いているのか、みちるさんにはわかってもらえないし、それを押しつけることができないと思っている。
「思うと………どうなんですか?」
みちるさんは、うつむいているレイをじっと見つめている。レイはまだ視線を合わせられない。
「…………私、あの子に嫌われていませんか?」
「それを知りたいんですか?」
「あの子が…私に本当は何を望んでいるのかを知りたいんです。大人びた、物分かりのいい子だから、表面上は何もないような態度ばかりだけど、昨日電話で喧嘩して……。レイが…あの子があんな風に怒ったりするなんて思わなかったんです。本当はもっと言いたいことを我慢させているような気がして……私では、それを受け止めきれないと思われているような気がして」

何も言えなかった。
みちるさんにはできる限り物分かりのいい恋人だと思われたいと思っている。みちるさんの仕事が忙しいことも理解しているし、みちるさんの都合に振り回されていることも仕方がないと、自分に言い聞かせるようにしている。
こんなアルバイトさえしていなければ、今頃は植物園にでもお弁当を持って出かけていたに違いない。今日という一日をみちるさんの笑顔で満たして、みちるさんの匂いで身体を満たして、またしばらく続く会えない日々を耐えられるように、みちるさんを求めただろう。
「あなたの身体からは、その人があなたを嫌っているというオーラは見えませんよ」

レイはみちるさんが好き
出会った時からずっと、みちるさんだけが好き
だけど、好きだから苦しいことはある
でもそれはレイの我儘だから
「…………本当ですか?」
「えぇ」
「じゃぁ……あの子は私に何を望んでいるんでしょうか?」
それはレイが聞きたい。レイだってみちるさんに何を望んでいるのか、わからない。
それよりも、許されないものを望んでいるからダメなんだと思っている。
ヴァイオリニストの海王みちるも愛している。困らせるようなことを、負担になるようなことを考えるなんて、相手としてふさわしくないのだから。フェラーリで送り迎えをしてあげられる能力なんてないし、夜明けの海を観に行きたいって言われても、連れて行ってもらう側でしかいられないだろうし。だからせめて、物分かりのいい、理解ある恋人であろうとしている。
飽きられないように。嫌われないように。

でも

結局それが苛立ちになって、苦しみになって積っていくことくらい、わかってる。
みちるさんは、そんなレイの気持ちをどれくらいわかってくれいているのって我儘な気持ちを持ってしまう。

「あの?……」
黙っていると覗きこむようにみちるさんが顔を近づけてきた。
うつむいてはずしていた視線が、うっかり重なった。



……
………



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Date:2015/09/15
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