【緋彩の瞳】 ファースト・キス コンツェルト ①

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

ファースト・キス コンツェルト ①

「凛、ちょっとこっちに来なさい」
「う~~み~~ちゃぁ~~ん」
夏休みもあと1週間でおしまい。毎日変わらずに、ダンスと歌のレッスンが続いている。挨拶の代わりに暑い暑いを繰り返して、昨日からの挨拶は“宿題終わった?”がチラホラと。絶対終わらせているであろうメンバー以外を狙って、凛が穂乃果とニコちゃんに声を掛けていたのを、運悪く海未に見つかってしまったのだ。

それが昨日のこと。

「あなたはもうダンス覚えているのでしょう?凛は部室で宿題です」
「にゃぁ~~。穂乃果ちゃんは?ニコちゃんは?」
「穂乃果は昨日の夜にやらせました。ニコは希が面倒をみます。今日はリリホワの練習はなしですよ」
「……うぅ」
クーラーがあるのだから、しっかり宿題をしましょう。そう言って海未は凛の首根っこ捕まえて引きずるように屋上から出て行く。同じように希に捕まったニコちゃんは、わしわしされて、すでに抵抗する体力もない感じで連行されていった。
あの様子では、このあとこってりと海未に絞られるに違いない。これから太陽がドンドン気温を上げて行って、屋上にいられなくなってくる。衣装作りや新しく振付を作っていく作業を凛たちの隣の部屋でやらなければならない。
「海未ちゃんがいてくれて、助かっちゃった。いつも凛ちゃん、9月10日くらいに宿題を提出していたから、今年はちゃんと1日に出せそう」
「花陽が手伝ってあげればいいんじゃないの?」
「うーん、一応言うんだけど、やっぱり海未ちゃんみたいにしっかりとやらせるっていうところまでは」
しっかり者の上級生がいるおかげで、凛も宿題クリアになるというわけね。っていうか、
残り1週間でやってないものがあるっていうのは、普通に反省するべき点だと思うんだけど。

ゾロゾロとほかのメンバーたちと広い部屋に入り、まずは衣装作りに取り掛かる。ことりが黒板にどの色の布を、どうやって裁断してというのを細かく書いていくのを見ていると、隣の部屋から海未のよく通る声が凛をしかっている声が聞こえてきた。
「海未ちゃん、今日も絶好調だね。昨日、穂乃果もこってりやられたよ」
「そうだね。海未ちゃん、凛ちゃんのこと可愛がってるからね」
可愛がってる?怒ってるようにしか聞こえてこないんだけど。凛が“にゃ~にゃ~”わめいてるのが聞こえないわけじゃあるまいし。穂乃果とことりが微笑み合うその様子は、それでも真姫とは違って、海未のことをよく知っていると言ったような顔付き。つまり海未はSっていうこと?まぁ、どうでもいいけれど。
黒板に書かれている数字をメモしながら、凛が“わかんないにゃ~”と叫び、そのたびに過去完了について懇切丁寧に説明している海未の声が良く聞こえてくる。
海未の声は綺麗で聞きやすい。芯がしっかりしているから、聞いていて心地がいい。
「真姫ちゃん、どうしたの?」
「ん?何が?」
「……あの、ほら」
海未の説明を聞きながら、きっとあのグラマーの問題集のあそこのページね、なんて思っていると、花陽が肩を叩いてきた。勝手に宿題に参加していたらしい。メモがいつの間にか英文に変っている。海未の説明を聞いただけで、すらすらと文章を作成してしまえる自分もどうかと思うけれど、それくらい海未の説明は凄くわかりやすということ。

まぁ、彼女は園田海未なのだから。
当然といえば当然で。
何て言ったって、あの園田海未なのだから。

「……いや、別に海未を褒めてるわけじゃないし?」
「え?な、何が?海未ちゃん?えっと、海未ちゃんの衣装は絵里ちゃんたちが布を切ってるけど」
「……あ、そう」
ところで、どの色の布を何センチ切るんだろうか。黒板には9人分みっちりと書かれていて、真姫のノートは英文だらけで。

……何からすればいいんだったか、わからなくなってきた。





「できたにゃ~!」
「よくできましたね。えらいですよ、凛」
衣装作りに2時間費やして、休憩に入る。真姫は絵里が休憩と言った瞬間に立ち上がって、隣の部屋の扉を開いた。
「う~み~ちゃぁ~ん。撫でて撫でて~」
「はいはい、もう、仕方ないですね」
裁断した布を繋ぎ合わせて仮止めをし、ことりがミシンで縫い合わせしていく。その間も海未の鬼教官の声と、時々ニコちゃんが“ぎゃ~”って叫ぶ声(たぶん、希にわしわしされてる)がしていたのに、突然静かになったから、ずっと気になっていた。
「………何なのよ」
泣きはらしてグズってるんだろうなって思っていたのに、満面の笑みの凛が海未の胸に頬を摺り寄せている。まんざらでもなさそうな海未は、よしよしと凛の頭を撫でて。
「どうしたん、真姫ちゃん。真姫ちゃんも、海未ちゃんによしよしされたいん?」
「はっ……はぁ?!意味わかんないし」
髪を指先に絡めながら、希の視線をかわして凛の隣に腰を下ろす。ちょうど海未たちの前。

余った椅子がそこだっただけで
いや、本当はたくさんあるけれど
座りやすそうだし
別にそれ以外の意味はないし

「あんた、何の用なの?」
「別に。今、あっちが休憩になったから」
「にこたちは休憩じゃないんだけど?」
「どうぞ、勉強したら?」
問題集を頭に乗せて、ニコちゃんは口をとがらせている。宿題をしていない分際で偉そうに。「真姫、ことりたちの作業は順調ですか?」
「え?あ、うん」
「そうですか。凛、では、私たちも休憩しましょう」
頭を撫でながら凛の保護者みたいな海未の表情。ぱ~っと幼稚園児みたいな表情をした凛がガッツポーズをする。
「飲み物を買いましょうか。凛、行きますよ」
「は~い」
どさくさに紛れてニコちゃんも休憩しようと凛と同じようなガッツポーズをしたところで、希にない胸をわしわしされてしまう。
「にこっち、さっき休憩したやん?」
「……鬼」
せっかく椅子に座ったのに。あっという間に海未の姿が消えてしまった。

何よ

せっかく
わざわざ
こっちに来てあげたのに

「真姫ちゃん、全部顔に出てるで」
「それでもって、相変わらず海未は気づいていないのよね。面白いわ」
「は?な、何のことよ?」
髪をいじっていると、指にグルグル巻きつけ過ぎて絡まってしまう。
「お願いしたらいいやん、私の頭も撫でてって」
「そうよ、頭を海未の前に付きだしたら?」
「だ、だから何よ!2人とも休憩じゃないんでしょ?べ、勉強しなさいよ!」
ここにいたところで、海未は凛と休憩に行ってしまったし、ダメンズ3年といるとろくなことにならない。せっかく座ったのを立ち上がるのは嫌だけど、ここにいることに何の価値も見いだせないから、真姫は隣の部屋に戻ることにした。
「あれ、行っちゃうの?何しに来たん、真姫ちゃん」
「何って、凛がちゃんと勉強しているか見に来ただけ。休憩なら、別に2人を見ていたって仕方ないし」
「海未の様子を見に来た、でしょ?」
「はぁ?ニコちゃん、説明聞いていたの?」

ふん。
イチイチ反応したら、勝手に話を作って面白がるだけ。



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Date:2015/09/24
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