【緋彩の瞳】 ファースト・キス コンツェルト ②

緋彩の瞳

その他×海未小説[ラブライブ!]

ファースト・キス コンツェルト ②

陽が傾いて、涼しくなった頃、衣装作りも区切りが付いて、またダンスレッスンを屋上で再開させることになった。今日はBiBiの練習をしようっていうことだったけれど、ニコちゃんは来るのだろうか。
「はぁ~~~。頭おかしくなるわ」
「あ、ニコちゃんが来た」
「何よ、来たら悪いの?」
「別に。宿題終わったの?」
ニコちゃんは笑って“にっこにっこに~”とポーズを決めている。終わったんだか終わってないんだか、わからない。
「海未は?」
「はぁ?海未?何よ~結局、にこのことじゃなくて海未のことを知りたいだけでしょ~。リリホワ3人は部室で振り写しやってるから、BiBiの真姫は邪魔できないのよね~、残念でしたぁ」
別にそれ普通のことなんだけど、わざわざ舌を出して挑発して言うことだろうか。真姫はニコちゃんのおでこにチョップをした。
「うわ!暴力!」
「何よ!」
「2人とも、練習の前から喧嘩しないの。まったく、どうしてうちのユニットはいつもこうなのよ。あぁ、うちにも海未が欲しい」

本当にそう思う。ニコちゃんと絵里の3人だと、まともなのが真姫しかいないから。
絵里はすぐにニコちゃんの雰囲気に流されるから、全然役に立たない。
ニコちゃんはいつもからかって楽しむタイプだし。
「真姫、心底海未がいて欲しいっていうのを顔に出し過ぎ。この可愛いニコがいれば3つのユニットの中では一番人気だから、大丈夫ニコッ!」
「……だ、出してないし!海未が欲しいって言ったのは絵里じゃない!」
イチイチ腹が立つ。
こんなんだから、BiBiはいつも、仕上がりが最後で、3人揃って海未に怒られるんだから。



「花陽」
「海未ちゃん」
次の日、午前中は昨日の続きでユニットの練習があった。お昼の時間になって部室に行くと、海未が花陽に声を掛けた。海未の手には、なぜかお弁当箱が2つある。何となく嫌な予感がする。いや、もう、嫌な予感しかしない。
「はい、これがお約束したものですよ」
「ほ、本当にいいの?」
「もちろんですよ」
「で、ではありがたく頂戴します!」
両手で1つのお弁当箱を受け取った花陽はキラキラと瞳を輝かせていた。あれは海未のお弁当箱なんだろうっていうのは、包みを見たらわかる。どうして花陽が海未からお弁当をもらうんだろう。
満面の笑みで大切そうに海未からもらったお弁当箱を抱いて、真姫の隣に座った。
見せつけてる?
まさか。
「花陽」
「ひっ!ま、真姫ちゃん……ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」
「いや、何?急に謝って」
「え?だって、何か凄く怒ってる…から」
「いや、何も怒っていないけれど」
別に、全然怒ってないけれど、ただ、どうして花陽が海未からお弁当を受け取ったのかを知りたいだけ。
「うぅ………顔がコワい」
「はぁ?怖くないでしょ!」
「ご、ごめんなさい……」
どうして謝られないといけないわけ。意味がわかんない。
「2人とも、どうしましたか?」
花陽が手にしている包みと色違いの巾着を持っている海未が、不思議そうに首をかしげている。
「べ、別に何でもないわよ!」

別に
花陽がうらやましいとか
腹立たしいとか思ってないし

「鈍感やなぁ。海未ちゃんが花陽ちゃんにだけお弁当持ってきたことが、真姫ちゃんは不服なんや」
狭い部室には全員が揃っていて、みんなそれぞれいつもよく見ているお弁当箱だったりパンだったり。希が余計なことを言って、明らかに馬鹿にした顔で笑っている。
「ちょっと!また勝手に話を作って!!」
希がニヤニヤ笑っている後ろで、ニコちゃんも笑うのを堪えているのが見えた。
本当、腹立たしい。
「真姫ったらさ~、普通に聞いたらいいだけなのにねぇ~~。っていうかジェラシーじゃないの~?」
「違うわよ!別に欲しいなんて思ってないわよ!」

ダン!!机を両手で叩いたら思ったよりも音が響いた。


なんとなく部室の中が静まり返ってしまう。

あっ!って思ったけれど。
音は取り消せないし勢いよく立ち上がったせいで、椅子も音を立てて倒れてしまって。

「真姫」

食事をしようとしているメンバーの手が止まって一斉に真姫を見る。
そして、静かな海未の低音が背筋を凍らせた。

「……ち、ちがっ……」
「真姫。大きな音を立てて一体何ですか?」

きつい視線と低音が響く声。ついさっきまでは、花陽に微笑みながらお弁当を渡していたはずの海未が、真姫を睨み付けてくる。

「……だ、だって!私じゃないもの!希とニコちゃんが!」
「大きな音を立てたのは真姫です。事情を話してください」

事情?
そんなのないし
別に嫉妬とかしてないし
ただ希がからかったっていうか
勝手に話を作ったっていうか
ニコちゃんだってはやし立ててニヤニヤしてるからっていうか


「真姫」
「………別に、私が悪いわけじゃないもの」
「では、希とニコが何かをしたというのなら、それを教えてください」

海未のよく響く声を聞き漏らすことなんてないから
自分だけを怒るつもりじゃないっていうのはわかるけれど
怒られることを逃れるためには、希とニコちゃんが真姫に何を言ったのか全部説明しないといけないし、っていうか言えるわけないし

言えるわけないし!


……
………


「な、何よ!海未が花陽にお弁当持ってくるのがイケないんでしょ!!!!!!!」




……
………


「…………えっと、すみません。意味がわからないので一から説明をしてください」
「す、す、す、するわけないでしょ、海未の馬鹿!」

自分がとんでもないことをぶちまけてしまった後、冷静な海未の声がさらに追い打ちをかけてくれた。真姫はいてもたってもいられなくなって、この全員が集まっている空間から逃げなきゃ、生きて行けなくなりそうで、慌てて部室を飛び出した。
「待ちなさい、真姫!」
待つわけないでしょうって心の中で突っ込んで、ムシムシとした廊下をひたすら突き進む。
どこに行けばいいのかわからないし、でもとにかくこの校舎じゃないところに行きたいし、なんだったらもう、家に帰ってベッドに突っ伏したい。

海未の馬鹿
希とニコちゃんがからかうのは海未のせいなんだから
海未が悪いんだから




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Date:2015/09/24
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