【緋彩の瞳】 In your dream

緋彩の瞳

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美奈子×レイ小説

In your dream

「あけおめ!あけおめ!!!ねぇねぇ、レイちゃんはどんな初夢見た~~??!」

初詣の参拝客は、バス停近くまでまで列を作っている。ゆっくりと動く列。参拝が終わった人たちはすぐに帰る人もいれば、せっかくだからとおみくじを引いたり絵馬を書いたりする人もいて、レイは何度もおみくじの引き出しを繰り返し開けていた。あまりよろしくない表情でこちらを睨み付けてくる人もいれば、まだ受験していないだろうに“合格に違いない”なんて、はしゃいでいる女の子もいる。きっと手を合わせているときも努力せずに神頼みしている人も多いのだろう。願いが叶わないからと言って恨まないでもらえれば、と思わずにいられない。

「新年のあいさつを省略するんじゃないわよ」

夕方、暗くなっても参拝客は少しだけ減ったものの、それでもずっと細くなっても列は続いていた。レイはおじいちゃんに言われた18時までのバイトを終えて、まともに昼ご飯も食べられないまま、空腹と疲れでフラフラ。

「あけちゃってから、レイちゃんの顔を見るまでに18時間かかりました。やっと会えましたね。おめでとうございます」

お年玉をもらったからだろうか、お正月休みだからか、いつも通りのような気もするけれど、無意味に高いテンションは、レイの疲れを増幅させるものでしかない。
「………はいはい。着替えるから、待ってて」
「手伝ってあげようか?」
「新年早々、ぶっ飛ばされる?」
「新年早々、押し倒そうか~?」

どこの神社に参拝すれば、この馬鹿を矯正することができるのだろうか。
あぁ、これが他力本願って言うものなのだ。
それに、この馬鹿はもう、どうしようもない。

「……ごめん、美奈。悪いんだけど、“すっごく”疲れているの。そう言うのはいいから、静かに待ってて。待てないなら、帰って」

昨日はほとんど眠ることなく準備に取り掛かり、陽が昇るよりもずっと早い時間から働いた。大声を張り上げるような仕事ではなくとも、ずっと声を出し続けるようなことをして、出来ればもう、誰とも会話をせずに蒲団の中に潜ってしまいたい。無理やりあげた頬の筋肉が痛い。

「…………どうも………すみませんでした」

声を出すことすら嫌というオーラを身に纏わせ、精一杯の軽蔑の視線を送ると、美奈の尻尾はわかりやすく垂れ下がった。

いつも思う。
怒られる前になぜ、わかろうとしないのだろう、と。


隣の部屋に入りぴしゃりと襖を絞めて、ダンスの中から部屋着を取り出す。袖に腕を通すことすら疲れを感じている。お台所には豪華そうなお重が手つかずのまま置いてあった。おせち料理はまだ、おじいちゃんも手を付けることができていないはずだ。空腹を満たせば、身体の疲れは多少取れるだろう。一度腰を下ろしてデニムをはくと、もう立ち上がる気力さえなくなるかもしれない。そう思って、立ったまま気力だけで着替え終わった。

隣の部屋は静か。
ちょっとくらい、反省してくれているはずだ。



「あ、レイちゃん!」

襖を開けたら、すぐそばに同じ目の高さに眩しい光。

「………美奈、私、朝から何も食べてないのよ」

当たり前のようにレイの冷えた腕を掴み、抵抗させない力で引き寄せられる。
ただ、本当に今は、もう押し返す力が出せない。

「げっ……そうか、お腹減って機嫌が悪いんだね」
「朝4時前に起きて、今までアルバイトしていたの」
「うわっ」
「あと、その美奈のテンション」
「何よ、いじわる」

こういうやりとりも、元気があればいくらでもネチネチと相手をしてあげられる。

今は無理。

疲れ切った身体を、恋人に抱かれて癒して欲しいなんて、そんなことを考える余裕もない。
これが暖かい布団だったらいいのに。
いや、ものすごく物わかりが良くて、出来ればここに食べるものを持ってきてくれて、お茶を淹れてくれて、お風呂も沸かしておいてくれて、至れり尽くせりみたいな相手だったらいいのに。



……
………


選ばれてしまったと、他人のせいにしてはいけない
この馬鹿を拒絶しないのはレイなのだから


「……わかったってば。その、静かに殺意を抱くのやめてくれない?」
「あぁ、よかったわ。この期に及んで耳元でキャンキャン言われたら、むしろ私が死ぬところだったから」
抱き寄せられた身体は抗えない。でも、だらりと落ちた腕で恋人を抱きしめ返せない。取りあえず、食べるものにありつかせてほしい。冷たくなった身体を温めるのは炬燵と食べ物だ。
「レイちゃんさ、正月から縁起悪いんだけど」
「冗談と思う?」
「冗談って思いたいけど、思えない」

いつも、張りつめた後の空気しか読めない馬鹿。
これも、もう慣れている。

「そうね、死にたくはないから、できれば放してくれない?おなか空いてフラフラなのよ」
「うん」

きつく抱きしめられた腕の力が抜かれると、亜麻色の髪に隠れていた美奈の、懲りない笑みが鼻先を突いてきた。

その瞬間、ふわりと温かい何かが、苛立ちのため息を飲み込ませた。



「初夢でさ、レイちゃんとキスしたの。凄く幸せだった。だからきっと、今年もいい1年だよ」


鼻先に触れている恋人の温かい指先はそっと、乾燥しているレイの唇をなぞるから


一瞬、目の前が真っ白になった


「…………それは、お幸せでしたね」
「うん。凄く、いい夢だった」
「キスなんて、別に」

キスをしたことがないような、そんなウブな関係じゃない。
当たり前のように身体を重ねる関係になって、2年以上は経っている。


「夢の中でも、だよ?しかも、初夢でキスしたんだよ。私きっと、レイちゃんに凄く愛されているんだと思うんだ。これはレイちゃんが見せた夢なんでしょ?」




「……私は夢を見る暇さえなく、忙しかったわ。大体、美奈……」



初夢は1月1日に見る夢じゃないわよ、馬鹿


そう言えないのは、カサカサで冷たくなった唇を、柔らかくて温かい唇が覆ったからだ。


支えられていなかった身体が
今度こそ本当に力を失ってヨロヨロと膝から崩れ落ちて行く
それでも冷えた唇は、温かさを放そうとしない



お腹空いているんだけど
疲れているんだけど
動けないんだけど


いろんなことを、この馬鹿に言ってやりたいのに
なぜだか潤不足の唇が、このままがいいって言うことを聞かないから

腹立たしいから、初夢じゃないって
教えてあげないんだから









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Date:2016/01/06
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