【緋彩の瞳】 相棒は君だ ②

緋彩の瞳

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相棒は君だ ②


1週間、アルテミスは家に帰って来なかった。美奈子は毎日遅刻をして、ママに叩き起こされて、部屋は散らかり放題。それでもガミガミうるさい猫が部屋にいない快適さは素晴らしい。こんなに静かだったとは。ベッドに寝そべって漫画を読んでも、誰も何も言わないなんて。本当に素晴らしい。
「さ~て。レイちゃんの家に行くかな」
1か月に1度くらいは美奈子の部屋にレイちゃんを呼ぶことはあるが、この凄まじいところにレイちゃんを呼べない。まぁ、会いに行けばいいだけ。1週間で足の踏み場もない散らかりよう。明日にでも掃除すればいいことだ。きっと、明日やる。アルテミスが愛用していたクッションを部屋の隅っこに放り投げると、ちょっと塵が舞った。

「やっほ、レイちゃん」
「あぁ。この寒いのに相変わらず馬鹿が付くほど元気ね」
「そう?会いたい気持ちが元気の源よ」
「……よくもまぁ、そういうことを平気で口に出せるものだわ」
部屋の真ん中にあるコタツ。いつも冬になればアルテミスが勝手にこの中にいて、なんでいるんだと喧嘩をしていた。覗いてみたがアルテミスはいない。
「何?中に何かあった?」
「いや、別に」
「寒いんだけど」
「だよね。レイちゃん、寒いしエッチしようか」
温かいココアを淹れて持ってきてくれた、そのマグカップが今にも飛んできそうな般若の顔。
「美奈、寒いんだからわざわざうちに来なくてもいいんじゃない?」
「なんでよ。遊ぶ約束は約束でしょ?来なかったら寂しい癖に」
「いえ、寂しいと言うのはないわよ」
「嘘だ。私は寂しいって思うわよ。レイちゃんみたいに意地っ張りじゃないから、寂しい、会いたい、抱きしめたい、エッチしたいって」
ティッシュボックスが美奈子の額にクリティカルヒット。照れ隠しをするレイちゃんは可愛い。本当に可愛い。できるものなら写メを取って世界中に見せびらかしたいくらいだけど、それはそれで、もったいない。こんな風にちょっと赤く頬を染めたレイちゃんの表情は、美奈子だけのものだ。
「ごめん、今日は嫌」
「なんで?」
「ちょっとね、なんて言うか、その、そう言う気分じゃないの」
「……なんで?」
「嫌って言っているのを、無理にするわけ?」
「そりゃまぁ、そうだけどさ」
拒絶してくるのも珍しい。何となく、目が泳いでいるし。
「誰か来るの?」
「えぇ、まぁ。おじいちゃんの知り合いが今、来ていて」
「ふーん。じゃぁ、また次の機会でいいけど、キスさせてよ」
嫌って言いそうになる唇を覆って、離れないように腰を押さえつけた。本当はこのまま押し倒してしまいたいけど、寒いものは寒いし、色々とその、夏のように簡単にはできないものがある。
「………美奈、もぅ。少しは……」
「何?」
「………何でもない」
「キスしかしないってば」
嫌がることを無理やりしないのは、美奈子のモットーだ。
愛するレイちゃんが望むこと以外はしない。でもまぁ、レイちゃんってほとんど嫌がったりしないんだけど。

あぁ、こういうのを幸せって言うんだ。


何か忘れているような気がする。







アルテミスに客間から出ないようにと伝えておいてよかった。みちるの実家に預けたままにしてもよかったが、深美ママは数日してイタリアにお仕事に行ってしまい、美奈の家に帰りたくないと駄々をこねたから、神社に連れて帰った。
ほったらかせばよかったって今になって後悔しても、助けてしまったのだから仕方がない。
1週間経っても、美奈は何も変わらないし、今日も普通に遊びに来た。流石にアルテミスがいるのに、色々と手を出されても困る。ハラハラしながら雰囲気から逃れ、夜ご飯を食べて、追い出すように帰ってもらった。
「………アルテミス」
「何さ」
「そろそろ、帰ったら?」
「嫌だね。あの色ボケ女は、まったく僕を心配していなかったな」
「聞き耳立ててた?」
「い~や、別に」
死にかけていたくせに、何故アルテミスにムスっとされなければいけないのだろう。深美ママからお小遣いをもらって、高いキャットフードを買ったレイは、サービスしすぎだと思いながら、ふて腐れたままおいしそうに食べてくれないアルテミスのお尻を蹴りたい衝動に駆られた。
「どうせ、美奈が悪いんでしょうけれど。喧嘩は2人でやってよ。うちを巻き込まないでくれる?」
前足をぺロペロ舐めながら、アルテミスはレイの言葉に聞く耳を持たない。
「元はレイだって悪いんだ」
「はぁ?」
「ふんっ」

まったく意味がわからない。美味しいものを食べさせてやっているのに、そもそも助けてあげたと言うのに、本当に躾の悪い猫だ。

「まったく……アルテミス、あんまりふてぶてしいと美奈にここにいることをバラすわよ」
「ふん!別にここにいなくてもいいんだ、他所に行けばいいんだ」
うさぎの家に行ったって、間もなくバレるだろうし。結局、何が理由で喧嘩をして、なぜレイが悪いと言われなければいけないのかわからない。
「………もう、好きにしなさい」
買ったエサもあと数日でなくなる。その頃までに何とかして欲しい。



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Date:2016/01/25
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