【緋彩の瞳】 相棒は君だ END

緋彩の瞳

その他・小説

相棒は君だ END

「な、何するんだ!」
「フォボス!ディモス!」

寒空の中、じっと庭の木の上にいた二人を呼び寄せる。
守護戦士の姿になった2人が飛んできた。
2人はレイの相棒ではない。
喧嘩をするような関係でもない。
彼女たちがレイをどう思っているか、なんて、考える必要もない。

「美奈、きっとまだ、あちこち探していると思うわ。これ、届けてきて」
『承知しました』
「こら!レイ!ちょっと待て!」
「落とさないように」
『必ず、美奈子さまの腕の中にお返しします』
「ちょっと待て!こら!こら~~~~!!!」
掴んだ尻尾を2人に預けると、一礼してゆっくりと屋根より高く上がっていく。

にゃ~にゃ~と叫ぶ声が夕闇に響いた。

『観念しなさい、アルテミス。レイ様のお優しい心遣いなのよ』
『じっとしてなさい』

別に優しさじゃないわよ。
フォボスとディモスに言ってやりたかったが、馬鹿馬鹿しいって思って、窓を閉めた。

「………どうするの?」
みちるもまた、馬鹿馬鹿しいって顔でレイを見ている。
「ご飯食べて、泊まって帰るわ」
「あぁ、そう。もうすぐ、はるかがお鍋の具材を買って帰ってくるわ」
そう言えば、さっきみちると何か、言い争っていたような気がする。
何だったのだろうか。
ものすごく、くだらないことで。
「みちる、さっき何の話しをしてた?」
「何だったかしらね。くだらないことよ」
「……そうね、くだらないことだったわね」
あとは、フォボスとディモスが、美奈のところに猫を落として丸く収まるだろう。
最初にアルテミスを助けたのは2人なのだから、最後も2人に任せておけばいい。





「な、な、な、何事?!」
陽が落ちて辺りも暗くなり、公園周辺を探すのが辛くなってきたなって思っていると、頭上から猫の泣き声が聞こえた。

『美奈子様』
『美奈子様、レイ様よりお届け物です』

「え?え?え??え?も、もしかして……フォボスとディモス?!」
美奈子は守護戦士姿の2人を見たことがない。
普段、絶対に姿を現してくれることなんてない2人が、なぜか頭上からアルテミスを抱えて降りてきた。
『レイ様より命を受け、アルテミスを届けに参りました』
『美奈子様の腕にお返しするように、とのことです』
「え?ま、まさか2人が探してきてくれたの?」
何が何だか、よくわからない。
美奈子の両腕にひんやりしたアルテミスがゆっくりと下ろされた。
『それでは、わたくし達はレイ様の元に戻ります』
『どうか、美奈子様もお風邪など引かぬように、気を付けてお帰り下さいませ』
丁寧に頭を下げる2人に、思わず美奈子も90度のお辞儀を返してしまった。絶対に姿を見せてくれないはずだったのに。レイちゃんは2人に命令をして美奈子にアルテミスを返しに来てくれたのだ。確かに空からなら、アルテミスを探せるだろう。自分で解決しろっみたいなことを言っていたわりに、レイちゃんも心配してくれていたんだ。

やっぱりレイちゃん。
本当は優しい人なのに、それを隠す悪い癖を持っている。

「お帰り、アルテミス」
「………色々、言いたいことがたくさんあるんだけどな。まずあの2人は……」
「ごめんね、アルテミス。私が悪かったわ」
空を飛んできたせいで冷たくなったのか、元々冷たかったのかはわからない。
美奈子は腕の中のアルテミスをきつく抱きしめた。
「いや……色々と誤解をしているようだけど」
「やっぱ、あんたがいないと生活のリズムが狂うのよね。部屋も汚れるし、遅刻もしてしまうし、あと、やっぱ、あんたは相棒なんだからさ」

相棒はアルテミスだけ。

「どうせ、レイの機嫌を取るために僕と仲直りしたいだけだろ?」
「うーん。いや、まぁ、それもなくはないけれど。それは違うのよね、上手く説明してあげられないんだけど。あとレイちゃんはきっと、アルテミスを大事に思ってるんじゃない?結構、心配していたみたいだから」

美奈子にとってアルテミスは相棒で、いるのが当たり前で、1週間いなくても平気だけど、2週間いないと、何か調子がくるってしまう存在で。
たぶんレイちゃんは、美奈子のことをよくわかっているから、いたたまれなくて探してくれたのだろう。




「…………何か、何かが違うと思うんだけどな。レイは、美奈が大事なんだろ」
レイはめちゃくちゃだ。
確かに死にそうな状況から助けてくれたのはありがたかったが、放っておいてくれって言ったのに、強制的に美奈の元に落とすとはどういうことだ。
美奈が土下座をして謝るチャンスを奪ってくれて。
結局はまた、いつも通りになってしまう。
「本当?やだ~照れちゃうなぁ~~。レイちゃんってさ、本心を言わないからね」
「僕は聞いたけどな」

空を飛んでいるときに、フォボスとディモスが言っていた。
レイは美奈を深く愛しているから、美奈が愛しているものも大事にしているって。
それがアルテミスだって。わからないアルテミスが馬鹿すぎて、地上100メートルから落としてやりたいところだけど、フォボスとディモスもまた、レイが大事にしているものを大事にしたいから、美奈の元に仕方なく送り届けてやるとか、何とか。

「え~。アルテミスがいないって寂しがっている私の姿なんて見たくない、って?」
「ふん!どうだかね。放してくれないかな?帰るつもりなんてないんだけど」

何も言わなくても、お互いの想いを感じ合う、レイとフォボスとディモス。
アルテミスはあんな風になりたくなんてないし、美奈とレイは違いすぎる。
言いたいことは言う。
美奈なんて放っておいて、自由気ままに昼寝をしたい。
お土産は欲しい。
交わした約束は、ちゃんと守って欲しい。

「なんでよ。帰るわよ。びっくりするほど部屋が汚いし、明日は早く起きなきゃいけないの。
あんたが起こしてくれないと困るし、何より今日は寒いんだから、あんたが蒲団を温めないとダメでしょ」
「………ちぇ」

きっとまた、明日もガミガミ言って朝起こして、忘れ物がないかチェックしてやって、学校の近くまで付いていかなきゃならないんだろう。

「あんたは私の相棒なんだから、一緒にいて当たり前なんだから」
「どうだろうねぇ」
「アルテミスがとても大事よ」
「ふーん。レイよりもか?」

思わず出た言葉。
きっと、アルテミスは聞いてみたかったんだ。


「どっちも。愛に順番なんてないわよ。それとも何?彼氏にして欲しいの?あんたはレイちゃんに嫉妬でもしてんの?」
「別に」
「何よ、嫉妬して怒ったの?」
「君が約束を破ったことを怒っていたんだ」

嫉妬なんかじゃない。
嫉妬なんか、してない。


「ははは~~~。レイちゃんの家で美味しいものを食べたんでしょ?」

ぐりぐりと押し付けてくる美奈の頬はとても冷たかった。
それだけ、ずっと外を探し回っていたのだろう。
少し赤くなった鼻。
吐き出す息が白い。

仕方ない
これがアルテミスの相棒なのだ

「まぁ、謝ったわけだし、許してやるよ。まず家に帰って掃除だな」
「はいはい」
「これからも、相棒として僕をちゃんと敬うことだな」
「それは私も同じセリフを言いたいわよ」
「君のどこを敬えと?」
「それも私のセリフよね」
「おろせ、美奈」
「嫌よ、寒いんだから」


お互いにひんやりとした身体
コートの中に入れられて、ぐっと抱きしめられる

「ふん!」

烏の姿に戻ったフォボスとディモスが空高く舞い上がって、いつの間に姿を消していたことなんて気が付かなかった。





1/20 HAPPY BIRTHDAY TO もやしさん
遅れてごめんなさい~~(今日って、1月20日じゃないかな)
関連記事

*    *    *

Information

Date:2016/01/25
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿








 ブログ管理者以外には秘密にする

Trackback

TrackbackUrl:http://fireredfantasia.blog.fc2.com/tb.php/664-3e3ac0ef
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)