【緋彩の瞳】 緋彩の瞳~恋をするなら~ END

緋彩の瞳

みちる×レイ小説

緋彩の瞳~恋をするなら~ END

「寒い」
「そうね」
マフラーと手袋、スクールコート。
短いスカートとハイソックス。
並んで歩いても、寒さじゃない理由で、みちるさんに何か声を掛けられない。
無言で坂を歩き、暗くなった境内を進む。



……
………


こんなに会話がなくても、ちゃんと理由を教えてくれるのか。
そもそも、今更、何か知りたいことでもあったかしら。

よくわからない。それでもみちるさんは、やっぱり帰るって言わずについてくる。


「ごめん、すぐに暖かくなるから」
「ありがとう」

ひんやりとした、畳。こたつと暖房を入れても部屋を暖めるには少し時間がかかる。飲み物でも淹れるかと言っても要らないと言われて、コートを脱いで腰を下ろした。
「えっと……それで……別に言いたくないのなら話をしなくてもいいわ。ただ、あの馬鹿に弱みを握られているのなら」
レイの方がマシだと思うと言いきれないのは、人の恋愛事なんて話を聞いても何のアドバイスもできないだろうとわかっているから。
かといって、美奈のように冷かしたり、握った弱みを利用するようなことはしない。

「えっと、そうね。実は………美奈子には不運にも知られてしまったのよ」
「……………何を?」

対面して腰を下ろしているみちるさんは、レイを見つめて、それからすぐに視線を逸らした。






「実は……」
一度逸らされた視線は、テーブルの淵の端から端を往復して、レイを見つめるタイミングを見計らっているように見える。


こういう瞳の動きを、いろんな人の瞳を、レイは何度も追いかけていたことがある。
知っているはずのその仕草なのに、何か、なぜか、期待をしている“何か”がドクドクと心臓を躍らせているような、そんな気がするのはなぜだろう。


もしかしたら

もしかして



まさか



『レイちゃんは、好きでもない人から告白されて、ドキッとする?意識して好きになっちゃったりする?』



今更、美奈のあの言葉が、実はすごく思わせぶりだったのだとわかった。



「みちるさん……あの、まさか……」


「えっと、そうね、その……まさか、よ」


何度もコンサートを観に行った、プロのヴァイオリニストは、まるで今から大きな舞台に立つかのように、深く深呼吸を1つ、そしてひんやりとしている右手でレイの左手を取った。

「嫌なら、その、この先のことは言わないわ」
「………えっと、その……何を言おうとしているのか、答えが……」


答え合わせがなければ

たぶん、合っているだろうけれど

何度も、いろんな人から真剣に告白をされてきたはずなのに
こんな風に、変な緊張を感じたことはない






「私、レイが好きなの」




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みちるさんの震える指の間に、レイの指が絡んだのは
その緊張が、本物だと感じたいと思ったからなのか


それとも



「………どうして?」


「理由がわからなくて、困ってるわ」


「………どうしろ、と」

冷たいと感じるみちるさんの左手が、レイの頬に触れる
こんな風に他人に頬を撫でられたのは、最後はいつで、誰だろう
嫌、だなんて感情はなかった
逸らすことを堪えた瞳は、じっと、じっとレイを見つめたまま。


「レイに何かをして欲しいとか、そう言うのはわからないの。ただ、好きなの。我儘を言えば、もっとレイに会いたいとか、お話をしたいとか、どこかに2人で出かけてみたいとか、そう言う、普通のことを考えているくらいだわ」


指先から伝わる振動が、レイに移ったかのようだ。

「………えっと、そうね。えっと、じゃぁ、考えておくわ」
「無理にとは言わないけれど」
「嫌じゃないわ」


美奈に、なんて説明しよう。
そんなことを頭のどこかで考えているって気が付いて、それはつまり、なぜかはよくわからないけれど、今、自分の身に起こっている状況を、拒絶しないつもりと言うことなのだろう。

さっきまで
今の今まで
レイはみちるさんを気になる人だとか、好きな人だと認識をしたことがなかった

そのつもりだった

見つめられるまでは
その瞳で

その、綺麗な瞳で見つめられるまでは



「そう?よかったわ」
「………美奈のくだらない質問、“告白してくる相手による”っていうのに変えておこうかしら」
みちるさんは、赤くした頬を隠しもせずに可愛らしく笑った。

レイも少し笑った。
「私は、レイが好きだから……ほかの誰かに何を言われても、何も感じられないって言うのが答えなの。美奈子は、それを知っていて、あの場で言わせたかっただけよ」

立ち合いたかった、なんていう美奈のセリフ

みちるさんは、一体いつからレイを意識していたのかしら
知り合って2年近くになると言うのに
触れ合う指の間の空間は、いつかきつく握り合えたりするのだろうか

どうして、そんなことを考えているのかわからない




『レイちゃんは、好きでもない人から告白されて、ドキッとする?意識して好きになっちゃったりする?』




あぁ

この人のことを好きになるかもしれない


絡まった指から伝わる熱が心に届いて
それはなんだか“恋”だった












頂きました絵は、同じくともちゃん様より。
最初に子の小説の内容が浮かんだのですが、しっとりお付き合いしているのと、片想いとどうしても2つ書きたくて書いてみました。
こういうことを始めてから12年以上、サイトは10年。
私の今のブームは片想いとか片両想いな感じです。
素敵な絵、本当にありがとうございました。
きっと私は、今、飛行機の中。
たぶん、ちゃんと帰国の途についていると思います!
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Date:2016/02/05
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